概況と今回の採用
網走バス(本社:網走市)は今年5月、インドネシア出身のウィル・ストロングさん(41)を同社道内で初の事例としてバス運転手に迎え入れた。ウィルさんは空港連絡バスなどで運行に就いており、現地での日本語学習や特定技能1号の試験合格、来日後の大型二種免許取得と路上訓練を経てデビューした。採用は、同社がこれまで進めてきた道外・海外からの人材確保の延長線上にある。
背景:道内バス業界の人手不足と利用減
北海道運輸局のデータでは、道内主要路線バス14社の運転手は2024年に2961人。2015年比で約2割減少しており、実車走行キロ数も同期間で約3割減している。運転手の高齢化も進み、ある事業者では今後5年で約2割が定年退職を迎える見込みで、欠員補充は喫緊の課題だ。
網走バスの取り組みと連携体制
網走バスは現在、乗り合い・貸切合わせて88両のバスを保有し、約100人の運転手で運行している。採用に当たっては、札幌の登録支援機関「3eee(スリー)」と連携。スリーの支援で現地での窓口を確保し、採用後は日本での免許切替や技能・交通マナーの訓練を重ねることで、安全運行の基準に合わせている。
今後の人材育成計画と自治体の動き
網走バスは日野自動車のインドネシア法人と協力し、現地での運転訓練プログラムを開始。初年度の目標は年間5人、5年間で計25人の特定技能保持者を確保する方針だ。また、札幌市も別途、特定技能外国人の育成支援制度を立ち上げ、ベトナムでの現地教育と国内での大型二種免許取得を組み合わせる事業に約600万円を計上している。自治体が現地で人材育成に関与する試みは国内でも先例にあたるとみられる。
現場の声と住民への影響
採用側の評価として網走バスの明神健太専務は、外国人運転手について「安全第一の姿勢で日本のやり方に合わせようとしている。勤勉で社内にも溶け込んでいる」と述べている。ウィルさん側も、冬の雪道や確認事項の多さなど慣れが必要な点はあるとしつつ、地域での業務や利用客との接触を楽しんでいるという。
「運転することが好き。いろいろなお客様に会えて、楽しくやっています」
地域住民にとっては、当面の運行維持に資するという点で採用は歓迎材料となる一方、教育や安全確保、言語対応への懸念もある。札幌市の担当部署は市民への情報発信を重視し、安全教育を最優先に進める考えを示している。
課題と留意点
- 在留資格「特定技能1号」は在留期間に上限があり、長期的な定着策が別途必要である。
- 現地での技術教育と来日後の実地訓練の品質管理が安全確保の鍵となる。
- 住民への説明や不安解消のための情報発信、インバウンド対応など言語・接遇面の整備が求められる。
また、給与面では同社は日本人社員との格差を設けておらず、整備士など他分野でもインドネシアからの人材を受け入れている。これは待遇面での差別化を図らないことで職場定着を図る狙いがうかがえる。
データでみる変化
| 項目 | 数値(出典:北海道運輸局・事業者公表) |
|---|---|
| 道内主要14社の運転手数(2024年) | 2961人 |
| 15年→24年の運転手数変化 | 約2割減 |
| 実車走行キロ数(15年→24年) | 1億3160万km → 9263万km(約3割減) |
| 網走バス保有台数/運転手数 | 88両/約100人 |
地域向けの実務的情報
バス事業者が今後も外国人材を受け入れていく場合、住民は以下に注意すると良い。
- 運行情報や安全対策に関する事業者・自治体の発表を定期的に確認する。
- バス利用時に英語や他言語での案内が増える可能性があり、観光客対応などサービスの向上に繋がる点を理解する。
- 採用や訓練過程に関する問い合わせや不安があれば、自治体窓口や事業者に直接問い合わせ、説明を求める。
まとめ:持続可能な地域交通への道筋
北海道のバス業界は乗務員確保の難化と利用者減少という二つの課題に直面している。その中で網走バスの海外人材採用は、地域交通を維持するための一つの解となり得る。重要なのは、受け入れ体制の整備と長期定着を見据えた施策、そして住民への十分な説明である。安全確保を最優先に、地域の生活を支える足をどう維持していくかが今後の焦点となる。