テクノロジー

設計現場向けAIアシスタント『TERNO』、一般販売を開始

八千代エンジニヤリングとCCTが開発に協力した設計者向けクラウドAI『TERNO』が7月1日から一般販売を開始。図面の版管理やAI差分抽出、類似図面検索などを備え、現場作業の効率化を目指す。

設計現場向けAIアシスタント『TERNO』、一般販売を開始
©イラスト AI生成 :編集部/プレスリリースジェーピー

インフラ設計の手作業をAIで補助

八千代エンジニヤリング株式会社が開発を進めてきた設計者専用のAIアシスタント「TERNO(テルノ)」が、2026年7月1日付で一般販売を開始した。開発には株式会社コアコンセプト・テクノロジー(以下、CCT)が協力しており、同社は保守や販売代理も担うと発表している。

TERNOは、クラウドアプリケーションとして図面の版管理やAIによる修正差分の自動抽出、類似図面の検索、照査履歴の自動出力、大容量3Dデータの閲覧機能などを備える点が特徴だ。インフラ設計における照査作業で生じる紙への赤入れや人手による照合といった負担を軽減し、図面ファイルの乱立による最新版管理の負荷を低減することを狙っている。

CCTは自社の開発基盤「Orizuru」を活用した軽量3Dビューワーの提供や、AI差分抽出・検索機能の共同開発を担当。リリース文によれば、20枚の図面を対象とした比較で従来作業に比べ約30%の業務効率化が確認されたとしている。

「当社は『TERNO』の保守および販売代理店を担うとともに、今後の機能拡充においても協力を継続し、設計技術者の業務負担軽減に貢献してまいります。」

両社の説明は、設計現場で繰り返される手作業の削減とデータ管理の一元化が狙いであることを明確にしている。とくに公共事業を多く手がける総合建設コンサルタントである八千代エンジニヤリングのノウハウと、CCTの製品基盤を組み合わせることで、業界特有の要件に適合した機能設計が可能になった点が強調されている。

利用場面と期待される効果

TERNOが想定する主な利用場面は以下の通りだ。

  • 図面の版管理と最新版の追跡によるミス防止
  • AIを用いた図面間の差分抽出で照査時間を短縮
  • 類似図面の検索による過去設計の参照や再利用促進
  • 大容量3Dデータの軽量表示による現場確認の迅速化

官公庁の発注案件では、複数段階にわたる照査と承認が必要となるため、図面の管理や差分管理に手間がかかる。TERNOはこうしたプロセスのデジタル化を進め、設計者の現場負担を下げることでスケジュール短縮や品質維持に寄与すると期待されている。

項目 提供機能
版管理 図面の履歴管理・最新版追跡
差分抽出 AIによる修正箇所の自動抽出
類似検索 過去図面の検索で再利用を支援
3Dビューワー 軽量表示で大容量データの確認を可能に

発表資料に記載された導入効果の例では、20枚の図面を対象にした比較で約30%の作業時間削減が確認されたとされる。これは代表的なパイロット計測に基づく数値であり、実際の効果は運用規模や業務の性質により変動する可能性がある。

業界における意義と課題

建設・インフラ分野はデジタル化の遅れが指摘されてきた領域の一つだ。設計や照査の工程は多層的で、関係者間の情報共有が滞ると手戻りや手作業が発生しやすい。TERNOの導入は、そのような現場のデジタル転換を促進する一手になり得る。ただし、広範な導入には次のような課題もある。

  • 既存の業務フローや社内ツールとの連携
  • 図面データや3Dモデルのフォーマット多様性への対応
  • 現場担当者の習熟と運用ルールの整備

加えて、AIが抽出した差分や検索結果の正確性・信頼性をどのように担保するか、そして人による最終確認プロセスをどう位置づけるかが導入効果を左右する。CCTと八千代エンジニヤリングは継続的な機能拡充と保守体制を掲げており、運用面での支援を通じて課題解決を図る方針だ。

なお、TERNOはBoxとの連携やCCTの「Orizuru」基盤を活用している点から、既存のクラウドストレージや社内システムとの接続性が導入の鍵になるだろう。

今後の展開と注目点

発表では、CCTが引き続き開発パートナーとして機能拡充に協力するとしている。建設業界全体でDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速する中、TERNOが業界標準的な図面管理と照査支援の仕組みとして採用されるかどうかが注目される。

導入企業が増えれば、設計データの蓄積とAI学習の循環が生まれ、類似検索や差分抽出の精度向上が期待できる。一方で、公共事業を含む案件での運用では情報セキュリティやアクセス管理、保存期間などの規程整備も求められる。

TERNOの一般販売開始は、設計業務の効率化に向けた重要な一歩と言える。今後は実運用での効果検証と、他システムとの連携・標準化に向けた動きが注目される。

(取材・文:全国編集部 テクノロジー担当)

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