環境

気候変動と両立する作物生産技術の実証へ 日・インドネシアで連携ワークショップ

国際農研とインドネシアの関係機関は2026年7月に連携ワークショップを開催。イネやダイズを対象に、温室効果ガス削減と環境負荷低減を念頭に置いた現地実証の体制づくりを本格化させた。

気候変動と両立する作物生産技術の実証へ 日・インドネシアで連携ワークショップ
©イラスト AI生成 :清水 葵/プレスリリースジェーピー

ワークショップで現地実証の枠組みを合意

国際農業研究センター(JIRCAS)とインドネシアの研究革新庁(BRIN)傘下の農業・食品研究組織(ORPP)は、2026年7月20日から22日にかけて、ボゴール県チビノンの施設で「環境調和型作物生産技術の連携展開」に関するワークショップを開催した。会合には関係機関や民間、利用者団体ら計43名(会場40名、オンライン3名)が参加し、今後の実証研究の方向性と連携体制について議論を深めた。

本プロジェクトは、気候変動への適応・緩和環境負荷の低減を両立する作物生産技術を開発・普及させることを目的とする。対象地域はアジアのモンスーン圏を念頭に置き、主にイネとダイズについて育種素材と栽培管理の組合せを検証し、肥料・農薬使用量や温室効果ガス(GHG)排出量の評価を通じて「中核パッケージ」の構築を目指す。

初日はプロジェクト概要と研究計画の共有、政策動向の紹介が行われ、2日目は課題別討議で試験計画や役割分担を具体化。最終日には実証候補地となる水田で試験実施方法の確認が行われ、参加者間で実施手順や評価指標に関する共通理解が形成された。

技術要素と社会実装の観点

研究では育種と栽培管理という二つの柱を組み合わせることで、圃場でのGHG削減や化学物質使用量の低減といった環境面の改善を目指す。また、無人機(UAV)を活用した地域展開モデルの構築や、導入に向けた実装戦略の検討も重要な要素として位置付けられている。これにより、技術の現場適用性と普及可能性を同時に検証することが意図されている。

  • 対象作物:イネ、ダイズ
  • 主な評価項目:温室効果ガス排出量、肥料・農薬使用量
  • 技術要素:育種素材、栽培管理技術、UAVを用いた展開モデル

ワークショップの議論は、単なる技術検討に留まらず、政策や利害関係者を交えた実装の仕組みづくりへと踏み込んだ点が特徴的だ。参加者にはJIRCASとBRINに加え、インドネシア農業省や食料担当調整省、民間企業、利用者団体などが含まれ、研究と現場、政策側の視点が並列に扱われた。

現地実証の意義と波及効果

現地実証を通じて得られる知見は、対象地域における実効性の検証に直結する。気候変動影響が顕在化するアジアのモンスーン地域では、降水パターンや温度変化が営農に与える影響が大きく、生産技術のロバスト性(頑健性)が重要となる。現場での実証により、栽培管理の調整幅や育種素材の適応性、そしてGHG削減効果の定量化が可能になるため、地域の農業政策や支援施策への反映が期待される。

また、UAVを活用した展開モデルは、モニタリングの効率化だけでなく、スケールアップ時のコスト構造や運用上の課題を明らかにする役割を担う。これにより、技術普及に必要な研修体系や支援インフラの設計が現実的になる。

項目内容
開催日2026年7月20日〜22日
開催地インドネシア ボゴール県チビノン
参加者数43名(会場40名、オンライン3名)

このプロジェクトが目指すのは、単一の技術や施策を押し付けることではなく、現地条件に合わせた「中核パッケージ」を地域ごとに最適化していくことだ。評価指標や実証手順が明確化されれば、効果のある手法を他地域に横展開しやすくなる。

今後の展開と課題

ワークショップは実証研究の体制構築と初期方針の共有に成功したが、現地実証を持続的に進め、かつ成果を普及に結び付けるためには幾つかの課題が残る。たとえば、長期的なモニタリング資金の確保、地域農業者への受容性の検証、技術導入後の経済的効果の評価、そしてデータ共有や知的財産の取り扱いなど、制度面・運用面の整備が求められる。

関係者はワークショップを起点に、現地での実証を通じた知見蓄積と、得られた成果を踏まえた普及戦略の策定を進める方針だ。気候変動下での持続可能な作物生産に向け、国際連携に基づく実証研究が今後どのように社会実装へ結び付くかが注目される。

清水 葵
清水 AI編集 環境担当記者 オンライン

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