要旨
大阪ガスおよび大阪ガスマーケティングは、京セラ製の家庭用蓄電システム「Enerezza® PlusⅡ」の販売を2026年7月1日から開始しました。両社は、本蓄電池の機器個別計測・遠隔制御機能を活用し、新築の太陽光発電設置住宅を対象としたエネルギーマネジメントサービス「スマイ電池EX」の実現に向けた検討を進めるとしています。サービスは需給調整市場(一次調整力)および容量市場への参入を目指すもので、市場参加による対価を顧客へ還元する仕組みを想定しています。
背景と狙い
再生可能エネルギー導入の拡大で、電力系統の需給バランス維持が重要性を増しています。とくに瞬時の需給調整を担う「需給調整市場」と、中長期で供給力を確保する「容量市場」の果たす役割が大きくなっているため、分散型エネルギーリソースとしての家庭用蓄電池の活用が期待されています。2026年4月以降、家庭の調整力が需給調整市場で取引可能となったことも追い風です。
サービスの仕組みと特徴
「スマイ電池EX」は、販売した蓄電池を契約に基づき遠隔で制御・アグリゲーションし、市場に調整力として供出するモデルを想定しています。主な特徴は以下の通りです。
- 機器個別計測:蓄電池単体の充放電量を計測することで、機器ごとの実績に基づく評価が可能。
- 遠隔制御:蓄電池を遠隔で制御し、アグリゲーションによりまとまった調整力を市場に供出。
- 対価の一部還元:市場への供出から得られる対価を顧客に還元する仕組みを想定。
- 新築太陽光設置住宅が対象:サービスは新築物件で太陽光発電設備が設置されている住宅を対象とする方向性。
なぜ機器個別計測か
従来の「受電点参入」方式は家庭全体の電力を基準に評価するのに対し、機器個別計測では対象となる蓄電池等の機器単体で実績を正確に把握できます。このため、家庭内の他機器や生活負荷の影響を受けずに、蓄電池の貢献度を市場側で評価しやすくなります。ただし、機器個別計測の運用面では対応方法などの課題が残るとされ、サービス化にはこれらの課題解消が前提となります。
企業側の位置づけと目標
Daigasグループ(大阪ガスグループ)は、2050年のカーボンニュートラルを目指す施策「エネルギートランジション2050」の一環で、蓄電池事業を重要分野と位置づけています。グループは系統用および再エネ併設型を合わせ、2030年度までに蓄電池の運用規模を1,000MWへ拡大する目標を掲げています。家庭用においても、制御可能な蓄電池を広げることにより電力需給の安定化に寄与する狙いです。
開発・販売のパートナー
今回販売を開始した機器は京セラが製造する家庭用蓄電システム「Enerezza® PlusⅡ」です。京セラは太陽光システムや蓄電システムの開発で実績があり、今回の製品も安全性・長寿命を重視しつつ、市場供出を見据えた機能を備えた点が強調されています。両社は連携して家庭用蓄電池を軸としたエネルギーマネジメントの高度化を進める方針です。
留意点と課題
発表資料では、以下の点が今後の主要な課題として挙げられています。
- 機器個別計測の運用方法・技術的対応の整理
- 住宅事業者や入居者側の導入コスト負担の軽減策
- 既存の制度(例:固定価格買取制度=FIT)との関係整理
とくにハイブリッド構成(太陽光と蓄電池を一体で統合するパワーコンディショナを用いる場合)では、蓄電池に小売電力を充電する可能性があり、その場合には蓄電池から系統へ逆潮流した電力がFITの対象とならないなど制度上の扱いに注意が必要であるとされています。こうした点を踏まえ、需要側の蓄電池を市場に供出するビジネスモデルの実現には、技術・制度双方の調整が欠かせません。
消費者・住宅事業者への期待
企業側は、市場供出による収益や光熱費低減、災害時の電力供給能力(レジリエンス)の向上といった価値を顧客に提供することで、住宅事業者のGX-ZEH対応支援や脱炭素価値の向上に寄与するとしています。発表では、2027年度開始予定の新築向け住宅基準「GX ZEH」により蓄電池普及が見込まれることも示され、制度面の変化と市場ニーズが重なれば普及の弾みになる可能性があります。
今後の見通しと注目点
短期的には、機器個別計測の技術的な運用方法の整理、顧客還元や価格設計、住宅業界への導入支援といった実務面の整備が焦点です。中長期的には、家庭の分散型リソースが市場で一貫して価値を得られる仕組みを確立できるかが鍵となります。これが実現すれば、再エネの導入拡大に伴う系統の安定化に対する民間側からの貢献が高まり、脱炭素化の進展にも影響を与え得ます。
| 項目 | 発表の内容 |
|---|---|
| 販売開始日 | 2026年7月1日 |
| 対象機器 | 京セラ製 家庭用蓄電システム「Enerezza® PlusⅡ」 |
| 想定サービス | 「スマイ電池EX」—新築太陽光設置住宅を対象に市場へ蓄電池の調整力供出 |
| グループ目標 | 2030年度までに蓄電池運用規模1,000MW |
利用を検討する住宅事業者・消費者への案内(整理)
- 販売開始日:2026年7月1日以降の販売分が対象。
- 対象住宅:新築で太陽光発電設備が設置される住宅。
- 導入時のポイント:機器個別計測に対応する計量器の設置や遠隔制御に関する契約内容の確認が必要。
- 還元の仕組み:市場供出による対価の一部を還元する仕組みを想定(詳細は今後公表予定)。
- 制度連携:FIT等既存制度との扱いについては制約があるため、事前確認が推奨される。
家庭用蓄電池を電力市場の調整力として組み込む取り組みは、再エネ拡大に伴う系統運用の変化に対応する上で重要な実験場となります。大阪ガスと京セラの連携から始まる今回の動きは、技術的・制度的課題をどのようにクリアし、住宅現場へと普及させるかが国内の分散型エネルギー活用の試金石となるでしょう。