江南区で試験施工開始、住民懸念は継続
能登半島地震から約2年半が経過する中、新潟市が計画する街区単位の液状化対策で、江南区の天野地区にある曽野木ことぶき公園を主な現場として試験施工が始まった。市は地下水位を低下させる「地下水位低下工法」を用い、鋼矢板で囲った区域の地下水を集水管で排水する手法で効果と安全性を確認するという。
説明会に参加した住民からは、工事による地盤沈下や周辺への影響を懸念する声が上がっている。「地下水を抜くことで多少なりとも地盤は沈むのではないか」といった不安や、「この工法の事例は全国に多くないため、やってみないと分からない」との指摘が出ている。工事を推進する自治会長は、具体的な議論が住民理解につながっているとの見方を示している。
実施要件が壁に:負担と同意の二本柱
市が掲げる事業実施の要件は大きく二つある。住民の費用負担(1坪あたり5250円)と、地権者全員の同意だ。対策の対象となる面積は約250ヘクタールに及び、江南区を含む被災地域の住民が対象となるが、この二つの要件が同意形成の大きな障壁になっている。
- 住民負担:1坪あたり5250円(新潟市の提示)
- 同意条件:地権者全員の同意が必要
- 対象面積:約250ヘクタール(市の検討範囲)
住民側からは、経済的事情を抱える世帯がある中での一律負担への反発が強く、石川県や富山県での事例(住民負担がないこと)と比較して疑問の声が出ている。一方、市側は、対象地域が広く市内に類似の液状化しやすい地域が存在する点や、既に個別に対策を施した住民がいることを理由に「公平性」の観点から住民負担を求める姿勢を保ってきた。
市長は「負担軽減」に含み、国への要望も
6月の市議会や市民との対話の場で、中原八一市長は従来の立場を維持しつつも、これまで公の場で明確にしてこなかった「負担の軽減」に言及した。市長は国土交通省への働きかけも行っており、整備後の維持管理費や整備費の支援を求めていると述べた。
「我々としては、住民の公平感を保つため自己負担をいただく前提は変わらないが、その上で、負担が軽減できるように考えていきたい」— 中原八一市長(市長とすまいるトークより)
自治会長は市長に対して直接要望を伝える場を設け、住民負担の軽減や国・県への働きかけを強く求めた。増田進自治会長は、約150世帯が対象となる自治会を代表し、経済的な事情を抱える住民の実情を訴えた。
住民にとっての影響と今後の焦点
今回の試験施工と市長の発言は、被災住民の日常生活や今後の資産管理に直接かかわる。住民負担の扱い次第では、工事の実施可否だけでなく、地域の復興の速度や世帯の経済的負担が変わる可能性がある。
| 項目 | 現状/市の説明 |
|---|---|
| 工法 | 地下水位低下工法(鋼矢板で囲い排水) |
| 試験施工場所 | 江南区天野地区(曽野木ことぶき公園) |
| 実施条件 | 住民負担(1坪5250円)、地権者全員の同意 |
| 対象面積(検討) | 約250ヘクタール |
住民が気にするのは、工事による地盤変化や生活環境の変化だけではない。費用負担の負担割合、負担を軽減するための国・県の支援策、対象から外れた区域との公平性、そして地権者全員の同意が得られなかった場合の代替案など、解決すべき論点は多岐にわたる。
市は試験施工で安全性と有効性を確認するとともに、住民説明を重ねて理解を促す考えだが、説明だけで不安が払拭されるかは不透明だ。今後の焦点は、国や県からの追加支援の有無、負担軽減の具体策、そして同意形成を進めるための手続きと透明性の確保に移る。
住民への実用情報
- 説明会や試験施工の現地確認は、実際の工事の様子を把握する機会となる。関心のある住民は市の案内に注意すること。
- 負担軽減や免除の対象となる世帯(生活保護など)については市が示している対応がある。該当する世帯は市窓口で詳細を確認すること。
- 地権者全員の同意が必要な点については、自治会や地権者間での話し合いが鍵となる。早めに情報共有を進めることが重要だ。
新潟市の街区単位の液状化対策は、被災地の安全性向上を目指す一方で、費用負担や同意要件が実施の成否を左右する複雑な課題を抱えている。市の試験施工と市長の発言が、実際にどのような支援策や手続きの見直しにつながるかが、今後の住民生活に直結する。住民、自治体、国・県の三者が具体的解決に向けた協議を深めることが求められている。