地域資源を活用した異色の返礼品
徳島県吉野川市のふるさと納税返礼品に、元捜査一課の刑事による「取り調べ体験チケット」が加わった。提供元は地域活性化を手がける合同会社「川島えがお倶楽部」。本物に近い雰囲気を再現した取調室で、1時間にわたり元刑事が1対1で“事情聴取”を行うという内容で、開催は2026年11月7〜9日、24〜26日の計6日間、定員は計10人、寄付金額は15万円以上(寄付は仲介サイト「ふるさとチョイス」経由)と発表されている。
企画の狙いと運営の背景
発案は、同市で地域振興に携わる明石真和代表(合同会社「川島えがお倶楽部」代表)と、同市のふるさと大使を務める元刑事の秋山博康さん(愛称「リーゼント刑事」、66)の対話に端を発している。物品としての返礼品ではなく「知的財産」に着目し、体験型の取り組みで地域に新しい魅力を呼び込む狙いだ。関係者によれば、既に数件の申し込みがあり、8月中旬には定員に達する見込みだという。
体験の内容と付加価値
体験は、川島えがお倶楽部の応接室を取調室に見立てて行われる。部屋は装飾を排した簡素な空間に、椅子とテーブル、暗めの照明を用いるなど、警察の取調室に近い雰囲気を出す構成だ。寄付者は「食い逃げ」「窃盗」「万引」などの設定に応じ、秋山さんから1対1で事情聴取を受ける。希望に応じて設定を変えることもでき、秋山さんの捜査時代の裏話に触れられることや、個人的な悩みを相談できる機会も設けられている。
「42年間の警察人生でいろいろな事件を担当した。その経験を生かしたい」
秋山さんは自身の経験を市民のために役立てたいと話しており、特殊詐欺や闇バイトなど近年の犯罪傾向を踏まえた自己防衛のアドバイスも行う予定だとしている。
地域への影響と留意点
返礼品の導入は、観光振興やふるさと納税の多様化という点で利点がある。体験型の高額返礼品は、寄付者にとっての満足度が高く、地域の認知度向上や滞在型観光のきっかけになり得る。主催側も物品だけに頼らない新しい返礼品の形として期待を示している。
一方で、倫理や安全性に関する懸念も生じる。模擬の取り調べとはいえ、圧迫感や心理的負担を感じる参加者がいる可能性があり、主催側が参加条件や事前説明、当日の対応方針を丁寧に示すことが重要だ。主催者側の説明では、取り調べ体験と合わせて悩み相談にも応じるなど配慮があるとされるが、警察機関そのものの権威を模した演出が誤解を招かないよう、実施内容の周知と参加者の同意確認が不可欠だ。
参加を検討する人への実務情報
- 開催日:2026年11月7〜9日、11月24〜26日(計6日)
- 定員:計10人(午前・午後に分けて実施)
- 寄付金額:15万円以上(申し込みは「ふるさとチョイス」経由)
- 申し込み状況:主催者によれば既に数件の申込があり、8月中旬で定員に達する見込み
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施主体 | 合同会社「川島えがお倶楽部」 |
| 担当する元刑事 | 秋山博康(元県警捜査1課、愛称「リーゼント刑事」) |
| 開催方式 | 取調室を模した応接室で1対1の取り調べ体験(1時間) |
記者の視点:伝えるべきこと
この返礼品は自治体や事業者が「体験」を商品化する流れの中で異彩を放つ。地域にとっては話題性のある取り組みだが、参加者が安全・安心に体験できるよう、事前の説明や心理的配慮、万一の対応策を明確にすることが信頼確保の鍵となる。加えて、犯罪被害防止や相談窓口の案内といった公益的な情報提供を組み合わせることで、単なる娯楽にとどまらない社会的意義を持たせることができるだろう。
申し込みを検討する場合は、仲介サイトの募集要項や主催者の説明をよく読み、体験の性質・想定される心理的負担・当日の運営体制を確認したうえで申し込むことを勧める。