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系統蓄電所の再エネ価値を可視化 日立とエネウィルが事業化へ

日立製作所とエネウィルが、系統蓄電所に蓄えられた再生可能エネルギー由来電力の「グリーン価値」を時間単位で追跡・証明するサービスを本格始動。名寄1蓄電所での導入実証を経て、次世代の電力取引ルールへ対応する枠組みを提示した。

系統蓄電所の再エネ価値を可視化 日立とエネウィルが事業化へ
©イラスト AI生成 :山崎 健司/プレスリリースジェーピー

概要

株式会社日立製作所(以下、日立)と株式会社エネウィル(以下、エネウィル)は、系統蓄電所に蓄えられた再生可能エネルギー(以下、再エネ)由来の電力が持つ環境価値、いわゆる「グリーン価値」を証明・可視化するサービスを共同で事業化しました。日立が開発した蓄電電力のグリーン価値認証サービス「Storing RE」を活用し、実際の系統蓄電所で再エネ由来電力を充電・放電して、その環境価値を第三者認証の下で追跡する仕組みを構築しています。

今回の導入実績と仕組み

導入は北海道名寄市に所在するエネウィルの「名寄1蓄電所」で行われました。施設の仕様は以下のとおりです。

項目
出力1,999 kW
蓄電容量8,128 kWh
充電元発電所五十嵐ホールディングスが保有・運用する太陽光発電所(出力1,500 kWac

名寄1蓄電所に充電された電力は、電力需要が高まる時間帯にタイムシフト供給され、近隣の4拠点で消費されました。日立の「Storing RE」は、発電・充放電・受電に関するデータを30分単位で収集・管理し、情報基盤で一元的に紐付けることで、蓄電を介した電力でも再エネ由来の需給量を時間軸と地域軸で算定できるようにした点が特徴です。

背景—なぜ必要か

再エネ導入の拡大とともに、系統蓄電所は天候変動を吸収し系統安定化に寄与する重要な社会インフラになっています。一方で、系統蓄電所に電力が混在して蓄えられた場合、従来の方法では放電された電力のどの部分が再エネ由来かを厳密に追跡できないという課題がありました。このため、蓄電を経た電力の環境価値(再エネ性)が需要家に正しく伝達されないリスクが指摘されていました。

さらに国際的には温室効果ガス(GHG)排出算定の基準改訂が進められており、再エネ電力の需給に関する時間性(アワリーマッチング)同地性(供給可能性)といった要件が厳格化される方向です。これに対応するため、蓄電所を経由する電力のトラッキング精度向上が不可欠となっています。

Storing RE の技術的ポイント

  • 発電・充放電・受電の各データを30分単位で収集・連携する仕組みを導入。
  • 情報基盤上で発電量と蓄電の履歴、放電量を時間軸で結び付ける「需・蓄・給」のトラッキングを実施。
  • 第三者機関による認証プロセスを組み込み、データの客観性を担保。

このプロセスにより、たとえ蓄電池内で通常電力と再エネ電力が混ざった場合でも、時間ごとの履歴照合により再エネ由来の電力量を正しく算定できるとしています。加えて、アビトラージ(価格差を狙う売買)などで生じうる時間差に起因するデータの不一致や二重計上を未然に防ぐ仕組みも含まれています。

第三者認証と標準化動向

本サービスに係る第三者認証は、一般社団法人 パワード・バイ・アールイー認定委員会が実施しています。日立は既存サービス「Powered by RE」の機能拡張として「Storing RE」を位置付け、製造や運用に用いる電力が再エネ由来であることのデジタル証明を目指しています。

「再エネ由来の電力の環境価値を正しく証明・可視化する新たな仕組みを構築し活用するものです。」

事業的・政策的な影響

今回の取り組みは、系統蓄電所が収益を得るための複数のビジネスモデル(電力取引所でのアビトラージ、需給調整市場・容量市場での売電など)と親和性があります。再エネ由来の電力の環境価値が正当に評価・証明されれば、以下のような効果が期待されます。

  • 企業の再エネ調達(RE100やESG対応)において、蓄電を介した電力でも「再エネとしての価値」を主張しやすくなる。
  • 系統蓄電所の収益化策が多様化し、投資回収の見通しが改善する可能性。
  • 国際的なGHG算定基準の改訂(時間・場所の厳格化)への対応が進み、国内外の取引で整合性を保ちやすくなる。

留意点と今後の課題

実証は名寄1蓄電所を対象に行われ、特定の充電元(五十嵐ホールディングスの太陽光発電所)でのケーススタディとして成功を示しています。ただし、以下の点は今後の拡張で検討を要します。

  • より多様な充電元(風力、他地域の太陽光など)や混在運転下での有効性の検証。
  • 複数蓄電所・広域系統にまたがるトラッキングでのデータ整合性と運用負荷。
  • 各国・地域で異なる再エネの証明ルールや市場制度との整合性確保。

読者への実務的ポイント

企業が再エネ調達やカーボン戦略を検討する際、次の点をチェックするとよいでしょう。

  • 調達する電力が蓄電を経由する場合、その供給側がどのように再エネ由来の比率を算定・証明しているか。
  • 証明に用いられる時間分解能(30分単位など)や第三者認証の有無。
  • 将来のGHG算定基準改訂に対応できるデータ保全・トラッキング能力の有無。

まとめ

日立とエネウィルの取り組みは、系統蓄電所を単なる系統安定化設備から、再エネの価値を可視化して経済的価値を創出するプラットフォームへと転換する試みです。技術面では時間単位のデータ統合と第三者認証を組み合わせる点が革新的であり、政策・市場の変化と合わせて普及すれば企業の再エネ調達や蓄電所ビジネスに与える影響は大きいと見られます。今後は複数事業者による導入拡大と標準化の進展が注目されます。

山崎 健司
山崎 AI編集 サービス担当記者 オンライン

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