比叡山の森と母なる湖を体感する二日間
大津市の事業者が主催する「世界遺産・比叡山の森と母なる湖・びわ湖を未来へ。」と題したモニターツアーが実施され、延暦寺での座禅体験や比叡山麓のトレッキング、里山でのサイクリング、間伐材を使ったカトラリー作り、びわ湖でのカヌー観察といった複数の体験プログラムが行われました。ツアーは二日間の日程で、自然と歴史文化を結び付ける内容が特徴です。
主催側は本事業を、2027年秋に予定されるJRグループと滋賀県によるディスティネーション・キャンペーン(DC)に向けた試行と位置づけています。DCを契機に新たな観光コンテンツを整備し、観光客の分散を促すことを目的に、県の補助を受けて実施されました。
体験プログラムの内容と意義
- 1日目:延暦寺での僧侶による法話と座禅体験、修験道を辿るトレッキング
- 2日目:千野・仰木エリアでの電動アシスト自転車によるサイクリング、間伐材を使ったカトラリー作り、びわ湖でのカヌー体験
延暦寺での座禅では、呼吸に意識を向ける方法が僧侶から伝えられ、参加者は「情報が錯綜する現代において『無』になれる時間は新鮮であった」との感想を示しました。参加者の一人は、
「サウナが趣味だが、座禅も心を整えるという点では似ている部分があると感じた」
と述べ、心身のリフレッシュという観点での価値を報告しています。トレッキングでは延暦寺の回峰行で使われる修験道を実際に歩き、比叡山と琵琶湖を一望できる景観を確認するとともに、山道での手作業による修繕の現状にも触れました。
環境保全と地域資源の結びつき
びわ湖は「近畿の水瓶」として周辺生活を支え、周囲の山々から450本もの河川が流入すると説明されました。比叡山の森林は水の浄化に寄与し、間伐は森の健全性を保つ重要な作業です。今回のプログラムでは、間伐材を使ったカトラリー作りを通じて間伐の意義を体感する機会が設けられ、参加者の環境意識の醸成が図られました。
| 項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 会場 | 比叡山(延暦寺)・比叡山麓(千野、仰木)・びわ湖 |
| 体験例 | 座禅、トレッキング、電動アシスト自転車、カトラリー作り、カヌー |
| 目的 | 観光コンテンツの創出と観光客分散、環境保全意識の醸成 |
県内観光への影響と今後の展開
主催者は、このモニターツアーの検証結果を踏まえ、改善を加えたうえで次年度に向けてDC観光コンテンツとして一般販売を目指すとしています。2027年はワールドマスターズゲームズ関西の開催も見込まれ、インバウンドを含む需要の追い風が期待されます。
本取り組みは、都市部に観光が集中する現状への対応策の一つでもあります。コロナ禍以降、大阪や京都に観光客が偏る傾向が続く中、比叡山・琵琶湖のような県内資源を組み合わせることで観光の分散化を図る狙いがあります。観光客が地域に滞在して体験を重ねることで、宿泊や飲食、ガイドなど地元事業者への経済波及効果が期待できます。
一方で、自然環境を活用する観光の拡大は慎重な運営が求められます。トレッキングルートや水域でのアクティビティが増えれば、道の損耗や生態系への影響、地元住民の生活環境への配慮が不可欠です。ツアー内容の緻密な管理やガイドの育成、地域との協働体制づくりが今後の課題となります。
今回のモニターツアーは、地域資源の価値を体験で伝える試みとして一定の成果を上げると同時に、商業化に向けたブラッシュアップの余地も示しました。2027年のDC本番では、参加者の安全管理や環境保全を前提に、滋賀の自然と文化を伝える商品化がどこまで進むかが注目されます。
(取材・執筆:阿部 竜也/プレスリリースジェーピー・滋賀県担当)