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上御殿遺跡で弥生期の鍛冶工房跡、湖西に鉄器生産の拠点

滋賀県高島市の上御殿遺跡で、弥生時代後期末から古墳時代前期にかけての鍛冶炉を備えた竪穴建物跡が見つかった。湖西で早期の金属器生産拠点が存在したことを示す発見で、地域の交流や技術伝播を考える重要資料となる。

上御殿遺跡で弥生期の鍛冶工房跡、湖西に鉄器生産の拠点
©イラスト AI生成 :阿部 竜也/プレスリリースジェーピー

弥生から古墳期にかけての鍛冶工房跡を確認

滋賀県高島市安曇川町田中の上御殿(かみごてん)遺跡で、弥生時代後期末〜古墳時代前期(おおむね2世紀後半〜3世紀前半)に相当する鍛冶炉を有する竪穴建物跡が発見されたと、県文化財保護協会が16日に発表した。調査は県営農地防災事業に伴う発掘で、遺跡からは竪穴建物跡約20棟が確認され、そのうち炉を備えた建物は大型2棟から複数の炉が検出された。県内では湖東の稲部遺跡(彦根市)と並ぶ最古級の鍛冶関連施設とみられる。

出土状況は、直径約7.2メートルの建物跡から4基、直径約6.0メートルの建物跡から2基の炉が確認された。全ての炉は床面から数センチ高く粘土等でかさ上げされ、湿気対策が施されていたと考えられる。炉周辺には被熱した土の広がりが同心円状に残り、フイゴなどで火力を強める構造が用いられていた可能性が示唆されている。

「上御殿遺跡が湖西における金属器生産を担う拠点であったことが考えられる」と松井(※発表資料より)

広域交流を示す出土資料と地理的意味

資料構成は多彩で、丹後や北陸、湖南地域の「外来系土器」や、湖南の土器、湖東の石材で作られた砥石、丹後・若狭地域の土器などが出土している。これらは上御殿が単なる集落の鍛冶場ではなく、琵琶湖と日本海を結ぶ人的・物的交流の中で機能した拠点であったことを裏付ける。発掘は弥生後期から古墳前期にかけての人びとの交流活発化期に対応しており、女王・卑弥呼の時代とされる2世紀末〜3世紀中頃の社会動向を考える上で重要な手がかりとなる。

過去出土例との関連と研究上の意義

この遺跡では、平成25年に中国・華北や内モンゴルに分布するオルドス式短剣に酷似した双環柄頭短剣の鋳型(紀元前4世紀〜紀元3世紀の可能性)が出土している。当該鋳型は国内出土の類例がなく、日本海ルートを通じた大陸との交易の可能性が指摘されてきた。今回の鍛冶炉跡の検出により、金属器の鋳造・加工の実態や、外来素材・技術の受容経路の解明に向けた研究が一層進む見込みだ。

地域社会と保存・公開の課題

確認された2棟の鍛冶関連建物は他の住居群と異なり集落の縁辺部に立地していたことが報告されている。これは作業場としての用途や、火災・騒音・作業臭への配慮といった生活環境上の要請を反映した配置と考えられる。今後は遺跡保存の方針、発掘資料の整理・分析、出土遺物の適切な保管と公開の在り方が課題となる。住民や自治体、研究機関が連携して遺跡の価値を地域振興や教育に生かす取り組みが求められる。

発表資料では、現地説明会が19日午後1時に開催される旨が案内され、会場へのアクセスはJR湖西線安曇川駅から徒歩約20分、駐車場はないとの注意喚起がされている。問い合わせ先は県文化財保護協会(077-548-9780)。見学を計画する際は公共交通機関の利用や自治体の案内に従うことが推奨される。

住民への影響と利活用の展望

この発見は地域住民にとっても身近な歴史理解を深める契機となる。遺跡の学術的価値に加え、史跡を活かした観光資源化や教育プログラムの展開、地元産品と結びつけた地域活性化の可能性が考えられる。一方で遺跡保護の観点から無秩序な立ち入りを防ぎ、発掘調査と保存のバランスをとる必要がある。

  • 発掘の期間・主体:県営農地防災事業に伴う発掘調査(令和6年10月実施開始、継続調査の結果発表)
  • 確認された施設:竪穴建物跡約20棟、うち炉を持つ大型建物2棟から複数の炉
  • 出土資料の意義:外来系土器や砥石、鋳型の過去出土などから広域交流と金属器生産の拠点性が示唆される
項目概要
時代弥生後期末〜古墳前期(2世紀後半〜3世紀前半)
場所滋賀県高島市安曇川町田中(上御殿遺跡)
確認構造竪穴建物跡約20棟、炉を持つ建物2棟(炉合計6基確認)

学術的には、鍛冶炉の構造や被熱痕の分布、出土遺物の組み合わせから製造工程や製品の用途、地域間の技術伝播を詳しく読み解くことが可能となる。琵琶湖という大きな水域を軸にした人とモノの交流路としての機能や、日本海経由での大陸接触という広域的ネットワークの存在は、地域史だけでなく日本列島の古代史研究にとっても示唆に富む。

今後は、出土遺物の詳細分析(材質・鋳造痕・使用痕等)とともに、類似遺跡との比較研究が求められる。発掘成果を住民向けに分かりやすく伝える取り組みや、保存に配慮した形での公開方法の検討が地元自治体と研究者の間で進められることが期待される。

(文・阿部 竜也)

阿部 竜也
阿部 AI編集 滋賀県担当記者 オンライン

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