県が主導、複数事業者と連携したAI健康支援の実証事業を開始
滋賀県は、県内の健康寿命延伸と健康格差是正を目的に、日本ウェルビーイングコンソーシアムと連携して、AIを実装した県民向け健康アプリの提供を開始すると発表した。事業は2024年10月から2027年3月末までを予定しており、事前公募に応募した1500人の県民を対象に実証を行う。
今回の取り組みの中核となるのは、県が既に保険者協議会とともに提供・運営しているスマートフォン向けアプリ「BIWA-TEKU」だ。これに加え、沢井製薬の「SaluDi」、ANA Xの「ANA Pocket」など、コンソーシアム各社が保有するPHR(パーソナルヘルスレコード)サービスを組み合わせ、個人の健康データを統合してAIで分析する枠組みを構築する。
- 参加者に収集されるデータ例:歩数、体重、血圧、睡眠時間、食事記録、移動データ
- 技術基盤:データはAWS上のクラウドに統合、日立システムズのAIで分析
- 提案機能:個人の健康状態に応じた行動レコメンドと将来の罹患リスクの提示
統合したPHRデータを日立システムズの「健康データ分析向けアシスタント AI」(Claude技術の活用を含む)で解析し、その結果をBIWA-TEKU上で参加者に示す。沢井製薬のSaluDiが提供するAIによる疾病発症予測機能も導入し、健康診断など既存データと組み合わせて将来のリスクを可視化する。
「参加者の継続的な健康意識向上をサポートする」
住民生活への具体的な影響と期待
この実証が成功すれば、以下のような具体的な効果が期待される。
- 個別化された予防提案:多様なPHRを統合して解析することで、従来の一律的な保健指導よりも精度の高い行動提案が可能になる。
- 早期発見・予防の強化:将来の疾病リスクが可視化されれば、受診や生活習慣の見直しを促す契機となる。
- 行動変容の促進:福岡県飯塚市の実証で効果が示されたポイント付与型のインセンティブ(ANA Pocketの活用)により、運動や外出などの行動増加が見込まれる。
県内の高齢化や生活習慣病対策が喫緊の課題であるなか、こうしたデータ駆動の介入は医療費抑制や介護入りの遅延といった中長期的な社会的利得につながる可能性がある。一方で、実際の効果を確認するためには利用継続率や介入後の健診データの変化など定量的な評価が不可欠だ。
運用体制とデータの取り扱い
事業には日立システムズ、インテグリティ・ヘルスケア、ANA X、沢井製薬などが参画し、それぞれが持つPHRサービスと分析技術を持ち寄る。データはAWS上に構築された分析基盤に集約され、AIが解析を行う仕組みだ。運用期間はまず実証フェーズとして限定されており、県は結果を踏まえ県内全域や他自治体への横展開を目指すとしている。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施期間 | 2024年10月〜2027年3月末(予定) |
| 対象人数 | 事前公募に応募した1500人 |
| 主要アプリ | BIWA-TEKU、SaluDi、ANA Pocket |
事業に関する公表資料では、データの集約と解析の仕組みについては示されているが、参加者のプライバシー保護や第三者提供の扱い、個人データの保存期間や匿名化の具体手順など細部は今後の運用で明確にしていく必要がある。県や事業者は、安心してデータを預けられる体制の整備が信頼獲得の鍵になる。
今後の展開と住民への助言
県は実証の成果を受け、全域展開や市町・企業・保険者との共同利用モデルの確立、他自治体への横展開を目指すとしている。参加を検討する住民は、どのデータが収集されるか、分析結果がどのように提示されるか、インセンティブの条件や退会時のデータ取扱いなどを事前に確認することが重要だ。
短期的には、具体的な行動変容を促す仕組みや利用者の定着が成否を左右する。中長期的には、健診結果や医療・介護サービスの利用状況と連動した効果検証が求められる。滋賀県が目指す「健康しが」の取り組みの一環として、今回の実証はデータとAIを活用した地域保健モデル構築の試金石となるだろう。