名護市の周遊促進を狙う学生発の取り組みに企業が協力
名護市の観光偏在の解消に向け、国立沖縄工業高等専門学校(沖縄高専)の学生が開発したWebアプリ「Nago de Tour」を核とした地域活性化プロジェクトに、OSPグループ中核の大阪シーリング印刷株式会社が資材や啓蒙用ステッカーを寄贈した。寄贈は同社による沖縄高専への支援の2年目の取り組みで、地域貢献と学生の実践学習を結び付ける形となった。
名護市では北部の沖縄美ら海水族館など特定スポットへの訪問が集中し、その他エリアが通過されがちである点が課題となっている。学生らはこの課題に対応するため、市内の寄り道スポットや地元店舗の紹介、駐車場の混雑状況、近隣駐車場へのルート案内などを提供するアプリを作成。アプリ利用者が商店街の指定店舗を訪れると、学生手作りのオリジナルグッズが渡される仕組みで周遊の動機付けを図る。
- 寄贈品の概要:エアフレッシュナー「Chura Fresh」用の素材やブリスター台紙、啓蒙活動用ステッカー
- 寄贈数量:麦芽粕混抄紙100シート、ブリスター台紙400枚(5種類×各80枚)、ステッカー500枚(2種類×各250枚)
- 寄贈の狙い:学生の地域貢献活動の後方支援および周遊促進ツールの提供
| 品目 | 詳細 |
|---|---|
| 麦芽粕混抄紙 | 100シート(サイズ:60cm×43cm) |
| ブリスター台紙 | 400枚(5種類×各80枚) |
| ステッカー | 500枚(2種類×各250枚) |
学生が制作するエアフレッシュナー「Chura Fresh」は、ビール醸造で出る麦芽粕を紙の原材料の一部に置き換えた再生紙「麦芽粕混抄紙」を用い、ハイビスカス形に切り出して着色・紐付け・ラッピングまで手作業で行う点が特徴だ。これを旅の思い出として配布し、特定観光地以外への誘導を促すという狙いだ。
「名護市の観光偏在という課題を専攻分野で解決できるのではと、アプリを使った誘導を考えた」「駐車場入口にセンサーを設置して空き状況が分かるアプリを開発したが、現地ではうまく動かず改善に苦労した」
学生側は授業で得た知見を地域課題に応用する経験を得るとともに、実地での調整やステークホルダーとの連携を通じた実務的な学びを重ねている。アプリ開発では既存の地図サービスとの差別化や現地センサーの挙動改善などの技術的課題に直面したが、チームで解決に取り組んだと報告している。
寄贈を行った大阪シーリング印刷は、シール・ラベルやパッケージ製造を手掛ける企業で、OSPグループとして環境や地域貢献を掲げるサステナビリティ方針の一環として支援を実施した。同社は今回の寄贈を「社会・地域貢献」に位置づけている。
住民への影響と今後の見通し
今回の取り組みは、名護市内の商店街や観光事業者にとっては来訪者の分散化による売り上げ機会拡大の可能性を持つ。アプリを通じて来訪者が商店街や周辺スポットを回遊するようになれば、通過型の観光から滞在型、地域消費を伴う観光へとつながる期待がある。
一方、実地での運用には課題が残る。学生が指摘するように、駐車場センサーの現地での信頼性向上や、アプリと既存地図サービスとの機能差別化、店舗側の受け入れ態勢整備などが不可欠だ。これらは官民や地域団体との連携によって改善される余地がある。
住民・事業者向けの実用的なポイントは次の通りだ。
- 地元店舗はアプリを利用した誘導で来客増が見込めるため、参加方法や受け取り景品の手順を確認しておくと良い。
- 駐車場や混雑情報の精度向上が課題のため、実証実験の協力要請があれば協力を検討するとまちづくりに貢献できる。
- エアフレッシュナーは地元資源(麦芽粕)を用いた再生紙製で、環境配慮型の土産としてのPR効果が期待される。
名護市の観光偏在解消は一朝一夕で達成できるものではないが、今回のように教育機関と企業が連携し、学生の創意工夫を地域政策に結び付ける事例は住民参加型の地域活性化モデルとして注目に値する。今後は実証結果の評価や現地での運用改善が続けば、地域の回遊性向上と地元消費の拡大につながる可能性がある。
(小川 拓海)