審議会が60円上乗せを答申、10月1日施行予定
宮城地方最低賃金審議会は5日、県の最低賃金を現在から60円引き上げ、時給を1098円とするよう宮城労働局長に答申した。手続き上の異議申し立てなどを経たうえで、10月1日に改定内容が効力を持つ見込みだ。今回の引き上げ率は約5.78%で、昨年(2025年)の改定時の上昇幅(65円、約6.68%)には及ばないものの、国の目安額を上回る水準となった。
「賃上げの必要性は労使双方の共通認識。ここ数年で従前と比べかなり大幅な上昇が続いており、倒産件数なども議論にのぼった」
この発言は審議会の熊谷真宏会長によるもので、審議では労働側と使用者側の主張に隔たりがある中、公益委員の案を踏まえて結論がまとまったという。審議会の採決は賛成多数(賛成11、反対3)で答申が決定された。
今回の数値と背景
中央最低賃金審議会が示した引き上げの目安は56円で、今回の答申はその目安を4円上回る。厚生労働省の諮問機関の示唆を地域で上回って改定するのは2年連続となる。また、改定後に最低賃金を下回る労働者の割合を示す「影響率」は29.67%と算出され、前年度の25.49%を上回る数値となった。
| 項目 | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|
| 時給 | (現行)1038円相当(※) | 1098円 |
| 引き上げ額 | — | 60円 |
| 引き上げ率 | — | 約5.78% |
| 中央の目安との差 | — | +4円 |
| 影響率(改定後最低賃金未満の労働者割合) | 25.49%(2025年) | 29.67% |
審議過程と立場の相違
審議中、労働者側と使用者側で目標額に差があった。労働者側はより高い引き上げを主張し、専門部会では64円の引き上げを求めた。一方、使用者側は52円を提案し、賃上げが企業のコストを圧迫する懸念を示した。使用者側を代表する立場からは、原材料価格や光熱費など各種費用の上昇を指摘し、賃金以外のコスト負担が増えると将来的な生産性向上や設備投資に回せる余力が失われるという懸念も表明された。
- 労働側:より大きな引き上げを要求(専門部会で64円)
- 使用者側:経営負担を理由に抑制を主張(専門部会で52円)
- 公益委員:中間案として60円を提示、審議会はこれを採用
地域への影響と現場の見通し
今回の改定で影響を受ける労働者の比率が3割近くに達する見込みで、シフト制やパート・アルバイト比率が高い業種ほど賃金総額が増える可能性がある。飲食・小売・介護などの業界では人件費の上昇が顕著になり得るため、各企業は勤怠管理やシフトの見直し、価格転嫁の検討を迫られる場面が出てくる。
一方で、賃金底上げは消費の下支えにつながるとの見方もある。賃金が増えれば地域内での消費増加が期待され、内需に依存する中小企業にとってはプラスに働く可能性がある。だが、各企業の体力差があるため、均一の効果が現れるわけではない。
労働・経営双方が注視する今後の動き
答申は行政手続きを経て確定されるが、使用者や個別事業所は法令順守のための準備を進める必要がある。給与改定や労働契約の見直し、勤務表の再設計、労務管理の強化などが求められるため、特に中小事業者は経営計画の修正を早期に行うことが実務上の喫緊課題となる。
また、今後も中央での目安やインフレ動向、地域経済の回復状況を踏まえた議論が続く見通しで、県内の労使関係者と行政は、賃金引き上げの波及効果と副次的影響を注視していく必要がある。
(田中 彩花)