果樹王国・和歌山が防除を前倒し、経済被害の拡大を抑制
和歌山県は23日、ウメやモモ、スモモなどの樹木を枯死させる特定外来生物「クビアカツヤカミキリ」に対する緊急対策を発表した。県内で被害が拡大していることを受け、令和9年度の重点施策を前倒しで実施する。国の交付金などを含む約1億120万円を投入し、11月中旬から対策を開始する見通しだ。
新たに導入される主な対策は、成虫の産卵を物理的に防ぐ「産卵防止ネット」の設置である。県の果樹試験場かき・もも研究所(紀の川市)が有効性を確認したもので、クビアカツヤカミキリの産卵管の直径が約0.4ミリであることに着目し、市販のマス目が0.3ミリのネットを幹に巻くことで産卵を阻止できると判断した。
成虫は一般に活動が活発になる時期があり、県によれば活動のピークは6〜8月だが、産卵に備え比較的農作業の負担が少ない11〜2月にネットを設置しておく方針だ。合わせて、被害木の伐採や飛散防止ネットの設置、薬剤散布などを市町村と連携して進める。これらの事業費については県が補助を行い、市町村等が産卵防止ネット設置などを行った場合、事業費の4分の3を補助するほか、被害調査に関しては2分の1を補助する。
県の発表では、県内では既に19市町のウメやモモなどの農地で約1万1400本、サクラなど農地以外を含め約1770本で被害が確認されている。平成24年に国内で初めて同種が確認されて以降、今年8月時点で被害は22都府県に広がっており、和歌山県内では平成29年7月に県北部のかつらぎ町で成虫を確認、令和元年11月に同町で初めて被害が確認された。その後、被害は県南部へと拡大し、今年9月には県内最大のウメ産地であるみなべ町でも被害が確認された。
- 対策開始時期:11月中旬予定
- 投入額:約1億120万円(国の交付金などを含む)
- 補助内容:産卵防止ネット等の事業費を4分の3補助、被害調査は2分の1補助
今回の前倒し施策は、果樹生産に直結する深刻な事態を受けた措置だ。ウメ、モモ、スモモは和歌山県の果物収穫量全体の約3割近くを占めており、被害の拡大は地域経済と生産者の営農継続に大きな影響を及ぼす。県は公園や学校など県有施設のサクラなど樹木に対しても防除を実施する方針を示している。
具体的な作業負担や手順については、設置時期を冬季に設定した理由から、収穫期への影響を極力避けつつ、農作業が比較的少ない時期に対策を集中させることを意図しているとみられる。産卵防止ネットの導入は物理的対策であり、薬剤散布に比べて環境への負担が少ない点も利点だが、実際の現場では個々の樹木ごとに設置作業が必要になるため、人的負担や費用の負担感は完全には解消されない。
県は「果樹王国の和歌山にとって危機的な状況」との認識を示している。
県内の生産者や関係者は、被害箇所の早期把握と速やかな対処が求められる。市町村単位での実施計画や、産卵防止ネットの配布・設置支援、被害木の処理手順の周知といった施策が現場でどのように進むかが今後の焦点となる。県は補助制度を設けることで負担軽減を図るが、速やかな現場対応と人手確保が実効性を左右する。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 被害確認本数(農地) | 約1万1400本 |
| 被害確認本数(農地外) | 約1770本 |
| 活動期 | 6〜8月 |
| ネットの目合い | 0.3ミリ(推奨) |
| 産卵管直径 | 約0.4ミリ |
住民、特に果樹農家に向けての実用的な注意点を整理する。まず被害の疑いがある樹木を見つけた場合は、市町村窓口や県の担当部署に速やかに連絡し、被害調査の補助を受けることを勧める。被害木は放置すると害虫の繁殖源となるため、伐採や適切な処理が必要だ。県は被害木の伐採を支援する体制を整備する方針だが、伐採後の処分方法や伐採作業そのものの安全確保についても事前に確認することが重要である。
また産卵防止ネットの導入にあたっては、適切な目合いと巻き付け方の確認が必要だ。試験で有効性が確認されたとはいえ、設置方法によっては隙間が生じ、効果が薄れる可能性がある。ネット設置の作業日程や資材の入手方法については、市町村や農協、県の相談窓口が案内するため、早めに情報を収集して計画的に準備を進めてほしい。
今回の前倒し施策は、被害拡大のスピードに対応するための緊急措置であり、長期的には地域全体での監視体制や防除方法の継続的な改善が求められる。和歌山の果樹産業を守るため、行政と生産者、地域が連携して感染源の封じ込めに取り組むことが必要だ。
(岡田 美穂)