長崎で国際シンポジウム:被爆地から核廃絶の道を考える
7月25日、長崎原爆資料館ホールで国際平和シンポジウム2026「核兵器廃絶への道~日本被団協結成70年、原点長崎から」が開催された。主催は長崎市、長崎平和推進協会、朝日新聞社で、国内外の研究者や被爆者が登壇し、核兵器が再び力の源泉となりつつある国際情勢の中で、廃絶に向けた方策を議論した。
基調講演を行ったのは、アメリカン大学の教授で核問題研究所長のピーター・カズニック氏。記事はカズニック氏の発言を紹介し、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が2024年にノーベル平和賞を受賞したことに触れつつ、日本被団協の取り組みを高く評価したと伝えている。カズニック氏は世界的な核兵器増強の傾向を懸念し、「人類滅亡がこれほど近づいたことはない。日本は新しい世界を築く努力の先頭に立つべきだ」との主旨を訴えた。
「日本被団協のメンバーは、長崎が核兵器の惨禍を受けた最後の都市となるよう勇敢に闘ってきた」— ピーター・カズニック氏(要旨)
続いて行われた特別トークでは、被爆者の代表委員である田中熙巳さん(94)と被爆3世の若い世代が登壇し、平和運動の継承や若い世代の関与について語り合った。田中さんは被爆体験に基づく根本的な問いかけを示し、核兵器をめぐる議論を住民レベルで広げることを求めた。
トークの合間には俳優の石原さとみさんからのメッセージ映像も上映され、被爆者が長年にわたりつないできた「心からの平和への願い」を忘れないとする言葉が紹介された。
| 登壇者 | 肩書等(記事記載) |
|---|---|
| ピーター・カズニック | アメリカン大教授、核問題研究所長 |
| 田中熙巳 | 日本被団協代表委員(被爆者) |
| ロシャナック・シャエリヤジディ | アントワープ大准教授(現代イスラム世界研究) |
| 加藤喜之 | 立教大教授(宗教学) |
| 小川公代 | 上智大教授(文学研究) |
パネル討論「最終戦争を避けるため」では、国際的な学識経験者が核抑止論の前提や権力関係の問題を問い直す発言を行った。シャエリヤジディ准教授は核抑止力という用語が現実を的確に示すものではないとし、その背後にある力学を問い直す必要性を指摘した。
会場で提示された論点は、長崎の地域社会にとって具体的な課題と直結している。被爆の実相を伝える長崎原爆資料館や教育現場、自治体の平和施策は、こうした国際的議論の受け皿となる役割を果たす。今回のシンポジウムは、次世代への継承と地域の平和教育の在り方を改めて問う契機になった。
- 被爆者の証言と国際的な学術的議論が同一の場で交差した点は、地域の平和教育に影響を与える。
- ノーベル平和賞受賞を経た日本被団協の活動が国内外の注目を集めていることが改めて示された。
- 住民・教育関係者・行政が連携して被爆の実相を伝える具体的手段を強化する必要がある。
長崎の住民にとっての直接的な示唆は幾つかある。まず、被爆体験の継承と若い世代の参画を促す機会を増やすことだ。被爆者の高齢化は進んでおり、被爆体験を記録・教育資材として確実に残す取り組みが急務である。学校現場や地域の学習会、資料館の展示更新など、実践的な手法の整備が求められる。
次に、地方自治体の役割である。長崎市をはじめとする地方行政は、国際的な核問題と地域の記憶を結び付ける施策を検討する必要がある。市民が参加する公開討論やワークショップ、被爆証言を活用したカリキュラムの導入など、住民が主体的に議論に参加できる場作りが重要だ。
また、今回の討議は外交・安全保障政策をめぐる市民的関心を高める契機でもある。住民が国内外の動向を理解し、地方の意見として発信するための情報提供と学習機会を自治体や教育機関が充実させることが期待される。
最後に、今回のシンポジウムの報告は記事によれば8月3日付朝刊で詳報される予定だ。関心のある市民は地域紙や主催団体の発表を確認し、資料館の講座や公開行事、次世代向けの学習プログラムなどの案内に注目してほしい。
長崎は被爆の記憶を基盤に、核兵器廃絶をめぐる国内外の対話を今後も継続していく責務を有する。今回のシンポジウムは、そのための議論を再確認する場となり、地域として具体的にどのように記憶を残し、行動につなげるかが問われる機会となった。