概要
PwC Japan有限責任監査法人は、生成AI(ジェネレーティブAI)と専門家による確認・判断を組み合わせる評価支援基盤、Assessment Workspaceの本格的な活用を開始しました。本基盤は、システムやセキュリティの評価、内部統制報告に係る評価、ならびに中小受託事業者に関する取引適正化法(取適法)に関する順守評価など、多様な評価業務を支援することを想定しています。
何を変えるのか
企業を取り巻くリスクや規制、技術の変化が速まる状況で、個々の専門家の経験に依存する従来型の評価に替わり、組織的に知見を蓄積・活用する仕組みが求められます。Assessment Workspaceは、このニーズに対応するためにPwC JapanグループのAI開発ノウハウと監査法人の専門知識を統合し、評価プロセスのデジタル化とナレッジの可視化を目指すものです。
仕組みと特長
- ヒューマンインザループ:AIによる一次処理と専門家の精査を組み合わせ、AIだけに頼らない業務フローを実現する。
- 評価プロセス全体の支援:データと評価要件のマッピング、一次評価、追加手続、最終報告までを通じて支援する。
- ナレッジの継続活用:専門家が行ってきた判断の根拠や観点を可視化し、組織として蓄積・参照できるようにする。
提供モデル
同監査法人はAssessment Workspaceを基盤に、クライアントのニーズに応じた複数の提供形態を用意します。主なモデルは次の通りです。
- AIと専門家による評価支援:AIの自動分析と専門家の判断を組み合わせ、効率化と品質確保を両立する支援。
- 企業内評価業務の高度化支援:企業が自社で評価ナレッジを蓄積し、継続運用できる仕組みの構築を支援。
- マネージドサービス:評価業務の一部または全部を継続的に受託し、改善提案や運用支援を行う。
経営側のコメント
「Assessment Workspaceを通じて、専門家の判断やその根拠を可視化・蓄積し、それらをベンチマークとして参照することで、専門家の判断力をさらに高めていきます。さらに、専門家の判断とAIの力を組み合わせることで、業務プロセスのさらなる標準化と評価品質の向上を目指します。」
この発言は、PwC Japan監査法人のBAS担当執行役常務が述べたものです。
期待される効果と留意点
期待される効果としては、評価の一貫性向上、専門家の判断に対する根拠の明確化、業務効率化による専門性の高い業務へのリソース振替が挙げられます。特に、内部統制や法令順守に関わる評価では、判断プロセスの可視化は説明責任(アシュアランス)を果たす上で有益です。
一方で、AI活用に伴う留意点も存在します。適切なデータ管理、アルゴリズムの透明性、専門家による最終判断の確保が不可欠です。PwC側は「ヒューマンインザループ」を明示することで、AI任せにしない運用を標榜していますが、実運用ではガバナンス設計や検証体制の整備が重要になります。
導入対象と今後の展開
公開情報によれば、Assessment Workspaceは幅広い領域での活用が想定されています。特に以下のような評価業務が優先対象とされています。
| 対象領域 | 想定される評価例 |
|---|---|
| システム・セキュリティ | セキュリティ対策の実効性評価、外部設計との照合 |
| 内部統制報告 | 財務報告に係る内部統制の評価補助 |
| 法令順守(取適法等) | 取引適正化法に基づく順守状況の評価支援 |
また、PwC JapanグループのAI開発組織と連携して開発した点から、将来的な機能拡張や他領域への横展開が見込まれます。
企業にとっての実務上の示唆
企業側は、外部評価の受け入れ準備として以下の点を検討する必要があります。
- 評価に提供するデータの整備とフォーマット統一
- 評価結果の説明責任を果たすための内部説明資料の準備
- AIと専門家の組合せによるアウトプットを社内制度に反映する枠組み作り
結び
プロフェッショナルファームによるAIを活用した評価基盤の導入は、評価業務の効率化だけでなく、企業のガバナンスや外部アシュアランスの在り方にも影響を与えます。PwC Japan監査法人が示したAssessment Workspaceは、その第一歩として、評価ノウハウの組織化と継続的活用を目指す取り組みです。実効性を高めるためには、導入企業側でのデータ整備とガバナンス設計が欠かせません。今後の適用事例と運用上の検証に注目が集まります。