名古屋発(池田 修)
森記念財団都市戦略研究所が公表した「日本の都市特性評価」2026年版で、名古屋市は全国136都市の中で高位を維持しつつもスコアを下げた。都市全体の評価を左右する「経済・ビジネス」分野が大きく減点されたことが主因とされ、再開発の停滞や財政状況の悪化が背景にあると分析されている。市民の暮らしや企業誘致、将来の市街地整備にかかわる地元課題として注目される。
今回の評価では名古屋市の総合スコアは1313.7で、首位の大阪市(1356.1)との差が広がった。森記念財団の分析では、名古屋のスコア低下に寄与した要因として以下の三点を挙げている。
- 新規事業用ビルの供給面積の減少(2025年の供給面積が前年より減少)
- テレワークや時差出勤など多様な働き方の普及が他都市に比べ低調
- 地方財政の悪化(国からの交付税不交付団体から交付団体へ転落した点は調査対象外だが懸念材料)
| 都市 | スコア | 前回比 |
|---|---|---|
| 大阪市 | 1356.1 | +0.3 |
| 名古屋市 | 1313.7 | -8.8 |
名古屋市は総合で2位を維持する一方、分野別では「研究・開発」「生活・居住」といった評価の高い分野が順位を支えている。しかし、今回の下落は市の将来計画に直接影響する。市内では建築資材や工事費の高騰が複数の再開発事業を中断させていることが確認されており、具体例として栄地区の再開発凍結や名古屋駅周辺の大型案件見直しが挙げられている。これらは市街地の魅力維持やビジネス環境の刷新にとって重要な課題だ。
「住みやすさが高評価なのはうれしいけど、総合1位になりたい!」
広沢一郎市長は7月30日にX(旧ツイッター)でこう投稿しているが、都市力を高めるには居住の快適さだけでなく、ビジネス基盤の強化と財政健全化が求められる。オフィス供給の面では空室率が低めで "品薄" 感が強い一方、既存ビルの老朽化と設備面での差が新築ビルとの競争力に影響しているとの指摘がある。仲介業者の分析では、古いビルを働きやすく改修しない限り企業誘致や新しい働き方への対応で不利になる可能性が高いという。
名古屋圏内では豊田市や岡崎市などが上位に入り、物価や住宅コストの低さ、製造業集積による雇用力が評価を押し上げている。一方で愛知県全体では2025年国勢調査の速報値で人口が戦後初めて減少に転じており、人材の確保が都市競争力の持続にとって喫緊の課題となっている。都市間競争においては県内各都市がそれぞれの強みを核に住民サービス向上や子育て支援を強化し、外部から人材を呼び込む取り組みが必要だ。
住民への影響と今後の焦点
今回の評価の低下は直ちに住民サービスの低下を意味するものではないが、中長期的な影響は無視できない。再開発の停滞は商業施設や公共空間の老朽化を招き、買い物や交通、雇用機会に波及する可能性がある。財政悪化が続けば、公共インフラの維持管理や子育て支援、福祉サービスの充実に制約が出るリスクもある。
市に求められる対応は大きく二つある。第一に、再開発を停滞させないための事業推進の仕組みづくりだ。建築費上昇や市場環境の変化を踏まえた事業再設計や、民間と連携した資金調達の柔軟化が必要となる。第二に、財政健全化の道筋を明確にし、市民に説明することだ。名古屋市が今後どのように事業優先順位を定め、どの分野に投資を集中するかが注目される。
企業や住民への影響を緩和するため、当面は次の点が実務的な焦点となる。
- 再開発計画の見直しと段階的実行によるコスト抑制
- 既存オフィスの改修支援や働き方改革支援による雇用環境の底上げ
- 県内外からの人材流入を促す子育て・居住支援策の強化
名古屋は工業・研究拠点としての強みを持ち、生活環境の評価も高い。だが都市間競争で順位を維持・向上させるには、今提示された課題に的確に対処することが不可欠だ。行政と民間、地域が連携し、次代の都市像を描く取り組みが求められている。
(池田 修・プレスリリースジェーピー愛知県担当)