岩国市の60代女性、SNS投資詐欺で巨額被害
山口県内でSNSを通じた投資詐欺による巨額被害が明らかになった。県警の発表を基に報じられた内容によると、岩国市の60代女性が今年6月以降、SNSで知り合った人物から持ちかけられた投資話に応じ、現金や金の延べ棒合わせて約2億4600万円相当を騙し取られた。県内での特殊詐欺被害額はことし1~9月で約16億5633万円に達し、過去最悪の水準となっている。
被害の経緯は次のとおりだ。女性はSNSで接触した人物から自称・証券会社の社員を紹介され、「投資の先生が勧める銘柄を買えば利益が出る」と持ちかけられた。偽の投資サイトで専用口座を開設させられ、まず7月に100万円を振り込むとサイト上は利益が出ているように見えたため、以降13回にわたり追加の資金提供を行った。結果として振り込みや手渡しで現金約2億2120万円、さらに金の延べ棒1キロ(約2466万円相当)を渡し、合計で約2億4600万円相当が奪われた。女性が出金できないことに不審を抱き今月(10月)に警察へ相談して発覚したという。
警察は「SNSで知り合った人物からの投資や事業経営に関する話は詐欺を疑い、警察や家族に相談するよう」呼びかけている。
被害の特徴と手口の変化
今回の事案で注目すべきは、加害者側がSNSを入り口にして信頼感を構築し、偽の運用画面など視覚的な“成果表示”で被害者の追加投資を誘導した点だ。従来の「還付金」「架空請求」など電話型の特殊詐欺に比べ、SNSやウェブを通じて個別に接触し、投資の成功を装う手口は被害者の判断を狂わせやすい。特に高額な投資に踏み切る際、実際の出金ができない状況でも画面上の“利益”が心理的な追い打ちをかけることがある。
地域住民への影響と注意点
今回の被害は1件で巨額に及んだが、県全体の被害額悪化は複数の類型の詐欺が同時多発していることを示唆する。被害者の世代や職業は必ずしも限定されず、今回は60代の会社役員が標的になった。高齢者だけでなく中高年層や金融リテラシーの高い層も、SNS経由での接触には慎重にならざるを得ない。
警察や関係機関が住民に求める基本的な対策は以下の通りだ:
- 身元不明のSNSアカウントやDM(ダイレクトメッセージ)で投資情報を受けても安易に応じない。
- 投資を勧められた場合、本人以外(家族や警察、金融機関)に必ず相談すること。
- 出金できない、連絡が取れなくなるなど不審点がある場合は速やかに最寄りの警察署や消費生活センターに相談する。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 現金(振込・手渡し) | 約2億2120万円 |
| 金の延べ棒(1kg相当) | 約2466万円 |
| 合計 | 約2億4600万円相当 |
捜査・行政の対応と今後の課題
県警は被害の実態把握と被害拡大防止に向けて捜査を進めるとともに、SNSを利用した詐欺への監視と広報を強化する必要がある。行政側でも高齢者を中心とした啓発活動に加え、金融取引の不審な動きを早期に察知するための相談窓口や連携体制の整備が課題となる。被害届から捜査に至るまで時間がかかる場合、資金の回収や証拠の確保が難しくなるため、被害に気づいた段階で速やかな通報が重要だ。
また、地方の企業や自治体も職場での詐欺対策を検討する必要がある。被害者が会社の役員であるケースを踏まえ、業務時間外に持ち込まれるSNS上の勧誘でも組織として情報共有し、個人で抱え込ませない仕組み作りが求められる。
今回の事案は、デジタル環境が進展する中で犯罪手口が巧妙化している現実を示している。県内で被害が過去最悪となったことは、地域社会全体で警戒心を強め、相談・通報の回路を確保することの重要性を改めて浮き彫りにした。
被害に遭った可能性や不審な勧誘を受けた場合は、最寄りの警察署または消費生活センターへ連絡すること。山口県内の相談窓口や警察の連絡先は、県警や市町村の公式サイトで随時確認できる。
(取材・文/坂本 大樹)