社会

医療的ケア児支援、家族も支える制度へ

重度障害のある長男を育てる野田聖子議員が、医療的ケア児支援法に込めた思いを語った。施行5年を迎え、家族の就労や社会参加を支える課題を見つめる。

医療的ケア児支援、家族も支える制度へ
©イラスト AI生成 :森田 拓海/プレスリリースジェーピー

生後から2年3カ月にわたり入院し、たんの吸引や胃ろうなどのケアを受けていた長男が退院したとき、野田聖子衆院議員は、家庭が担う負担の大きさを知った。看護師から聞いた「大半のお母さんが仕事を辞めて一日中ケアをしています」という説明は、野田議員にとって衝撃だったという。病院の中では支援を受けられても、地域で暮らし始めた途端、子どもと家族が社会から見えなくなる現実があった。

野田議員の長男、真輝さんは15歳。重度の障害があり、日常的に医療的な手助けを必要としている。野田議員は、こうした子どもたちを表す言葉そのものがなかった時期に、「医療的ケア児」という呼び方をつくり、存在を社会に伝えることから取り組んだ。保育園や学校に通うことが難しく、家の中で過ごさざるを得ない子どもたちに、教育や人との関わりを保障するには、制度を新たに整える必要があると考えたためだ。

病院を出て、地域社会に入った途端に存在が消えるのです。

その問題意識を背景に成立したのが、医療的ケア児支援法だった。法律は、支援の対象を子ども本人だけに限らず、「家族」も含めている。教育を受ける体制の拡充に加え、家族が仕事を辞めずに済む環境づくりも明記された。野田議員は、特に母親がケアの大部分を引き受け、自らの人生を後回しにしているケースが少なくないとして、家族全体を支える必要性を訴えた。

付き添いを減らし、働ける環境へ

法律の施行後、学校で看護師を配置する動きが進み、保護者が登校に付き添う場面は「ずいぶん減った」と野田議員は感じているという。医療的なケアが必要だからといって、保護者が常に学校にとどまらなければならない状況が続けば、就労の機会は失われる。子どもが学ぶ場を確保することと、家族が社会人として働き続けられることは、別々の課題ではない。

野田議員自身も、長男の学校生活に数回付き添った経験がある。その間、夫が役割を担ったことで仕事に集中できた。仕事に没頭できる時間が、結果として子どもと向き合う力を保つ休息にもなったと振り返る。家族を支える制度は、単に介護や医療の負担を軽くするだけではない。親が一人の生活者として過ごせる時間を確保し、子どもとの関係を穏やかに保つための基盤でもある。

施行5年、対象拡大の意味

医療的ケア児支援法の施行から、今年9月18日で5年となった。さらに7月には、支援対象を18歳以上にも広げる改正法が成立した。子どもが成長すれば、医療的なケアや家族の負担が自動的になくなるわけではない。年齢によって支援の枠から外れることを防ぎ、成長後も社会との接点を持ち続けられるようにすることが、今回の対象拡大に込められた重要な意味となる。

節目内容
5年前医療的ケア児支援法が施行
今年7月支援対象を18歳以上などへ広げる改正法が成立
9月18日法律の施行から5年

「家族」を制度の中心に置く

野田議員が法文に家族を位置づけたのは、子どもの支援を家庭の献身だけに委ねないためだった。医療的ケアを必要とする子どもを育てる家庭では、日々のケアに加えて、学校との調整や通院、生活全体の組み立てが求められる。母親や父親が仕事を続けられるかどうかは、家庭の事情だけで決まるものではなく、学校や医療、地域の受け入れ体制に左右される。

  • 子どもが教育を受け、人と関わる機会を持てること
  • 保護者が学校への付き添いを理由に離職せずに済むこと
  • 成長後も支援の対象からこぼれ落ちないこと

野田議員は、母親であることと、社会人として生きることを対立させるのではなく、両方を続けられる環境が必要だと語る。家族が休める時間や働ける時間を持てることは、親のためだけではない。子どもにとっても、家庭の中だけに閉じるのではなく、学校や地域で他者と関わりながら成長する機会につながる。

制度ができたことで、医療的ケア児という存在は社会に知られるようになり、学校の看護師配置など具体的な変化も生まれている。一方で、野田議員がかつて直面した「地域に入った途端に存在が消える」という問題を完全に解消するには、法律を知るだけでなく、子どもを受け入れる現場と家族を支える仕組みが必要だ。医療的な支援を必要とする子どもが、家族の負担だけを代償に社会参加するのではなく、尊厳を持って暮らせる社会をどうつくるか。施行から5年を迎えた法律は、その問いを改めて突きつけている。

森田 拓海
森田 AI編集 社会担当記者 オンライン

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