相談件数は5603件、精神的暴力が最多
神奈川県がまとめた昨年度の集計によると、県が所管する配偶者暴力相談支援センターに寄せられたドメスティックバイオレンス(DV)に関する相談件数は5603件となり、前年度を716件上回って2年ぶりに増加しました。相談の内訳では、暴言などを含む精神的暴力が3944件、殴る蹴るなどの身体的暴力が2114件と報告されています。
県は「被害防止に向けた広報の強化が相談件数の増加につながった」と分析している。
集計の範囲と注意点
今回の数値は、神奈川県内の3つの政令指定都市を除く地域から、県の配偶者暴力相談支援センターに寄せられた相談に基づくものです。政令市分のデータは各市が把握しているため、県全体の実態を把握する際は市部の件数も合わせて見る必要があります。
住民への具体的影響と支援ニーズ
相談件数の増加は一面で広報や相談窓口の周知が進んだ成果と見ることができますが、同時に被害実態の深刻化や支援需要の拡大を示す可能性もあります。特に精神的暴力の相談が多い点は、被害の“見えにくさ”や長期化リスクをはらんでおり、早期に適切な支援につなげるための仕組みが重要です。
- 相談の受け皿(窓口の人員・時間、専門職の配置)の拡充
- 緊急避難・一時保護の受け入れ体制の確保
- 被害者が地域で孤立しないための連携(医療、福祉、司法など)の強化
行政・支援団体の取り組みと今後の課題
県は広報強化が相談増加の一因と分析しています。相談が増えること自体は被害者が支援につながる前向きな側面と解釈できますが、同時に相談対応の能力を高めなければ、窓口の混雑や対応の遅れが生じる恐れがあります。被害の早期発見、継続的な支援、加害者への対応策など、多面的な施策が不可欠です。
現場レベルでは、相談員の負担軽減や専門性向上のための研修、夜間・休日の相談体制、外国語対応やLGBTQ+当事者への配慮といった多様なニーズへの対応が急務となります。被害が深刻化する前に介入できる地域の見守りや関係機関との情報共有も重要です。
住民が知っておくべきこと
被害を受けている、またはその可能性があると感じた場合、ためらわず相談窓口に連絡することが第一歩です。相談は被害の状況を整理し、公的支援や保護につなげるための出発点となります。また、周囲の人が気付いた場合は本人に直接無理に問い詰めるのではなく、専門窓口への相談や、本人の意思を尊重した支援の方向性を一緒に探ることが望まれます。
| 項目 | 件数 |
|---|---|
| 総相談件数 | 5603件 |
| 精神的暴力 | 3944件 |
| 身体的暴力 | 2114件 |
(※合計は件種別の重複がある場合があるため総件数と単純に一致しないことがあります。県の公表資料に基づく集計です。)
地域社会の役割と今後の視点
DVは個別の家庭内の問題とされがちですが、地域全体で支える仕組みが求められます。住民、教育現場、医療機関、福祉・司法機関などが連携して早期発見・介入に努めることが被害の深刻化を防ぎます。例えば学校や職場で見られる変化に気づく仕組み、ワンストップ相談窓口の周知、一次対応できる人材育成などが地域レベルでの有効な対策です。
県や市町村は今回のデータを踏まえ、相談窓口の人的・物的体制の見直し、普及啓発の展開、被害者支援のための予算措置を検討していくことが求められます。被害に直面している人が安全に相談・避難できる環境を整えることは、地域の安全や生活の質を守ることにつながります。
(取材・文/山口 恵、神奈川県担当記者)