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ServiceNow、AIエージェントの実行権限を技術的に制御する「AI Passport」を発表

米ServiceNowがAIエージェントの実行権限を検証・制御する「AI Passport」を発表。NVIDIAと共同で開発し、2026年第4四半期提供を予定。企業のガバナンスや運用に与える影響を解説する。

ServiceNow、AIエージェントの実行権限を技術的に制御する「AI Passport」を発表
©イラスト AI生成 :山崎 健司/プレスリリースジェーピー

概要と狙い

米国のエンタープライズ向けプラットフォーム企業、ServiceNowは10月15日、AIエージェントの実行時に許可された操作を検証し、逸脱時に段階的対処を行う権限レイヤー「AI Passport」を発表した。設計・ローンチのパートナーとしてNVIDIAが参画しており、提供開始は2026年第4四半期を予定する。

仕組みの核心

AI Passportは、個々のエージェントに対して発行される暗号署名付きの資格情報(パスポート)を基盤とする。実行時にエージェント自身がそのパスポートで許可範囲を照合し、許可外の操作を検出した場合はリダイレクト、実行制限、再接続といった段階を経て、最終的には機械的な停止(キルスイッチ)を作動させる機能を備える。重要な点は、権限付与が企業の業務文脈に基づいて行われる点で、構成管理データベース(CMDB)やGRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)ポリシー、既存ワークフローの承認履歴などを参照して許可の範囲を定める点だ。

狙う課題と導入効果

企業システムにおけるAI利用の拡大に伴い、エージェントが意図しない操作を行うリスクや、承認を得ずに使われる「Shadow AI」の問題が顕在化している。ServiceNowはAI Passportで次の課題に対応しようとしている。

  • 検証可能な権限管理:サードパーティー製エージェントも自己申告に頼らずに実行権限の証明が可能になる。
  • 段階的な制御:ポリシー違反時にアラート、流量制限、ブロック、最終停止といった段階的対応を自動化する。
  • 運用への統合:CMDB、GRC、ワークフロー承認と連携し、既存の運用プロセスに沿った権限付与を実現する。

機能とエコシステム

ServiceNowはAI Passportの仕様をオープンとし、NVIDIAが提供する「NVIDIA Open Agent Safety Platform」を活用することで、本番運用で必要となる強制力の実装を共同で進める。エージェントはNVIDIAのOpenShell等の環境で自らのパスポートを参照できる設計だ。

要素説明
資格情報エージェントごとに発行される暗号署名付きパスポート
検証タイミングエージェントの実行時に自己照合
逸脱時対応リダイレクト → 制限 → 再接続 → 機械的停止
参照データCMDB、GRCポリシー、ワークフロー承認

関連ガバナンスと運用管理

同社はAI Passportと合わせ、AIの利用状況把握やコスト管理の機能も強化した。具体的には、400以上のコネクタを通じて未承認のAI利用を検知し、アクセスマッピングや稼働状況の可視化を行う。また、IT資産管理(ITAM)と連携してユーザー/部門/実行単位ごとにAI関連コストを追跡し、ポリシー違反に対してはアラート→スロットル(流量制限)→ブロックの順で対応する運用を想定している。

業界背景と競争環境

企業内でのAI利用は拡大する一方、適切なガバナンスを整備できている組織は限られている。ServiceNowが公表したデータでは銀行業界のAI利用率は高いものの、対応するガバナンス体制を確立しているのは一部にとどまるとしている。こうした課題を踏まえ、エージェント権限管理は主要ベンダー間での競争領域になっている。実際、競合のWorkdayはIDガバナンス基盤を持つ企業の買収で体制強化を図っている。

「AIの真の約束は、意図と行動のギャップを埋めることにある」

— ServiceNow チーフ・ピープル・アンド・AIイネーブルメント・オフィサー ジャッキー・カニー(発表資料より)

導入時の実務的ポイント(企業向け)

導入を検討する企業が現時点で押さえておくべき点は次の通りだ。

  • 提供時期:2026年第4四半期の開始を想定している。早期導入や限定提供の可能性があるため、ベンダーと事前調整が必要。
  • 既存資産との連携:CMDBやGRC、ITAMといった既存の運用データベースとの接続設計が必要になる。
  • サードパーティー評価:外部エージェントの権限を証明するための手続きや署名プロセスを整備する必要がある。
  • 運用ポリシーの見直し:段階的制御やキルスイッチ発動基準、監査ログの保持方針を事前に定める。

期待される効果と留意点

期待される効果としては、エージェントが不適切な操作を実行する前に自動で検知・制御できる点、Shadow AIの発見と抑止、AI関連コストの可視化による運用改善などが挙げられる。一方で、実際の効果は組織側のCMDBやGRCの整備状態に依存するため、導入前の準備不足がボトルネックになり得る。また、価格設定やライセンス形態が業績に与える影響は現時点で明確でないため、TCO(総所有コスト)試算が必要だ。

日本企業への示唆

日本の金融機関や大手企業もAI導入を進める中で、実行権限の管理は重要な課題だ。ServiceNowのようなプラットフォームレベルでの制御機能は、国内での導入議論を促す公算が大きい。導入を急ぐ前に、以下の準備を進めることが望ましい。

  • CMDBやGRCのデータ品質向上と整合性確認
  • AIエージェントの業務責任者と承認フローの明文化
  • 監査・ログ保存の運用ルール整備

ServiceNowの発表は、AIを業務に組み込む際の安全弁を技術的に提供しようとする試みであり、今後の実運用でどの程度の強制力と柔軟性を両立できるかが注目される。提供開始前にベンダーとの連携方針や社内整備計画を固めることが、実効ある導入につながるだろう。

山崎 健司
山崎 AI編集 サービス担当記者 オンライン

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