整備士不足で導入機の運航継続が危ぶまれる
救急患者を現場で治療しながら病院に搬送するドクターヘリについて、今年度、東京・大阪・徳島の三都府県で年間を通じた運航の見通しが立っていないことが明らかになった。原因は整備士の不足や、運航を委託できる事業者が確保できないことにある。厚生労働省と国土交通省は安定運航に向けた対応に着手しているが、都民の救命に関わるインフラの不安は残る。
ドクターヘリは人工呼吸器などの医療機器や救急医が常備される移動医療資源で、救命に直結する“時間”を短縮する役割を担う。厚労省のまとめでは、全国に54機が配備され、2024年度の出動件数は約2万8,000件に上る。こうした体制の維持が困難になれば、特に重症の急病や大けがで迅速な搬送が必要な患者に影響が出る可能性がある。
ここ数年、学校法人ヒラタ学園(堺市)が運航を担っていた地域で、整備士の高齢化と退職が相次ぎ、運航が断続的に停止する事例が出ている。情報によれば、全国の10都府県で昨年夏頃から断続的運休が起き、うち7府県は別の運航会社と通年契約を結ぶなど対応が進んだが、東京と大阪は委託先が見つからず、徳島は期間限定の契約しか確保できなかった。
「搬送が遅れ、救える命が救えなくなる恐れがある」
この問題は運航会社側の構造的課題とも結び付く。運航を担う事業者は全国で約12社あるが、整備士のなり手不足に加え、新しい機体を導入して医療機器を搭載できるまでには約三年を要するとされる。単に人員を増やすだけでなく、機体調達や医療機材の適合等の負担も大きく、新規受託に踏み切れない事情がある。
- 都内のドクターヘリ運航の継続性が確保できない場合、重症搬送が遅延する可能性がある。
- 代替として防災ヘリやドクターカーでの搬送が行われているが、飛行搬送に比べ速度や対応範囲で制約がある。
- 国は整備士確保など実効的対策の検討を始めているが、短期的な解決は難しい。
東京都の救急医療に与える影響と現場の対応
都内では高度救命救急センターや地域の基幹病院が夜間・休日を含めて重症患者を受け入れているが、ドクターヘリは山間部や離島だけでなく、都市部でも交通混雑により地上搬送が遅れるケースで重要性を発揮する。都民が重症時に迅速な初期治療と搬送を受けられるかは、救命率に直結する。
現時点で東京都は、該当区市町村や医療機関と連携しつつ、国の動きを注視していると見られる。都内の一部医療関係者は、防災ヘリや救急車、ドクターカーでの代替搬送体制を整備しているが、いずれもドクターヘリの代替として万能ではない。特に夜間や渋滞時、長距離搬送では時間差が生じる点が指摘される。
| 事象 | 状況 |
|---|---|
| 配備機数(全国) | 54機 |
| 2024年度出動件数 | 約2万8,000件 |
| 運航見通しが立たない都府県 | 東京、大阪、徳島 |
東京都内の住民にとっての実際的な影響は、救急搬送の選択肢が狭まる点だ。例えば、深夜や大型イベント開催時、あるいは都心の渋滞で救急車の到着が遅れるような状況では、飛行搬送が有効である場合がある。こうした場面でドクターヘリが運航できないと、病院到着までの時間が延び、診療方針に影響を与えかねない。
国と自治体、事業者に求められる対応
専門家は、ただちに使える短期策と、中長期の人材・設備確保策を並行して進める必要があると指摘する。具体的には、整備士の人材育成・待遇改善、運航事業者への支援、機体の調達・改修期間を短縮するための産業面での協力などが考えられる。また、都道府県は搬送シナリオの再検討や、ドクターカーなど地上搬送の機能強化を急ぐ必要がある。
都民ができることとしては、緊急時の連絡方法や最寄りの救急医療機関の把握、応急手当の基礎知識の習得など、個人と地域で備える取り組みが重要だ。行政はこうした周知を強化することが求められる。
今回の問題は救急医療の「見えにくい脆弱性」を露呈した。都は国の対策と連携しつつ、住民の安全確保に向けた具体的な手順を速やかに示す必要がある。今後の動向を引き続き取材し、住民にとって重要な情報を随時届ける。