学力テスト上位でも大学進学率は相対的に低め
今年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で、石川県は公立校平均正答率において小学校6年の国語、中学校3年の国語と数学の3教科で都道府県別トップとなり、いわゆる「3冠」を達成した。数学は首位タイを含めて6年連続の上位維持という結果になった。
一方で、昨年3月時点の府県別の大学進学率は63.9%で、全国平均を上回り過去最高を更新したものの、都道府県別では11位にとどまっている。小中学校段階での高い学力がそのまま大学進学につながっているとは言い切れない現状が浮かび上がった。
現場で進められてきた取り組み
石川県教育委員会は2009年度から金沢大学と連携し、全国学力テストの結果分析を進め、2011年度に金大教員を中心とした学力向上プログラム推進チームを結成した。具体的には授業改善に向けた指導案の作成、問題集の整備、学校や市町教委への教員派遣といった実践的な支援を行ってきた。
また県内公立小中校で行う県独自のテスト形式の調査も学力の定着を図る上で機能しているとしており、来年度からは対象学年の設定を見直し、全国学力テストと連動して一人ひとりの学力の推移を継続的に把握する計画だ。
数字が示す地域の状況と課題
学力テストの結果および教育委員会の取り組みは、学校現場で一定の効果を示している。教員向けアンケートでは、前年度のテスト結果を教育活動の改善に「よく行った」と答えた割合が小学校で70.7%、中学校で58.3%と、いずれも全国平均を大きく上回った。県教委はこれを授業改善の浸透と結びつけて評価している。
それでも大学進学率が上位に入らない背景には複数の要因がある。まず都府県上位に並ぶ地域は進学校の私立校比率が高く、全国学力テストの対象外となる私立の進学校が大学進学の統計に影響する点が挙げられる。さらに、進学は学力だけで決まるものではなく、本人の意志、家庭の経済状況、通学環境など多様な要素が絡む。
石川県教委の担当者は、学力向上と大学進学率が必ずしも相関しないとの見解を示し、
「大学にこだわらず、生徒個人個人が希望する進路を歩むことができるよう導いていきたい」と述べている。
地域への具体的な影響
小中段階での学力向上は、高校での学習定着や基礎学力の確保につながるため、地域の人材育成や将来の労働力の基礎を支える意味合いが強い。石川県では実際に高校進学率が高く、昨年3月の高校進学率は99.3%で全国3位に入っている。多くの生徒が高校には進学しているものの、大学への進学を選ぶ割合は国全体の上位層ほど高くはない。
これは地域の産業構造や就業機会と無縁ではない。地元で就職する道や専門学校、職業訓練を選ぶ生徒も一定数存在し、地域の企業や就業市場が高校卒業者にも手を差し伸べている面がある。進学か就職かの選択は、個々の家庭や地域経済の事情、生活圏の広がりなどとも関連している。
今後の方針と保護者・学校への示唆
県教委は来年度から県独自の調査対象学年を変更し、全国学力テストと連動して学力の経年的な把握を強化する予定だ。これにより、早期の段階でのつまずきの発見や指導改善の効果測定がより精密に行えると期待される。
保護者や学校にとって重要なのは、学力の向上を単なるテストの得点上昇にとどめず、生徒一人ひとりの進路形成につなげるための情報提供と相談体制を充実させることだ。具体的には以下の点が実務的な示唆となる。
- 学校は学力データを学年を越えた進路指導に活用し、個別の進路相談を早期に行う。
- 教育委員会は家庭や地域と連携した進路説明と職業教育の機会を拡充する。
- 保護者は子どもの希望や適性を踏まえた進路選択の情報収集を早めに行う。
データ一覧(要点)
| 指標 | 数値 | 全国順位 |
|---|---|---|
| 小6国語・中3国語・中3数学(公立平均正答率) | 各教科1位 | — |
| 高校進学率(昨年3月) | 99.3% | 3位 |
| 大学進学率(昨年3月) | 63.9% | 11位 |
今回の結果は、学力底上げの取り組みが一定の成果を上げていることを示す一方で、進学率や進路選択という別の次元の課題を見せている。行政と学校、家庭が連携して、学力データを進路支援に直結させる仕組みづくりが今後の焦点となる。