県が10月配布予定の“パスポート型”観光冊子、知事発言が物議
茨城県は6日、観光誘客と県民の郷土愛喚起を目的としたパスポート型パンフレット「IBARAKI PASSPORT」を制作し、10月上旬から無料で交付すると発表した。県内44の市町村を巡るスタンプラリー機能を盛り込み、全てのスタンプを集めた参加者には県がコンプリートの押印を行うという。
今回の発表で注目を集めたのは、大井川和彦知事の記者会見での発言だ。類似の仕組みを既に導入している群馬県の「ぐんまパスポート」を踏まえ、同知事は「パクりと言われるかもしれないが、それを意図的にやっている」と述べ、注目度を高める狙いを明確にした。群馬県側は了承のコメントを出しており、知事会レベルでの軋轢(あつれき)にはなっていないという。
「パクるからこそ大反響を呼ぶ。県民の郷土愛を高める一つの方法としても有効な取り組みだ」
報道発表に含まれる仕様では、冊子は縦12.8センチ、横9.1センチで、表紙には県公認のVチューバー「茨ひより」をデザイン。スタンプは道の駅など観光施設に設置し、閲覧・取得は無料だが通信料は利用者負担とされる。県はこれを年間施策の一環と位置付け、県内の周遊促進と近隣県からの誘客を目指している。
観光目標と狙い――数値目標が示す現実性
県が提示した中長期の数値目標では、2029年の観光消費額を6600億円、観光入込客数を9200万人に引き上げる計画が掲げられている(2025年は観光消費額が4482億円・入込客6258万人という数値)。今回のパスポートは、県内周遊を促し地域間の交流を増やすことでこれらの数値達成に寄与する狙いがあると説明されている。
| 指標 | 目標(2029) | 基準(2025) |
|---|---|---|
| 観光消費額 | 6600億円 | 4482億円 |
| 観光入込客数 | 9200万人 | 6258万人 |
住民・事業者に及ぶ影響と懸念点
パスポート施策は、道の駅や観光施設に来訪を促す設計であるため、地域の中小観光産業や飲食・小売事業者には短期的な来訪増加という利点が見込まれる。一方で、次のような課題・懸念も指摘されうる。
- 「模倣」への批判が広がれば、自治体のブランドイメージに影響する可能性がある。
- スタンプ設置や管理にかかる運営負担、紛失や不正取得への対策など、運用上の実務負荷が現場にかかる。
- 一時的な来訪増があっても、リピーター化や地域消費の拡大につなげる仕組みが不可欠である点。
自治体間でアイデアを共有すること自体は悪ではない。しかし県民感情や自治体の創意工夫をどう位置づけるかが鍵となる。群馬県側は本件に関し、山本知事が「ぜひ頑張ってください」とコメントしているが、模倣を巡る公共的な評価は今後の展開次第だ。
運用面での留意点と今後のスケジュール
県観光誘客課はパスポートの詳細や交付方法について、9月に公表するとしている。現時点で明らかになっている主なポイントは次の通りだ。
- 交付開始:2026年10月上旬(無料)
- 対象:県内44市町村を巡るスタンプラリー機能
- スタンプ設置場所:道の駅等の観光施設を予定
現場の観光施設にとっては、スタンプの設置場所や管理手順、押印業務のための人員配置や情報提供体制の整備が課題となる。県は交付方法や参加ルールを9月に示すとしており、現場での負担軽減策やデジタル連携の有無が注目される。
知事の発言が意味するもの
大井川知事の「意図的にパクった」という発言は、短期的な注目や話題化を狙ったものであることを明示している。PR効果を狙う手法としては有効だが、公的施策におけるオリジナリティや倫理の問題、他県や関係者との信頼関係をどう保つかは問われ続けるだろう。
県は今後、交付方法や参加条件、各市町村との協働体制を詳細に公表する予定だ。観光施策の成果は、数値目標だけでなく、地域の実需につながるかどうかで判断される。住民や事業者にとって実効性のある施策となるか、秋以降の運用内容が焦点となる。
(取材・文:中村 智子、プレスリリースジェーピー茨城県担当)