コーセーホールディングスは7月9日、山梨県南アルプス市に新設した国内3拠点目の生産拠点「南アルプス工場」を本格稼働させ、稼働式を行った。工場は地元の清澄な水資源を主軸に据え、県内で進むグリーン水素や水力由来の電力を取り入れた点が特徴で、地域の資源を活用した“地産地消型”の製造モデルを打ち出している。
地域資源を活かす生産設計
同社は従来から「化粧品づくりには良質な水が重要」という考えのもと、製造拠点選定で水源を重視してきた。南アルプス工場では、雪解け水などの水資源の循環利用を進める一方、山梨県が推進する「やまなしモデルP2Gシステム」で生産されたグリーン水素を熱エネルギーとして活用する計画を明らかにした。これにより、将来的には化石燃料からの脱却を進め、環境負荷の低減を図るという。県営水力発電由来のCO2フリー電力に加え、太陽光発電も導入し、全体として再生可能エネルギーの活用を強化している。
「創業80周年という節目の年に、グローバルな売上拡大や多様化するニーズに応える次世代生産拠点として南アルプス工場を稼働できたことを大変感慨深く思います」
生産品目と自動化による効率化
稼働当初から同工場で生産する主な製品は既存ブランドの一部で、品質管理を重視しながら自動化やデジタル技術を取り入れて省人化を図る。現場では熟練技術を再現する仕組みを整備し、重労働の機械化やアシスト設備の導入で作業者の負担軽減にも努めると説明されている。
| 項目 | 内容(稼働時点) |
|---|---|
| 主な生産品 | 高付加価値スキンケアや化粧下地などの既存ブランド製品 |
| 勤務者数 | 約100人(うち約7〜8割が山梨県在住) |
| 将来の雇用規模 | 最大で300人規模まで拡大予定 |
地域経済と雇用への期待
現時点で工場に勤務する約100人のうち、地域在住者が多数を占めることから、地元雇用の受け皿としての効果が早期に表れる見込みだ。さらに、採用の応募は見込みを上回る状況であり、将来の増員計画が進めば地元の就業機会は一段と広がる。製造関連の外注先や物流、資材調達といった周辺産業にも波及効果が期待され、地域内での経済循環が促進される可能性がある。
- 工場稼働による直接雇用の拡大(現在約100人、将来は最大300人)
- グリーン水素や水力発電の活用による脱炭素モデルの実証
- 地場資源(雪解け水など)を使った付加価値型製造の推進
留意点と地域の役割
一方で、地元資源を活用するには安定的な水資源管理やエネルギー供給体制の整備が前提となる。気候変動や水需給の変動が今後の生産活動に影響を与え得るため、県と企業の協調による長期的な資源管理計画が重要だ。また、グリーン水素は現段階で製造コストや供給インフラの課題も残るため、コスト面での競争力確保やサプライチェーン全体の脱炭素化が今後の焦点となる。
企業側は自動化やデジタル化で生産効率を高める方針を示しているが、地元の雇用創出を持続的なものとするには、技能継承や人材育成の枠組みが不可欠だ。工場が採用を拡大する際には、県内の職業教育や就業支援との連携が求められる。
まとめ:地域に根ざす製造拠点の試金石
南アルプス工場は、山梨の水資源と再生可能エネルギーを結び付けた試みとして注目される。短期的には雇用創出や経済波及が見込まれる一方で、長期的な成功には資源管理、供給インフラ、地域との協働が鍵を握る。県と企業が連携し、地元資源を持続可能に活用する仕組みをつくれるかが、今後の地域産業振興の成否を分けるだろう。
(取材・文=清水 悠)