東急グループはこのほど第8回となる「東急グループ 環境・社会貢献賞表彰」の受賞案件を決定した。37社から合計96件(環境47件、社会貢献49件)の応募を受け、選考委員会は計15件の表彰を行い、最優秀に位置づけられたのは「パラオのリゾート事業での海洋・森林保全と地域貢献」と「外国人バス運転士の受入」の2件だった。
開発と保全を併せて実践する海外リゾートの取り組み
最優秀の一つに選ばれたのは、東急不動産ホールディングス、東急不動産、石勝エクステリア、Pacific Islands Development Corporation が関わるパラオ・パシフィック・リゾートの取り組みだ。1984年の開業以来、同リゾートは開発と環境保全の両立、地域貢献を開業理念に掲げてきた。
具体的には、陸域で既存樹木を活用したランドスケープにより森林保全を図り、前面海域ではサンゴ移植を伴う海浜改修や、絶滅危惧種である大シャコ貝の放流などを実施。2002年には国から海洋生物保護区の指定を受けている。また、地元住民の雇用促進や伝統建築様式の採用など、地域との調和を重視した運営を続けてきた。
「半世紀前から始まったパラオでのホテル開発は『開発と環境保全の両立』『地元に受け入れられる事業』という理念の下、デザインコンセプトの軸である『ヤシの木より高い建物は作らない』という単純明快な言葉に込められた強い想いを誇りに42年間運営を続けています。」
国境を越えた事業形態でありながら、現地生態系の保全と地域経済への還元を両立させる試みは、観光開発が直面する課題への一つの提示だ。保護区指定や種の放流など生物多様性保全の具体策は、開発側の責任としての実効性を担保する要素となる。
地域交通と人材多様化──外国人運転士受入の意義
もう一つの最優秀は東急バスによる外国人バス運転士の受入である。深刻化する公共交通の人手不足に対し、同社はダイバーシティ推進の観点から外国国籍の運転士採用を進めてきた。現場では日本の交通ルールや接遇の教育、文化・宗教的配慮など多様な課題に取り組み、受け入れ側の意識醸成を図った結果、単独乗務の開始に至っているという。
「人手不足により危機的状況が続く日本の公共交通を守るという社会課題を解決するために、ベトナムでのバス事業運営経験のある当社が業界の旗振り役となり、本プロジェクトに取り組んできました。」
同社は取り組みで得たノウハウを公開し、地域交通維持という全国的課題への貢献も目指す。加えて、メディアを通じて外国人運転士の姿や家族への思いを発信したことが、沿線住民の理解・支援の促進に寄与している点も強調されている。
表彰全体の構図と今後の示唆
今回の表彰は、環境分野と社会貢献分野それぞれでの優れた実践を社内外へ周知することを目的としており、2008年の制度創設以来、これまでに累計応募が1,000件超に達している点も示された。審査は東急グループ12社の担当者による選考委員会が行い、以下の規模で表彰が実施された。
| 項目 | 件数 |
|---|---|
| 応募総数 | 96件(環境47、社会貢献49) |
| 最優秀(環境・社会貢献賞) | 2件 |
| 環境賞 | 3件 |
| 社会貢献賞 | 3件 |
| 特別賞 | 7件 |
| 表彰合計 | 15件 |
今回の受賞事例は、ポイントが二つある。第一に、自然環境を守る取り組みが単なる付帯活動ではなく事業運営の中核に組み込まれていること。第二に、社会的課題(地域交通の維持、人材不足)に対する具体的解決策として多様な人材活用を採り入れ、ノウハウを公開して業界横断的な波及を図っていることだ。
- 国際事業における生態系保全と地域貢献は、観光産業の持続性を左右する重要な指標になりつつある。
- 国内の地域交通維持には、多様な人材の受入と地域住民の理解形成が不可欠であり、企業の先進事例は他事業者への参考となる。
東急グループの表彰制度は、社内での意識向上を目指すと同時に、外部に向けた好事例の横展開を志向している。今回の結果は、企業活動が環境保全と社会的責任を結び付けて実践する際の一連の選択肢を示したとも言える。
今後は、受賞事例が実務としてさらにどのように展開し、同様の課題を抱える他地域・他業界へどの程度波及するかが注目される。特に、観光開発における保全措置の長期的効果や、外国人運転士受入による地域交通運営の安定性と安全性の検証は、公開されるノウハウとあわせて社会的な評価指標となるだろう。
表彰制度は年に一度実施されており、東急グループは今後も取り組みを継続するとしている。企業グループの規模と影響力を背景に、今回示された実践が実効性あるモデルとして他へ広がるか否かが、今後の注目点だ。