地域をつなぐ「投票」と「滞在」──島の観光資源を機能させる試み
瀬戸内海の島、広島県大崎上島にある温泉宿「きのえ温泉 ホテル清風館」が、現在実施中の「温泉総選挙2026」絶景部門で全国3連覇に挑戦している。ホテルは投票呼び掛けに合わせ、宿泊料金の割引や投票者向けの抽選キャンペーンを展開し、島外からの来訪促進と島民や出身者らとのつながり維持を図っている。
同宿は2024年・2025年に同部門で全国1位となっており、今年も上位で競っているが、2位との票差は縮小している。ホテル側は単なる順位争いにとどまらず、島の美しい景色や温泉体験を通じて大崎上島の魅力を広く伝えることを狙いと位置づけている。
「温泉総選挙への挑戦が、島の内と外をつなぐ小さなきっかけになるよう願っている」
この取り組みは観光集客の短期的効果だけでなく、人口減少が進む島の存在感を継続的に高めることに重きを置く。大崎上島はかつて海運や造船で栄えたが、近年は人口が大幅に減少しており、地域経済とコミュニティ維持が課題となっている。
数字で見る島の状況と狙い
| 年 | 大崎上島の人口 |
|---|---|
| 1985年 | 14,101人 |
| 2025年 | 6,484人 |
人口は1985年の14,101人から2025年の6,484人へと減少しており、外部からの訪問者を増やす取り組みは、観光消費を通じた経済的波及や、島外在住者の帰島・交流の契機づくりとして期待される。
ホテルの具体的施策と利用者向け情報
- 一部対象日の宿泊が通常料金から10%OFFになる「温泉総選挙応援プラン」を販売。
- Web投票で応援した人を対象とした抽選で、館内商品券5,000円分を合計20人に贈呈(絶景部門10人、料理自慢部門10人)。
- 投票締切は10月31日、投票確認後のキャンペーン応募締切は11月1日18:00。応募にはWeb投票完了画面のスクリーンショットとGoogleアカウントが必要。
宿泊を伴わない投票のみでもキャンペーンに応募できる一方で、割引プランは宿泊予約ページからの申込みが必須。詳細な対象日や条件は公式の予約サイトで確認する必要がある。
地域視点での影響と課題
短期的には、ランキング上位での露出が増えれば観光客の誘致効果が期待できる。観光客の宿泊・飲食・土産購入は地元事業者への直接的な収入になるため、島内経済の下支えとなる可能性がある。特に絶景を目当てとする観光は、通年の安定収入化が難しい一方、季節性の波を活かした周遊プランや体験型商品との組合せで受け皿を拡大できる。
一方、訪問者増に伴う交通・宿泊インフラの制約、循環型観光の確立、地域側の受け入れ体制整備といった課題にも対応が求められる。大崎上島へはフェリーや高速船でのアクセスが中心で、観光ピーク時に船便や宿泊が満杯になる恐れがある。島内の事業者と行政、宿泊施設が連携し、受け入れキャパシティや周遊プランの整備を進めることが重要だ。
住民・出身者への呼びかけと今後の展望
ホテルは、島を離れて暮らす出身者らにも投票を呼び掛けており、ランキング挑戦を通じて故郷への関心を呼び起こすねらいがある。オンライン投票と合わせて宿泊誘導の割引を設けることで、実際の来訪につながる確率を高める仕掛けだ。
今後、同様の地域発信型のイベントやキャンペーンが増えれば、島のブランド化に寄与し得る。重要なのは短期的な注目を持続可能な観光資源として体系化することであり、そのためには交通、宿泊、飲食、体験プログラムのパッケージ化と、地元産品の販売網構築が鍵になる。
投票締切は10月31日。地元の風景や体験を守り、次世代へつなぐきっかけとして、今回の挑戦がどの程度の効果を生むか注視したい。