県、起債許可団体に転落 即時の事業停止は否定
兵庫県は2025年度決算の分析を受け、県全体の実質公債費比率の3年間平均が19.2%となり、国の許可が必要な「起債許可団体」へ転落したと公表した。斎藤元彦知事は定例会見で、直ちに事業が止まるわけではないと強調したが、債務管理と歳出入の見直しを進める意向を示した。
「ただちに事業がストップすることはないので、県民の皆さまにはご理解いただきたい」
県財務部が総務常任委員会に報告した内容によれば、決算上は実質収支額が63億円の黒字である一方、借金返済負担を示す指標が国の基準(18%)を上回った。県は2008年度以来2度目の起債許可団体への転落となる。
背景に残る復興債と金利上昇
報告書は、比率が基準を越えた主因として、阪神・淡路大震災の復旧・復興に伴う過去の借入金が残存していることと、近年の金利急上昇を挙げている。これらが利払い負担を重くし、収入に対する債務返済割合を押し上げた形だ。県は公債費負担の適正化計画(案)を作成し、債務全般の見直しと投資抑制、積立不足の削減などで比率が更に上昇しないよう対策を打つ方針を示した。
ただし、計画案は現在の状態が続けば、2031年度に県が都道府県として初めて「早期健全化団体」に転落する可能性があると指摘している。基準値の目安は、25%で早期健全化団体、35%で財政再生団体(破綻状態)となる。
住民サービスと事業への影響
斎藤知事は会見で、若者支援や教育への投資は継続すべき最重要事項だと述べ、財政健全化と社会投資の両立を掲げた。だが現実には、起債に国の許可が必要となることで、新規の地方債発行が制約される可能性が高く、公共事業の規模縮小や時期修正、事業の優先順位付けを迫られる場面が増える。
- 公共インフラ整備や新規投資の遅延・縮小の可能性
- 社会保障や教育、子育て支援など優先度の高い政策運営の継続課題
- 将来負担の先送りを避けるための歳出整理と歳入確保の必要性
具体的には、上下水道や道路、産業振興のための大型投資案件について、県が単独で地方債を発行して進める際に国の事前許可が必要になり、手続きが増えることで事業実施の迅速性が損なわれる恐れがある。自治体と事業実施主体との契約や補助金対応も見直しが必要となる場面が出てくるだろう。
今後の行政対応と住民が知っておくべき点
県は直ちに事業を停止する方針は示していないが、今後の対応によっては住民サービスの提供方法に変更が生じる可能性がある。県が表明している主な対応は次の通りだ。
| 項目 | 数値・状況 |
|---|---|
| 実質収支額(2025年度) | 63億円の黒字 |
| 実質公債費比率(3年平均) | 19.2% |
| 国の基準値 | 18% |
住民として押さえておくべき点は、(1)現在の段階で税や公共料金の直ちの引き上げが表明されているわけではないこと、(2)県が策定する公債費負担適正化計画の中身次第で、生活に近いサービスの提供方法や時期が変わる可能性があること、(3)県と議会の協議が次の焦点となることだ。県は今後、議会との意見交換を経て具体的な債務見直しの方針を固めるとしている。
課題は長期化の可能性も
過去の震災復興費用が尾を引く構図は、兵庫県特有の事情であり、短期で解消するものではない。さらに金利環境が不安定な現状が続けば、利払い負担はなお圧迫される。県がこれから示す対策は、単年度の補正にとどまらず中長期の財政運営設計をともなう必要がある。
県民にとって重要なのは、透明性の高い情報公開と、どの事業を優先し、どの負担を将来世代に残さないかという明確な判断基準だ。斎藤知事は若者支援や教育投資の継続を重視する姿勢を示しているが、具体的な歳出抑制案や歳入増策の内容、実効性が問われる局面はこれから深まる。
兵庫県の財政運営は今後、県民生活や地域経済に直結する重要な政策判断を迫られる。地元自治体や企業、住民にとっても影響は無視できないため、県の公表資料や議会審議を注視する必要がある。
(記者・藤田 早紀)