発表の要旨
山口県は、稲を枯らす害虫であるトビイロウンカの飛来が例年を大きく上回り、過去10年間で最多となったとして、県内全域に対して注意報を発令しました。県病害虫防除所が実施した調査(5月下旬〜7月7日)で、調査用ライトに集まった捕獲数が平年の約16倍に達したと報告されています。
調査結果と専門家の見解
県病害虫防除所の専門研究員は、梅雨末期の雨によって中国大陸から大量に流入したことが飛来増加の主因と説明しました。ただし、過去に甚大な被害を及ぼした2020年とは状況が異なる点も強調しています。2020年は梅雨が長期化し、断続的に何度も飛来が続いたのに対し、今回は一度の飛来量は多かったが、その後の追加流入は見込みにくいとしています。
「梅雨の最後の雨で中国大陸からかなりトビイロウンカが飛んできたということが調査で確認されました」 — 東浦専門研究員
現場の対応と農家の声
山口市阿東地域の中山ファーム(約80ヘクタール)では、現時点で被害は確認されていないものの、予防措置として薬剤散布を開始しました。農家はトビイロウンカの習性に合わせ、稲の株元に薬剤が届くよう低い高さでの散布を重視しています。ドローンでの散布を併用する一方で、根元に付着する卵や幼虫への対応として、手作業による散布を継続していると説明しました。
県の今後の呼びかけと防除時期
県は、今回飛来した個体の卵が孵化して幼虫となると見込まれる7月下旬から、さらに次世代の幼虫が現れると見込まれる8月下旬にかけて、トビイロウンカ対策に効果が高い薬剤を用いた防除を行うよう呼びかけています。具体的には、株元周辺に薬剤が行き渡るような低噴霧での散布、発生観察の継続、発見時の早期処置を促しています。
- 今後の防除重点期間:7月下旬〜8月下旬
- 推奨される対策:低い位置での薬剤散布、発生監視、必要時の手作業による追い散布
- 農機・ドローンは有効だが、株元への付着対策は手作業で補完
影響と注意点
トビイロウンカは稲の葉や茎の汁を吸うことで生育阻害や枯死を招く害虫です。大量発生すれば収穫量や米の品質に直接影響を与える可能性があり、特に出穂期や登熟期に被害が出ると経済的打撃が大きくなります。県の注意報は県内全域が対象で、個々の圃場での早期防除が被害拡大の抑制につながります。
| 比較項目 | 今年(調査期間) | 平年 | 2020年 |
|---|---|---|---|
| 捕獲数(調査ライト) | 過去10年で最多/平年の約16倍 | 基準値 | 今回の約1.5倍の捕獲数(当時は飛来回数も多かった) |
ただし、専門家は今年は梅雨明け後に飛来をもたらす前線が収束したため、追加的な大規模流入の可能性は低いと分析しています。また、2020年の被害を踏まえ、トビイロウンカに有効な薬剤の普及が進んでいることが被害軽減に寄与するとの見方も示されています。
農家・消費者への実用情報
農家向けには以下の点を改めて提示します。
- 圃場の早期巡回を強化し、卵塊や初期幼虫を見つけ次第除去または薬剤処理を行うこと。
- 薬剤はラベル記載の使用時期・使用量を厳守し、特に株元に薬剤が届く散布方法を優先すること。
- ドローン散布を行う場合も、必要に応じて低位での手作業散布を併用すること。
消費者への直接的な影響は現在のところ報告されていませんが、稲作への被害が拡大すると収穫量や品質に影響が及び得ます。県や関係機関は今後の発生状況を踏まえ、必要に応じて追加の情報や支援を公表するとみられます。
県は引き続き調査と情報提供を継続するとしており、農家は専門家の指導に沿って防除計画を実行することが求められます。地域の農業生産を守るため、各自の圃場での点検と早期対応が重要です。