久々子湖のシジミ漁、過去数十年で急減
福井県美浜町の久々子湖で、江戸時代から続く伝統漁法によるシジミ漁の漁獲量が近年、著しく減少している。県の統計によれば、1982年の年間漁獲量は45トンあったが、近年は減少が続き、2022年以降は1トンを下回り、昨年は過去最低の約217キロにまで落ち込んだ。
漁は5月に解禁され10月まで続き、地元の南西郷漁協の組合員らが熊手状の漁具「鋤簾(じょれん)」を使って採取する。6月7日の漁では約1時間半で1人当たり約1.5キロの採取にとどまったという。漁歴60年以上の組合員(76)は「採れる場所を探すのが大変」と話しており、漁場の確保と漁業の継続に不安が広がっている。
浅場の減少、外来水草の流入、そして塩分濃度の問題
町によると、1975年以降の水害対策に伴う湖のコンクリート護岸化で、水深1メートル以下の浅い砂場が減少し、これが長年にわたる漁獲量の減少につながった。2019~2021年には年間漁獲量が約1~4トンに落ち込んだ。
対策として町は2020年から湖畔に砂を入れて浅場を造成し、これまでに7カ所、約1万6000平方メートルを整備した。しかし、台風後の水草「ヒシ」の三方湖からの流入などで2022年に再び漁獲が落ち、2024年はヒシ発生が収まり610キロまで回復したものの、2025年は過去最低の217キロとなった。
「シジミを増やそうとしてもなかなか難しい。造成した浅場でも全く採れない日もある」と組合長(76)。
浅場やヒシの問題に加え、現在は塩害の可能性が新たな脅威として浮上している。県の担当者は昨夏以降、湖で全く採れなくなった時期があったことを指摘し、湖水の塩分濃度上昇が疑われるとしている。久々子湖は汽水湖であり、淡水と海水が混じり合う環境の変化がシジミの生息と繁殖に直接影響する可能性がある。
データ収集と今後の見通し
県は昨秋から塩分や水質のデータ収集に乗り出し、現在は約1時間ごとに濃度を測定している。久々子湖は1日のうちでも塩分濃度の変動が大きく、現時点で塩害が主因と断定できないとしているが、継続的な計測で傾向を把握するとしている。
| 年度等 | 漁獲量(備考) |
|---|---|
| 1982年 | 45トン(県統計) |
| 2019~2021年 | 約1~4トン |
| 2022年以降 | 1トン未満 |
| 2024年 | 約610キロ(ヒシ減少で回復) |
| 2025年 | 約217キロ(過去最低) |
地域への影響と住民にとっての意味
久々子湖のシジミはかつて美浜町内でブランド化を目指し、地元飲食店でも提供されていた。しかし近年は流通量がほとんどなくなり、地域の食文化や観光資源としての価値も失いつつある。漁協関係者は、漁獲量の減少が続けば若い後継者が漁業を選びにくくなり、地域の産業基盤がさらに弱体化すると危惧している。
- 生活・産業面:漁業収入の減少で関係者の生活に直結する影響が続く
- 食文化:地元で味わえる機会が減り、郷土食の継承に支障
- 環境管理:護岸化や外来水草対策、塩分変動の監視が喫緊の課題
町は造成による浅場復元を進めてきたが、成果は限定的であり、ヒシの流入や海水割合の変化といった複合要因への対処が必要だ。県の継続的な水質データの蓄積と解析が、効果的な対策立案の基盤となる。
住民が知っておくべき実務的情報
久々子湖のシジミ漁は5月に解禁し10月まで行われる。地元で漁を担うのは南西郷漁協で、漁具は鋤簾を使った手作業が中心だ。今後、漁場造成や水質改善の取り組みによって漁獲の回復が期待される一方で、短期的に消費者向けの流通や店頭での提供が戻る見通しは不透明である。
県や町は引き続き現場調査とデータ収集を進めるとしており、関係者は測定結果や対策の進捗を注視する必要がある。地域住民や利用者は、漁協や町の発表を確認し、イベントや飲食店での提供情報を都度チェックするとよい。
久々子湖のシジミは、環境変化と人為的な環境整備の双方が影響する事例として、地域の自然資源管理の在り方を問う課題でもある。漁業者、町、県、そして住民が連携して取り組むことが、伝統漁法の継承と地域の暮らしを守る近道となる。