調査の概要と主要な結果
電通グループのdentsu Japan内組織「dJ DEIオフィス」が実施した「LGBTQ+調査2026」は、全国の20〜59歳の回答者4万6658人を対象に、2026年1月にインターネットで行われました。本調査では性のあり方を「性自認」「生まれた時に割り当てられた性」「性的指向」の3要素の組み合わせで分類し、異性愛かつシスジェンダー以外を「LGBTQ+当事者層」と定義しています。
主な数値は次の通りです。
- 調査対象者に占めるLGBTQ+当事者層の割合:10.6%(2023年の9.7%から微増)
- 「LGBTQ+という言葉自体の認知度」:76.7%
- 学校教育で「性の多様性について教えるべき」と考える人の割合:81.7%
- 学校で実際にLGBTQ+について教わった経験がある人の割合:9.8%
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 「ゲイ」の認知率 | 90.6% |
| 「アロマンティック・アセクシュアル」等の認知率 | 10.7% |
意識と現実のギャップ──教育ニーズは高いが提供は限定的
学校教育における性の多様性の教え方について、回答者の約81.7%が「教えるべきだ」と答えました。更に当事者の回答では、住みやすい街づくりのために期待する取り組みのトップに「学校での教育」(18.0%)が挙がっています。つまり、社会全体・当事者双方にとって学校での教育に対する期待が高いことが示されています。
しかし現実には、実際に学校で教わった経験のある人は9.8%にとどまり、教育ニーズと提供機会に大きな乖離があります。この差は、若年層の理解促進やいじめ・差別防止、当事者の居場所づくりといった教育の即効性の高い効果を考えると、政策的・現場対応上の重要な課題です。
職場や店舗での研修が理解と行動を促す
学校以外の学びの場、特に職場での研修の効果も本調査で示されました。LGBTQ+に関する研修を受けた人は、研修未受講者と比べて日常での理解意欲や差別的言動に対する対処行動が高く表れており、研修が態度や行動の変化につながる可能性が示唆されます。具体的には次の数値です。
- 「正しく分かりたい・理解したいと思う」人:研修受講者 56.7%、未受講者 43.9%
- 差別的な言動を見た際に「話題を変えたり注意をする」人:研修受講者 44.2%、未受講者 33.6%
- 「研修を受けた店の利用意向」:63.5%
表記・認知の差異が示す課題
総称としての「LGBTQ+」の認知は広がっていますが、個別のセクシュアリティに対する理解のばらつきも顕著です。例えば「ゲイ」の認知率は90.6%に達する一方で、他者に恋愛感情や性的欲求を抱かない「アロマンティック・アセクシュアル」といった用語の認知は10.7%に留まっています。これは、用語の知名度は上がっても、個々の性のあり方に関する具体的な理解は十分に追いついていないことを示しています。
保護者・学校・行政に求められる対応(実務的指針)
今回の結果を踏まえ、家庭・学校・行政それぞれにできる実務的な対応を整理します。どの立場も、日程や手続きを明確にした実行計画が必要です。
- 学校側:教育課程への取り込みは各学年の時間割・指導案で具体化する。まずは「総合的な学習の時間」や道徳、保健体育など既存の授業枠で段階的に導入する。教員研修を必須化し、年次計画と評価指標を設定すること。
- 保護者:学校が行う説明会や教材サンプルの公表を求め、授業導入前に情報を共有する。家庭での語りかけや、子どもからの質問に対する対応例を学校と連携して準備することが有効。
- 行政(教育委員会等):教材・指導ガイドラインの整備と、教員研修の資金的・制度的支援を行う。効果検証のためのモニタリング指標(例:授業実施率、児童生徒の理解度、相談件数の変化等)を設定する。
導入スケジュールの例(例示)として、まずは1年間を試行期と位置付け、校内研修と保護者説明会、授業実施、評価・見直しを四半期ごとに設定することが現実的です。
最後に:教育の現場で求められる「具体化」
本調査は、学校での教育を求める声が圧倒的多数である一方、実施経験は極めて限定的であることを示しました。言葉の認知は進むものの、個別の性のあり方への理解はまだ途上です。教職員への研修や教材整備、保護者との協働を通じて、教育の「内容」と「提供機会」を具体化していくことが不可欠です。研修の効果が示すように、制度的な取り組みは理解と行動を変える力を持ちます。学校現場は短期的な啓発ではなく、継続的な教育体制の構築を優先し、保護者・地域と情報を共有しながら段階的に進めることが求められます。