ホーチミンで議論、物流の「グリーン化」に不可欠な共通データ
10月27日、ホーチミン市で開催されたフォーラムのテーマ別討論会は、製造、輸送、倉庫、港湾業務を貫くデータ連携と測定法の統一が、環境負荷を下げつつサプライチェーン競争力を保つ鍵であることを改めて示した。
討論では、単独でのインフラ投資や機器導入だけでは限界があり、関係者間で共有する情報の標準化や、段階的な実証プロジェクトを通じた効果測定が重要だという点が繰り返し強調された。
議論の要点と提案された実務モデル
- サプライチェーン全体で共通に使えるデータ指標・測定方法の整備
- 個別企業や地域単位ではなく、港湾や輸送チェーンごとのコミュニティシステムによる段階的導入
- 中小企業が参加できる混載・手続き支援などの仕組み作り
フォーラムでの発言の一つに、ベトナムの都市リーダーは、グローバルな価値連鎖が「より環境に配慮され、透明性とスマート化が進んでいる」と指摘し、工場や港湾、消費市場に至るまでの技術やデータ、人材の連携を求めた。
「環境への配慮と透明性は、企業が市場に参加し、資金を調達するための必須条件になりつつあります。」
また、EYシンガポールのサプライチェーン専門家は、ベトナムが過去数十年で製造拠点として台頭した反面、物流やデータの透明性が不足すると市場アクセスが難しくなる可能性を指摘し、競争力は生産だけでなく物流や流通を含めたエコシステム全体で考えるべきだと述べた。
現場で想定される課題と技術選択
討論では、港湾操作の具体例が示され、関係者全員が貨物の積載状況や空コンテナの位置、輸送スケジュールを共有できなければ、本来の効率化や脱炭素化効果は得られないとの危惧が示された。ある提案では、まずはメコンデルタ地域からカイメップ・ティヴァイ港群への冷蔵コンテナ輸送など、特定の輸送チェーンで実証を進めるべきだとされた。
フォーラムで示された「有効なツール」の例としては以下が挙げられる。
| 用途 | 示されたツール例 |
|---|---|
| 港湾・はしけ輸送 | 電気を動力とするはしけ(EVバーグ) |
| 陸上輸送 | 電気自動車 |
| 倉庫運用 | 屋根に設置した太陽光発電 |
ただし、これらの機器や設備は単体で導入しても、関係者間の情報共有や統一されたプラットフォームがなければ最大の効果を引き出せない。フォーラム参加者は、すぐに全国規模の巨大プラットフォームを構築するのではなく、まずは狭い範囲での共同システムを構築して効果を計測し、その結果に基づいて拡張すべきだという実務的な指摘を行った。
中小企業の参入支援と標準化の必要性
農産物などを取り扱う中小の輸出業者は、コンテナを満載できないケースが多く、混載や手続きの円滑化にアクセスできなければ輸出機会を確保しにくい。討論では、大企業やプラットフォーム側に中小企業の参加を支える責任があるとの認識が示された。
一方、複数の港湾・運輸・倉庫事業者が独自にデジタル化を進めた結果、プラットフォームが相互運用できないという現実も報告された。このため、電子取引や電子文書の標準化、関係者間で共有すべきデータの明確化が必要だという提案が出された。
示唆と日本企業への含意
本フォーラムの議論は、グリーン化とデジタル化が不可分であることを示している。国際サプライチェーンに関与する企業にとって、温室効果ガス排出量の証明や透明性が市場参加と資金調達の条件になりつつあるという指摘は、日本企業にも直接的な示唆を与える。
実務的には、以下の点が重要になる。
- 標準化されたデータ項目と測定法の採用・連携
- 段階的に効果を検証するパイロットプロジェクトの設定
- 中小企業が参加できる混載や手続き支援の枠組みづくり
議論に出た提案を着実に実証し、成果をもとに拡張していくことが、物流の脱炭素化と同時に競争力を保つための現実的な道筋だといえる。
(清水 葵)