被災自治体支援と現場の視点をつなぐ役割
吹田市防災政策推進監の有吉恭子さん(54)が、被災自治体支援と平時の企画・研究を一貫して担ってきた経緯が改めて注目されている。市役所入庁は1995年で、阪神大震災を経験しボランティア活動に加わったことがその後の軸になった。職務は長年防災と直接関係のない分野も含まれたが、東日本大震災以降に関心を強め、危機管理に本腰を入れることになった。
有吉氏は市内の危機管理業務を担当する傍ら、学術的な研究にも取り組み、これまでに著者や共著者として約60本の論文を発表。内閣府の検討会委員や大学の招へい教授としても活動している。行政実務と研究を往還する立場は、現場の問題点を根拠ある分析に落とし込み、実務改善につなげる点で評価されている。
- 実務経験:避難所運営支援や災害対策本部の運営支援に従事
- 研究活動:学会発表や論文執筆を継続、優秀発表も受賞
- 被災自治体支援:能登半島地震での継続的な現地支援と協定締結
2018年の大阪北部地震を契機に人材育成に力を入れた市は、同年に有吉氏を人と防災未来センター(神戸市)へ研究調査員として出向させた。北部地震での実務経験としては、災害対策本部の事務局運営に深く関与し、会議での発言や時間配分を詳細に記録・分析した研究が学会で評価された。
| 事実 | 年・状況 |
|---|---|
| 市役所入庁 | 1995年 |
| 危機管理室配属(希望実現) | 43歳のとき |
| 人と防災未来センター出向 | 2018年10月から約1年半 |
| 共著などの論文数 | 約60本 |
| 著作 | 「令和6年 能登半島地震 吹田市が輪島市災害対策本部で一緒に悩んだ36のこと」 |
有吉氏は、九州や北海道など豪雨や地震で被災した地域へ赴き、現地で災害対策本部や避難所運営の支援に当たってきた。2024年の能登半島地震では、吹田市の柴野将行・総括参事とともに総務省などの要請を受け現地支援に入った。現場での問題は多岐にわたり、一般的な応援のやり方では対応しきれない課題があると認識している。
「災害で必要なのは既に起きたことの対応だけではありません。根拠のある事実と分析に基づき、先を見越す想像力も求められる頭脳戦だと思います。」
能登での支援の過程では、応援職員の受け入れ体制や会議運営の具体的な実務支援、業務量調査の実施と交代による休息取得の制度導入提案などを行った。有吉氏らの提案は現地職員の過労軽減につながり、支援体制の質を高める役割を果たした。
吹田市は現地の負担が大きいと判断した生活再建関連業務などについて独自支援を継続する決断を行い、同年4月に輪島市と協定を締結。吹田市職員が現地に常駐し、約4か月半にわたり支援を継続した。これらの活動は同市の災害支援の実務を記録・分析した書籍としてまとめられている。
住民にとっての影響と教訓
行政の防災・危機管理において、現場経験を持つ職員が研究成果を行政運営に還元することは、実効性のある備えにつながる。有吉氏の取り組みは次の点で吹田市民に直接関係する。
- 避難所運営や災害対策本部運営に関するノウハウが市内に蓄積されることで、地震・豪雨時の初動対応の質が向上する可能性がある。
- 被災自治体支援で得られた現場の課題・解決策は、職員の負担軽減や住民サービスの継続に反映される。
- 研究と実務の結合により、吹田市が他自治体と連携する際の支援の精度が上がり、地域間での防災力強化に寄与する。
具体的には、災害時の会議運営の効率化や応援職員の交代制導入など、有吉氏らが現地で試みた手法は市内の災害対応計画にも反映しうる。市民は自治体がこうした知見を政策や訓練に取り入れるかどうかを注視する必要がある。
防災は行政だけの仕事ではない。だが、自治体内部で実務と研究が結びつき、現場での細やかな配慮が制度化されることは、避難所での生活の質や被災後の生活再建の速度に直結する。今回紹介された有吉氏の歩みは、吹田市が災害対応の実効性を高めるための一例として、市民と行政の双方に示唆を与える。
今後、市は有吉氏らの知見をどのように防災計画や職員研修、地域訓練に反映させるかが焦点となる。住民は自主防災組織や地域の避難訓練への参加を通じて、行政が蓄積するノウハウの実効性を高める役割を担う必要がある。
(前田 学・プレスリリースジェーピー大阪府担当)