テクノロジー

万博技術が道頓堀に導入 “濡れないミスト”で屋外暑熱対策に新選択

万博で実証されたファインバブル冷却システム「濡れないミスト」が大阪・道頓堀のかに道楽本店で試験運転を開始。従来の屋外ミストの課題を解消し、観光地や公共空間での応用が期待される。

万博技術が道頓堀に導入 “濡れないミスト”で屋外暑熱対策に新選択
©イラスト AI生成 :編集部/プレスリリースジェーピー

万博実証を経て観光地の街頭へ

昨年の万博・大阪ヘルスケアパビリオンで展示稼働した、株式会社サイエンスの冷却ミストシステム「濡れないミスト(Non Wet Mist)」が、大阪・道頓堀の「かに道楽 道頓堀 本店」店頭での試験運転を開始した。万博での長期稼働を経て、実空間での社会実装を本格化させる初の事例として注目される。

同技術は、粒径数μmの超微細ミストに約100nmのウルトラファインバブルを含ませ、噴霧直後に気化することで周辺の熱を奪い冷却効果を得る点を特徴とする。噴霧後に床面や商品、什器、来店客の衣服・肌を濡らさないとすることから、従来の屋外ミストが導入困難だった場所への適用可能性を高めるとされる。

「濡れないミストは、商品や店舗什器を濡らすことなく心地よい涼しさを提供できる優れた技術であり、快適性と店舗環境の両立を実現できる点に大きな魅力を感じています。」

技術の仕組みと万博での実績

サイエンスは、長年のファインバブル技術の研究を背景に本システムを開発した。超微細ミスト中に含まれるウルトラファインバブルが噴霧直後に急速に気化することで、気化熱として周囲の熱を奪うという物理的効果を利用している。資料に示された計測条件の一例では、外気温25℃、計測距離1.5m、噴霧時間30秒、噴霧距離50cmという条件が示されている。

計測条件数値
外気温25℃
計測距離1.5m
噴霧時間30秒
噴霧距離50cm

また、万博では「濡れないミスト」を搭載した業務用ロボット「BellaBot Pro(ミスト仕様)」を3台展示稼働させ、半年間にわたり屋内外で来場者への冷却を行ったことが示されている。万博という多様な来訪者が集まる場での長期稼働は、実環境での検証を重ねるうえで大きな意義を持つ。

導入の現場と想定される効果

今回の試験導入は、観光地として来訪者が密集しやすい大阪・ミナミの道頓堀で行われ、設置はかに道楽本店の店頭、ノズル数は5ノズルとなっている。想定される効果としては、店頭の順番待ち客や通行人の体感温度軽減、暑さ対策による滞在時の快適性向上が挙げられている。

  • 観光地や商店街の屋外での体感温度低下
  • 商品や什器を濡らせない立地への導入可能性
  • 駅構内、教育・保育施設、商業施設のエントランスやテラス席への応用

サイエンスは、試験導入で得られる運用データや来客反応を踏まえ、従来の冷却ミストが困難だった生活空間への展開を進める計画としている。

なぜ今、濡れない冷却が求められるのか

近年の夏季の暑さは年々厳しさを増し、気象庁が新たに導入した「酷暑日」などの用語に象徴されるように、屋外での暑熱対策は社会課題になっている。従来の屋外ミストは確かに冷感を与えるが、床面や商品・什器、来客の衣類を濡らす点が問題であり、精密機器の周辺や飲食店のテラス席では導入が難しかった。

「濡れないミスト」は、この点を技術的に解決することを目指しており、濡らさない冷却手段として都市部の公共空間や商業エリアにおける暑熱対策の選択肢を広げる可能性がある。都市の快適性を維持する意味でも、注目に値する技術と言える。

課題と展望

期待される効果は大きい一方で、今後の普及にはいくつかの課題が残る。まずは試験運用で得られる実効的な温度低減データや、混雑時・風速条件下での挙動、長期運用時の保守性や水資源の効率的利用、そしてコスト面での採算性が評価される必要がある。また、屋外で多様な人々が利用することを踏まえた安全性評価やアレルギー等への配慮も求められる。

一方で、導入先の範囲は多岐にわたる。観光地や商業施設に加え、駅構内や保育施設の外遊びスペース、イベント会場など、従来のミスト導入が難しかった場所での適用が期待される。気象条件の厳しさが増す日本社会において、この種の技術は暑熱対策の多様な選択肢の一つとして注目され続けるだろう。

サイエンスは医療・介護・工業・農業向けのファインバブル技術の応用例を持つ企業として、本取り組みを暑熱対策分野への技術展開の一環と位置づけている。今回の道頓堀での試験運転による実運用データは、今後の公共空間・商業空間での採用判断にとって貴重な材料となる。

夏季の暑さ対策が社会的な優先課題となる中で、濡らさずに冷やすという性質を持つ冷却システムは、都市の“おもてなし”と快適性を両立させる技術として実用化の歩みを進めている。今回の道頓堀での現場検証がどのような運用知見を生み、他の公共・民間空間へ波及していくかが注目される。

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