県主導で初開催、体験型イベントに県内外の企業が集結
青森県は、担い手不足が深刻な建設業の現場にデジタル技術を導入・定着させるため、建設ICT・DXの体験イベント「建デジEXPO」を県内で初めて開催しました。会場には20社の県内外企業が出展し、実機を用いたデモや体験ブースを公開。実務に直結する機器やシステムの操作を来場者が直接確認できる場となりました。
現場の工数削減に直結する技術を紹介
会場で注目を集めたのは、身に付けて歩くだけで周囲をレーザーで計測し、三次元データを生成する携帯型の測量機器です。この機器は得られたデータをパソコンに送信して3D表示が可能で、従来の手作業や時間のかかる計測を短縮し、設計や施工の効率化に寄与すると説明されました。
また、重機を遠隔操作するシステムや、物資運搬に用いるドローンの実演も行われました。ドローンは現状で約30kg程度の荷物を運搬できる製品が披露され、林業や災害時の物資輸送など、用途の拡大が期待されていると関係者は述べています。
知事も体験、現場適用への期待を表明
イベントでは青森県の宮下宗一郎知事が実際に重機の遠隔操作を体験し、技術の可能性を確認しました。知事は現場での可用性に言及し、夜間やすきま時間の活用を含めた新たな働き方の広がりに期待を示しました。
「夜間やすきま時間にできるなど、労働者の幅がすごく広がると思いました。たくさんこういうものができれば、汎用性が上がれば実際に使われる場面も増えてくると思うので、現場で使えるようにしていきたいと思います」
背景—県内建設業の人手不足の深刻さ
青森労働局のデータを示す形で、建設業の人手不足は顕著であることが示されました。昨年度の求人数に対する求職者数の割合を示す指標では、建設業の充足率が7.2%と、全産業平均の16.9%を大きく下回り、全産業の中で最も低い水準にあります。この数値は、現場の労働力確保が難しくなっている実態を端的に示しています。
導入期待と現場への影響
今回紹介された技術は、いずれも作業の省力化や現場の安全性向上、熟練技能のデジタル化に資するものです。具体的な効果としては、次のような点が挙げられます。
- 測量作業の短縮による工期の短縮と人件費の低減
- 重機の遠隔操作により危険作業の削減と柔軟な勤務形態の実現
- ドローンによる資材輸送で、アクセス困難な現場での効率化
これらは単に作業効率を高めるだけでなく、若年層や経験が浅い人材でも扱える業務を増やすことで、業界全体の担い手確保に寄与する可能性があります。ただし、導入には初期投資や運用ノウハウの習得、安全基準の確立といったハードルもあります。特に中小零細の建設業者にとってはコスト面と技術習得の支援が重要になるため、県や自治体の補助制度や研修支援がカギを握ります。
行政の役割と今後の課題
県が主催して体験型の場を設けた意義は、技術への理解を現場レベルで深めることにあります。公的機関が先導して事例や導入プロセスを示すことは、事業者の導入判断を後押しする効果が期待できます。今後は以下の点が課題となります。
- 導入費用に対する補助や融資制度の整備
- 現場での安全運用や教育研修の体系化
- 遠隔操作や自動化に伴う法規・基準の明確化と地域特性に応じた運用ルール作り
| 技術 | 期待される効果 |
|---|---|
| 携帯型3D測量機器 | 計測時間の短縮、設計・施工の精度向上 |
| 重機の遠隔操作システム | 危険作業の減少、柔軟な勤務形態の実現 |
| 荷物運搬ドローン | 輸送効率化、アクセス困難地での運用 |
県内事業者には、これら技術の実証や導入に向けた試験的な現場適用を進めることが求められます。また、労働環境の改善と生産性向上を両立させるため、業界団体や教育機関との連携で人材育成の仕組みを強化する必要があります。
今回のイベントは体験を通じて技術の現実味を確認する場となり、県は今後も導入支援や普及活動を継続するとしており、地域の建設業が抱える人手不足と生産性の課題に対する具体的な取り組みの第一歩となる可能性があります。