市中心部の非居住住戸に課税を検討
神戸市は、JR三ノ宮駅周辺を含む市中心部で、区分所有のうち生活の本拠として使われていない住戸の所有者に対して課税する新たな法定外普通税(いわゆる空室課税)の制度化に向け、具体的な検討段階に入った。7月下旬に開かれた「居住と税制のあり方に関する検討会」が久元喜造市長へ答申を行ったもので、同市は答申を受けて制度設計や準備を進める方針だ。
検討会は代表的な会長に田中治・大阪府立大学名誉教授を据え、2025年にまとめられた報告書を出発点に、マンション管理や災害対策、非居住化の問題、中心市街地の街づくりなどを踏まえて議論を重ねた。答申では対象をタワーマンションに限定せず、対象物件は区分所有家屋全般とすると明記されている点が特徴だ。
検討の背景と現状データ
検討会が重視したのは「市中心部の住宅ストックが利用されていない」状況である。同市の調査によれば、都心機能誘導地区における区分所有家屋の非居住割合は18.95%と、中央区の同地区外の8.12%や他区のおおむね4~7%台を大きく上回っている。このため、非居住割合の高い区域を念頭に置いた課税が検討された。
「区分所有家屋の非居住割合は都心機能誘導地区で18.95%と、中央区の同地区外(8.12%)や他区(おおむね4~7%台)を大きく上回る。」
検討は京都市が実施している非居住住宅利活用促進税や固定資産税の負担状況などの先行事例・関連制度を参照しつつ、宅建業界やマンション管理業界、ディベロッパーらへのヒアリングも交えて進められた。市側担当によれば、まず議会で答申の内容を報告し、並行して制度化に向けた準備を進めるという。
課税対象・判定方法の方向性
答申が示した大きな方向性は次の通りだ。対象は戸建て住宅を除いた区分所有家屋全般。課税の客体は「非居住住宅」とし、住民票情報や現地調査などを組み合わせて該当性を判定する方法を採る方向で調整が進められている。
- 対象区域:都心機能誘導地区を念頭にした区域設定
- 対象物件:区分所有家屋(タワーマンションに限定しない)
- 判定手法:住民票や現地調査等を組み合わせて非居住性を認定
現時点では税率や課税免除、軽減措置、具体的な運用手続き、課税開始時期などの詳細は示されておらず、これらは今後の市の検討課題になる。市は答申を踏まえ、議会報告やさらなる制度設計を進める予定だ。
住民・所有者への影響と留意点
今回の検討は、都心部の「非居住化」が進むことによる空間の非効率利用や地域の活力低下を改善することが主目的とされるが、実際に制度が導入された場合には以下の点が住民・所有者にとって重要になる。
- 自らが所有する住戸が「非居住」と判定されるかどうかの確認方法と異議申し立て手続き
- 短期的に神戸で居住しない所有者(転勤者や二拠点居住者など)に対する扱い
- 課税の負担が賃貸市場や管理費負担、マンション管理組合の運営に及ぼす影響
また、判定に用いる住民票情報や現地調査の範囲・頻度、プライバシーや個人情報の取扱い、行政負担と徴収コストなどの運用面の課題も無視できない。これらの点については市が今後、具体的な制度設計で検討し、公表していくことが求められる。
今後の見通しと住民へのアドバイス
答申は制度化の「方向性」を示すものであり、即時に税が課されるわけではない。だが、対象区域や判定方法が固まれば、所有者の負担や対応が必要になる可能性は高い。神戸市はまず議会に報告する予定で、併せて詳細な設計や説明会の開催が想定される。
所有者・居住者は次の点に留意しておくとよい。
- 市からの公式発表や議会報告の内容を注視すること
- 自宅や所有物件の住民票の登録状況を把握すること
- 該当しそうな場合は、管理組合や専門家に早めに相談すること
神戸市中心部の住宅ストックをめぐる課題は、居住環境や地域のにぎわいに直結する問題だ。今後の制度設計の過程で、対象範囲や運用の詳細がどう定まるかを注視する必要がある。