県債務負担の指標が基準超過、市町村から懸念相次ぐ
兵庫県は、県の収入に対する借金の返済割合を示す「実質公債費比率」の3年間平均が19.2%と、国の基準である18%を上回ったため、新たに地方債を発行する際に国の許可が必要となる「起債許可団体」となったことを明らかにした。県財務部が報告したこの数値は、2008年度以来2度目の該当となる。
県の2025年度決算で、実質収支額は63億円の黒字とされた一方で、実質公債費比率が基準を超過したことが問題視された。県は自ら作成した「公債費負担適正化計画(案)」で、財政状況の改善が見られない場合、2031年度に都道府県として初めて「早期健全化団体」(基準25%)に転落する可能性があると示している。
「県のさまざまな課題をオープンにした上で、事業が直ちにストップすることはない。県民の皆様には不安を過度に与えることがないようにしたい」
この発言は21日に行われた市町村代表者との意見交換会での、斎藤知事の言葉だ。同日の会合では、県が掲げる今後10年間で公共事業の投資額を少なくとも10%削減する方針に対し、市町村側から「影響が大きい」との懸念が相次いだ。
何が比率を押し上げたか
県は、実質公債費比率が基準値を超えた要因として主に二点を挙げている。ひとつは、阪神・淡路大震災の復旧・復興向けに発行した地方債の残高が現在も続いていること。もうひとつは、近年の金利の急激な上昇だ。これらが利払い負担や元本返済の重さとして現行の収入に対して割合を高めたという。
市町村とのやり取りと懸念点
県庁で行われた意見交換会には市町村の代表者が出席し、県の財務部が計画案の説明を行った後、知事と直接意見を交わした。市町村側からは特に次の点が問題視された。
- 公共工事の削減に伴う地域のインフラ整備の遅れや維持管理費の先送り
- 公共事業に関連する雇用・地場産業への影響
- 災害対応力の維持、老朽化対策の後退
県は会合で、計画はあくまで財政健全化に向けた方針であり、すべての事業が即刻停止するわけではないと説明している。しかし、公共投資の制約は小さくないため、市町村側は具体的な影響の洗い出しや代替措置の提示を求めた。
数値で見る現状
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 実質収支額(2025年度) | 63億円(黒字) |
| 実質公債費比率(3年平均) | 19.2% |
| 国の基準値(起債許可団体の基準) | 18% |
| 早期健全化団体の基準 | 25% |
| 財政再生団体の基準 | 35% |
住民生活・地域経済への影響
公共事業の削減方針は、道路や河川、学校施設などハード面の整備に直接響く。短期的には建設関連の発注減が地域の雇用や中小企業の受注に影響を与える恐れがある。長期的には老朽化対策や防災・減災事業の遅延が住民の安全・安心に結びつくリスクもある。
一方で、県は住民への影響を最小限にするため、事業の優先順位付けや効率化、補助金の見直しなどで調整を図る考えを示している。だが、実際にどの事業が削減対象となるか、削減割合の具体的な適用方法は今後の詰めが必要だ。
今後の手続きと注視点
県は「公債費負担適正化計画(案)」を総務省に提出したうえで、実施計画へと移す方針だ。起債許可団体の状態は、新たな地方債を発行する際に国の許可が必要となることを意味し、大規模投資を計画どおり進めにくくする。市町村や県民への説明会、個別事業の見直し、財源の確保策が今後の焦点となる。
住民が直面する実務的な影響としては、以下の点が挙げられる。
- 新規公共事業の着手時期や規模の変更
- 地域の維持管理計画の見直しによるサービス水準の変化
- 災害復旧や防災投資の優先順位の変更
これらは市町村ごとに状況が異なるため、県は市町村との継続的な情報共有と具体的な影響試算を急ぐ必要がある。
記者の視点と展望
今回の判定は、県の収支が単年度で黒字でも債務返済負担が重くなれば許可団体に該当しうることを示した。阪神・淡路大震災向けの長期債務や金利上昇という構造的要因は短期間で解消されないため、県は中長期的な財政運営の転換を迫られている。
市町村と県の間で求められるのは、削減対象となる事業の透明性、住民への説明責任、そして優先順位付けだ。とりわけ、災害対応や社会インフラの維持に関わる分野は慎重に扱う必要がある。県は今後、総務省との調整、市町村との協議を踏まえた実施計画の策定を進めることになるが、住民生活への具体的な影響は当該計画の中身次第で大きく左右される。
今後の進展については、県が提示する各年度の事業一覧や市町村別の影響試算、国との協議結果を注視して欲しい。