導入の背景と制度の基本
今年度(2026年度)、高知県内の公立小学校の一部で新たに始まった「チーム担任制」は、従来の「1学級1担任」から複数の教員が一つの学年やクラスを担当する仕組みだ。県教育委員会が示した導入の趣旨は、教員の負担軽減と若手教員のサポートにある。県内の教職員数は年度ごとに減少しており、2026年度は2,556人。このうち20代・30代は1,279人で全体のおよそ半数を占めることが課題となっている。
一宮小学校の実践――3人で1学年を支える
取材した高知市の一宮小学校は、全校児童が380人で、5月から6年生2クラス(計60人)に「チーム担任制」を導入した。実際の運用は、学級担任2人に加え、学年全体を支えるサポート教員1人の計3人体制で、学級運営は1週間ごとのローテーションで担任業務を分担する形だ。
この日の1組の担任は國光真未先生(45歳、キャリア20年以上)で、2組の担任は永野雄也先生(27歳、キャリア6年)。サポート役は松岡治宏先生(35歳)で、三里中学校からの異動で学年担当として始業前から両担任の業務を補助している。
現場で起きている変化と教員の評価
導入前から問題視されていたのは、授業だけでなく朝の会、給食指導、帰りの会、さらに宿題や連絡帳のチェックなど、学級担任が一日中クラスに張り付く過密な業務である。サポート教員は、こうした「切れ目のない業務」を緩和する役割を担い、教員が児童と向き合う時間の質と量を改善することが期待されている。
國光先生は、サポート教員がいることで「子どもたちにより関われる時間が増えた」と話し、業務の余裕がほかの教育活動につながる点を評価している。一方、松岡先生は朝の仕事を含めた役割分担の具体例を挙げ、「集まったのを役割分担して、こっち終わったら向こうが終わっていなければ」と説明した。中学校経験のある松岡先生は「中学校にはない、この朝から丸付けは、ないです」と述べ、小学校特有の業務の多さを示した。
「3人で見るということは、子供の多様な声を拾えるから、悪い方にはいかないだろうなという確信はあった」――一宮小学校・岡本政則校長
児童や保護者への影響と現場の工夫
児童の反応は概ね好意的だ。「3人おるき楽しい」「1人の時は言いにくいこともあったけど、ほかの先生に言ったりもできるし」といった声があり、教員の数が増えたことで相談しやすさや授業の受けやすさが向上している。教員側は、方針を統一し、子どもたちの現状を共有するために週に1回、放課後に集まって次週の時間割や児童の様子を報告し合う時間を確保している。
情報共有は単に時間割や教材の調整に留まらず、保護者対応や学級内での悩み相談の共有にも及ぶ。國光先生は夏休みの課題の題材をあらかじめ揃えるなど、家庭との接点も意識した準備時間を確保したいと述べている。
留意点と今後の課題
一方で、チーム担任制の導入がすべての学校で即座に機能するわけではない。県内10校での試行という導入規模、教員数の構成や異動の影響、学年担任間の連携の仕組みづくりなど、運用の細部を詰める必要がある。今回の取材校では週1回の情報共有や役割分担で運用しているが、学校ごとに事情が異なるため、県教育委員会や各校が継続的に評価と改善を行うことが重要だ。
- 効果:教員が複数いることで児童への関わりが増え、相談のしやすさが向上。
- 運用:3人体制による週ごとのローテーションと放課後の定期的な情報共有を実施。
- 課題:導入校は県内10校に限られ、教員数減少という構造的課題の中で如何に継続・拡大するかが問われる。
| 項目 | 取材で確認できた数字 |
|---|---|
| 一宮小学校 全校児童数 | 380人 |
| 6年生クラス数と児童数 | 2クラス、計60人 |
| 県内小学校の教職員数(2026年度) | 2,556人 |
| そのうち20代・30代の人数 | 1,279人 |
高知県内での試行は、教員の働き方改革の一環として注目される取り組みだ。現場では具体的な運用ルールや情報共有の仕組みづくりが重要になっており、保護者や地域にも変化の意味を丁寧に伝えていく必要がある。今後、導入校での実践を踏まえた評価と改善が行われ、より多くの学校で安定的に定着するかどうかが、高知の教育現場全体のカギとなるだろう。
(福田 和也)