減速見通しの小売市場で新商品と付加価値が奏功
タイの生活雑貨チェーン「モシモシ(Moshi Moshi)」は、2026年上半期(1~6月)に売上高と純利益でともに二桁成長を記録した。企業が発表した決算によれば、売上高は前年同期比17.3%増の19億4,051万バーツ、純利益は21.5%増の3億5,283万バーツとなり、店舗数も前年末から拡大している。
この業績は、タイ全体の小売業成長率が2025年の3.9%から2026年は3.7%へと鈍化するとの見通しが示される中での成果だ。モシモシは毎月約1,000SKUもの新商品を投入し、ライセンスキャラクターや季節商品を積極的に取り入れることで、幅広い年齢層の顧客を引きつけている。
「たぶん週に2回くらい来ている。ペンや毛布、ペット用の服も買うわね」
こうした日常的な来店頻度を示す消費者の声は、低価格でバラエティ豊かな商品構成が支持を得ていることを示している。取扱商品の価格帯は20バーツからで、文房具や生活用品、バッグ、ぬいぐるみなどが好調だ。
値上げは単純な転嫁ではなく「付加価値」で説明
原材料価格の上昇圧力がある中で、モシモシは単に価格を引き上げるだけでなく、商品改良を組み合わせる姿勢を明確にしている。経営陣はコスト上昇について「プラスチック製品を中心とした商品の原価に一定の影響が及んでいる」と指摘した上で、対応策として2つの方針を採用している。
「価格が10~20バーツ上昇しても、変更を加えたことで顧客により大きな価値を提供できる」
例えばキャンバス地トートの価格上昇が避けられない場合、単に値段を上げるのではなく、内ポケットや取り外し可能なポーチを追加して実質的な価値を高め、顧客に納得感を与える工夫を行っている。
- 月約1,000SKUの新商品投入で来店動機を創出
- ライセンスキャラクター商品の比率を一定程度確保し、話題性を維持
- 値上げ時は機能やデザインで付加価値を提供し、受容性を高める
設備投資と東南アジア展開を視野に
モシモシは2026年中に約5億バーツの設備投資を予定しており、第2倉庫の整備や店舗増設、土地取得などを計画している。財務面とオペレーション面では製造をOEMに委託する戦略を継続し、コスト管理とスピード確保を図るという。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 売上高(上期) | 19億4,051万バーツ(前年比17.3%増) |
| 純利益(上期) | 3億5,283万バーツ(前年比21.5%増) |
| 店舗数(6月末) | 212店(前年同月末176店) |
さらに中期的には、適切な現地パートナーを条件にしてCLMV諸国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)を含む東南アジア市場への進出を視野に入れており、今後3~5年程度での参入を目指すとしている。
示唆される日本市場への示唆と消費者行動の変化
国内の生活雑貨店や100円ショップが成熟する中で、モシモシの戦略はいくつかの示唆を与える。第一に、新商品サイクルの速さと限定・話題性のあるライセンス商品の活用は、来店頻度を高める有効な手段であること。第二に、コスト上昇時に単純に値上げするのではなく、付加価値を明確に提示することで消費者の納得を得る手法は、価格感度の高い消費環境で有効だ。第三に、倉庫や物流投資を積極化することで、商品供給の安定化と店舗拡張を両立させる点は、規模拡大を目指す小売業にとって重要なポイントとなる。
モシモシの取り組みは、商品ラインナップの多様化と消費者心理を踏まえた価格・価値戦略が結びついた成功例といえる。国内の小売業にとっても参考になる示唆が多く、今後の東南アジア展開や限定コレクションの反応を通じて、さらに学ぶ点が出てくるだろう。
(生活・おでかけ担当記者:小林 陽菜)