概要と狙い
環境省は、早ければ2027年度にも、製品ごとにライフサイクル全体での温室効果ガス(GHG)削減量を算定し、その成果に応じて等級を付与する制度の導入を目指している。評価は、原材料調達から製造、輸送、使用、廃棄に至る工程を含むライフサイクル分析を基に行い、複数段階(例として「3つ星」等)で区分する方向で検討が進められている。
背景:従来制度の限界と制度設計の転換
これまで国や自治体は「グリーン購入法」に基づき、環境配慮型の商品やサービスを優先調達する仕組みを運用してきた。しかし現行の枠組みは、基準を満たすか否かの二元的な判定が中心で、基準をクリアした製品同士の間で差がつきにくいという指摘があった。最新の低炭素技術を積極的に取り入れ、サプライチェーンを通じた脱炭素化で大幅なGHG削減を実現した製品が市場で十分評価されにくいという課題を解消するのが新制度の目的である。
評価方法と制度運用のイメージ
基本となるのは、カーボンフットプリント(CFP)により算出されるGHG削減量だ。製品ライフサイクル全体での削減量を比較指標とすることで、同一カテゴリ内でも相対的に環境性能が高い製品を可視化することを目指す。
制度では、削減量や削減率を評価軸に多段階でランク分けを行い、上位ランクには何らかの優遇措置(インセンティブ)を付与する見通しだ。具体案は検討中だが、公共事業や物品調達の評価方式において高評価製品に加点するなど、実需につながる優遇策が想定されている。
- 評価基準:CFP算定に基づくライフサイクルGHG削減量
- 評価形式:多段階ランク(例:3つ星等)
- 想定インセンティブ:公共調達における加点など実需側での優遇
期待される効果と企業行動への影響
強力なインセンティブが付与されれば、企業にとって脱炭素化への投資判断が変化する可能性が高い。特に公共調達市場での優遇が明確になれば、入札戦略や製品開発においてGHG削減の定量的成果を示すことが競争力の源泉となる。
また、CFPを評価の基準に据えることで、原料選定や工程改善、輸送の効率化、使用時の省エネ化、廃棄時の再資源化といったサプライチェーン全体での取り組みが促進されることが期待される。一方で、正確かつ信頼できるCFP算定のための公的なルール整備や第三者評価の仕組みが不可欠になる。
課題と注意点
制度設計にあたっては以下の点が重要となる。
- CFP算定方法の標準化と透明性確保
- 中小事業者が参加できる支援策の整備(算定コストやノウハウ不足への対応)
- 越境サプライチェーンにおけるデータ収集と整合性の確保
これらを適切に扱わなければ、評価制度が実効性を持たず、市場の分断や不公平を招く恐れがある。
検討体制と今後のスケジュール
本制度に関する議論は「令和8年度脱炭素製品等の需要喚起に向けた検討会」で行われており、座長は有村俊秀・早稲田大学教授が務めている。制度の要件やインセンティブの設計については今後詳細な議論を重ね、実施方法や適用時期が固められていく見込みだ。
| 項目 | 現状/想定 |
|---|---|
| 評価基準 | CFP算定に基づくライフサイクルGHG削減量 |
| 評価区分 | 多段階(例:星評価) |
| インセンティブ例 | 公共調達での加点等を検討 |
| 検討会 | 令和8年度検討会(座長:有村俊秀氏) |
展望
政策の最終的な形は今後の議論で決まるが、ライフサイクル全体でのGHG削減を評価軸に据える点は、企業の技術導入やサプライチェーン改革を加速させる可能性が高い。制度が実効的なインセンティブと、公平で信頼性の高い評価制度を両立できれば、国内市場における低炭素製品の競争力強化につながるだろう。同時に、中小企業支援や国際的なデータ連携といった運用面の整備が成否を左右するため、制度設計段階での幅広い調整が求められる。