離島での点検に自動飛行ドローンを試行
関西電力送配電は6月、姫路市沖の家島諸島で自動飛行が可能なドローンを用いた配電設備の点検の実証実験を行った。家島諸島は四つの島に約4,000人が暮らし、配電に関わる設備は電柱約2,000本、配電塔が計10基、電線の総延長は約60キロメートルに及ぶ。従来の定期点検では、本土の営業所から作業員が船で往復約2時間かけて来島し、徒歩で目視確認していた。
実証は家島諸島のうち最も人口の少ない西島で行われ、ドローンに搭載したカメラが撮影した映像はリアルタイムで本土の営業所に送られ、離れた場所で作業員が損傷や劣化の有無を確認した。こうした遠隔確認により、現地での作業人数の削減や危険作業の低減を目指す。
技術的背景と導入の狙い
ドローンの活用は、2022年の改正航空法施行を受けて有人地帯上空での運用が認められたことや、機体性能の向上、生成AIなどの先端技術と組み合わせられる点が普及の要因になっている。関電送配電は、送電用鉄塔のうち設置から50年以上を経過したものが多くあり、設備更新の目安に絡む点検需要が大きいと説明する。同社は人手不足と作業員の高齢化に対応するため、離島などでの実証を通じてドローン点検の本格導入を進めたい考えだ。
- 実証地点:家島諸島(西島)
- 島内設備規模:配電塔10基、電柱約2,000本、電線総延長約60km
- 従来点検の所要:営業所から船で往復約2時間+徒歩での目視
他分野での活用例と連携技術
ドローン点検は電力だけでなく、風力発電やガスの製造拠点でも導入が進んでいる。国内で風力発電所を運営する企業では既に多くの発電所でドローン点検を実施しており、風車の高所点検では人の目視より精度が高いとの指摘もある。また大阪ガスは泉北製造所で地震発生時にドローンを自動飛行させ、撮影画像をAIがクラウド上で解析してガス漏れなどの異常を抽出する運用を始めている。泉北製造所の木附登所長は、次のように述べている。
「迅速な被害状況の把握と作業員の安全確保を両立させ、どのような時でも都市ガスを安定供給できるようにしたい」
地域住民への影響と課題
ドローン導入は離島の点検効率を高め、供給途絶リスクの早期把握や作業員の安全確保につながる一方で、周辺住民にとって気になる点もある。機体の落下やプライバシー侵害への懸念は依然として根強く、インフラ現場での普及を進めるには地域住民や自治体の理解を得ることが不可欠だ。操業時間帯や飛行ルートの周知、個人宅上空の飛行制限、撮影データの取り扱い方法など、地元の不安を解消する具体策の提示が求められる。
また、ドローン運用に関する法令遵守や操縦者の訓練、長期的な機体の保守管理も課題として残る。離島での運用は風や天候の変化が大きく、機体選定や予備機の確保、通信回線の安定化など現場ごとの運用設計が重要になる。
姫路地域としての意義と今後の展望
姫路市域には家島諸島のような離島があり、住民生活や観光、漁業活動など地域経済に直結するライフラインの維持管理は市民生活の基盤を支える重要課題だ。今回の実証は、点検の省力化や人手不足対策としての有効性を示す一歩である。今後は以下の点がポイントとなる。
- 住民説明会や広報での透明性確保:飛行日程や撮影範囲の事前周知
- データ管理のルール整備:撮影映像の保存期間や二次利用の制限
- 悪天候時の代替手順:通信障害や強風時の運用停止基準
関電送配電など事業者は、実証結果を踏まえて運用マニュアルの整備や地域との協議を進めるとみられる。姫路の離島で暮らす住民にとっては、安定した電力供給と作業の安全確保が両立されることが何より重要だ。事業者と行政、住民が連携して課題に取り組むことが今後の鍵となる。