西宮発、50年超のこだわりが支えるあんこづくり
西宮市上大市で1973年に創業したサザエ食品が、六甲山系のふもとに広がる国見台6丁目の自然環境の中で、日々、和菓子の基幹素材であるあんこを炊き上げている。西宮に本社を構える同社は、「十勝あんこのサザエ」や「京都祇園あのん」などのブランドを展開し、名物の手作りおはぎや、京都土産として知られる「あんぽーね」まで、幅広い商品群を育ててきた。2018年に稼働した西宮工場は、原料調達から製造、品質確認、出荷に至るまでの一貫体制を整備し、地域の食品製造拠点として存在感を強めている。
同社の製餡の柱は、北海道十勝産小豆100%という明快な原料選定にある。用途別に配合や炊き加減を変え、たい焼き用やおはぎ用など20〜30種類のレシピを運用。大型の製餡釜8台を擁する製餡エリアでは、担当者が経験に基づいて火加減や煮上がりを見極め、年間約1,500トンという規模で安定的に供給している。
| 拠点 | 主な機能・設備 |
|---|---|
| 西宮工場(国見台6丁目) | 大型製餡釜8台、急速冷凍設備、X線検査、冷蔵・冷凍保管、トラックヤード直結搬出 |
| 品質・衛生 | 国際規格ISO 22000取得、製造ごとの菌検査・官能検査 |
| 製品区分 | 店内手作り用(350g袋/業務用5kg)、量販向け工場加工品 |
製餡から充填・検査へ、一貫管理で品質を可視化
炊き上げたあんこは、小売や自社店舗向けの場合、製餡直後に袋へ充填される。ここでX線検査と目視検査を重ね、異物混入や包装状態をチェック。続いて熱殺菌処理や適切な温度管理のもとで保管され、各店舗に配送される。各店ではこのあんこを使い、手作りのおはぎやたい焼きが仕上げられる仕組みだ。
量販店向けは工場で最終製品まで仕上げる。包餡機の投入後、1分間に約50個のペースでおはぎが成形され、形状やサイズの均一性が確保される。製造ロットごとに菌検査や官能検査を実施し、基準に達したもののみが次工程へ進む。
急速冷凍と物流動線、できたて品質を地域へ
完成したおはぎは大型の急速冷凍設備で短時間のうちに凍結される。全方位から冷気を当てる螺旋階段式が1台、上部から冷気を送るトンネル式が2台あり、商品特性により使い分ける。約30分で冷凍が完了する環境は、和菓子に適した鮮度保持を目指した導入で、できたての状態に近いおいしさを保つ狙いがある。
保管は−25℃〜−20℃の温度帯で安定管理。出荷時にはトラックヤードで搬出口と荷台を直接連結し、外気温の影響を受けにくい動線を確保している。温度変化に敏感な製品の品質維持に配慮した導線設計は、輸送品質の確保という点で地域の小売現場にもメリットをもたらす。
国際規格「ISO 22000」取得、衛生・安全を標準化
西宮工場は食品安全マネジメントの国際規格ISO 22000を取得している。原料受け入れから製造、保管、出荷までの各工程を通じ、危害要因の管理と手順の標準化を推進。製造のたびに行う検査と合わせ、工場全体のトレーサビリティを支える基盤となっている。地域の消費者にとっても、工程管理が国際基準に適合していることは、日常的に手にする和菓子類の安心材料といえる。
高機能あんこ「レッドダイヤモンド」——栄養と嗜好の両立
創業50年を迎えた2023年以降、同社は「あんこの新たな可能性」をテーマに開発を加速。その一例が2024年に生まれた高機能あんこ「レッドダイヤモンド(Red Diamond)」だ。小豆に本来含まれる食物繊維やポリフェノールは、従来製法では煮汁とともに失われがちだった。サザエ食品は煮汁を捨てない特殊製法を確立し、栄養成分を可能な限りあんこに封じ込めるアプローチを採用。新ブランド「3美生活」のもと、栄養価に配慮した“腸活スイーツ”として市場投入を進めている。
「抹茶のように幅広く展開されるポテンシャルを秘めています」
同社はレッドダイヤモンドをフリーズドライで粉末化する開発も進めており、お湯や牛乳を注ぐだけで楽しめるスティックタイプの商品を年内販売の計画だ。将来的には、パンや洋菓子、アイス、飲料といった分野で“あんこフレーバー”としての活用を目指すとしている。和の素材を日常の多様な飲食シーンへ橋渡しする取り組みは、西宮から新たな味覚の楽しみ方を発信する可能性を秘める。
地域の目線:暮らしに届くメリットと実用情報
市内の製造拠点で磨かれた品質管理と冷凍・物流の仕組みは、日々の買い物で手にする和菓子の鮮度・均一性の向上に直結する。とりわけ量販店向けの安定供給や、店舗での手作り仕上げを支える半製品の管理品質は、購入タイミングに左右されにくい味の再現性につながる。また、ISO規格に基づく衛生体制は、学校や地域イベントでの差し入れ、家庭でのまとめ買いなどでも選びやすさを後押しする。
- 素材選定:小豆は十勝産100%。用途別にレシピを最適化
- 安全・品質:X線検査や菌検査など多層の確認手順を実施
- 流通:急速冷凍と低温保管、ヤード直結で品質変動を抑制
自社ブランドのほか、百貨店向けの和菓子やOEM製造も手がけており、購入チャネルは多様だ。小売用の350g袋や、店舗用の5kgパックなど用途に応じた形態が用意されているため、家庭用途から業務用途まで幅広いニーズに対応する体制が整う。市民にとっては、日常の食卓に取り入れやすい選択肢が増えることが実益となる。
和の甘味の未来を西宮から
サザエ食品の西宮工場は、原料・製法・検査・冷凍・物流という各要素を結び合わせ、和菓子の“おいしさ”を規格化・安定化してきた。さらに、レッドダイヤモンドに象徴される栄養価と嗜好性の両立は、健康志向の高まりに対応しつつ、和の甘味をより日常的に楽しむ道を拓く。粉末化やフレーバー展開の構想は、家庭での飲用やベーカリー・洋菓子分野との連携など、新たな食の接点を生み出す可能性を示す。
六甲の山並みに抱かれた工場で生まれる一粒一粒のあんこは、西宮の日常へ、そして全国の売り場や食卓へ届けられる。地域発の技術と品質管理が和菓子の未来を形づくる——その現場が西宮にある意義は小さくない。