地図にない道、残る瓦片とコンクリート
名古屋市東部に位置する東山公園の一角に、周辺のハイキングコースとは異なる雰囲気の「廃道」が存在している。入口は現在バリケードで区切られ、歩行者のみが入れる状態だが、内部にはベンチや瓦・タイル片、コンクリートブロックの残骸といった人工物が散在している。
道の両側には側溝の痕跡が見られ、幅員は車道の2車線分に相当すると推定できる箇所もある。行き止まり付近には、形状から焼却炉と推定される構造物が残されており、内部に耐火レンガがあることから通常の家庭ゴミとは異なる用途で使われた可能性が指摘されている。
時間軸と聞き取りが示す変遷
現地調査を行った道の研究者は、
「1960年代までは園内へ繋がっていた痕跡が確認できる。1970年代の道路整備で分断された可能性が高い」と述べている。また戦後まもない時期の航空写真と現在を比較すると、当該路線が園内に向かって延びていたことが確認できるという。
近隣に長年住む住民の聞き取りでは、入口付近の広場に遊具が設けられ、遊園的な施設や売店が並んでいた記憶が語られている。入場料は不要で、遊具は個別に料金を支払う方式だったとの証言もある。こうした証言と遺構を照合すると、同じ場所が1930年代の園開業期から利用され、その後の都市道路整備により往来が絶たれた経緯がうかがえる。
住民にとっての影響と安全面の課題
現在、現地はフェンスで区切られ通り抜けができない状態だが、遊歩者や子ども連れ、市民ボランティアなど公園利用者にとっては次のような点が課題となる。
- 安全性:倒壊の恐れがあるコンクリートブロックや不安定な遺構が残り、立ち入った際の負傷リスクがある。
- 情報不足:名古屋市の管理資料に当該道の詳しい記録がなく、歴史的価値や管理責任が不明瞭な点。
- 保存と利活用の選択:遺構を保存・活用するか、撤去・整備して公園の安全性や景観を優先するかの判断が必要であること。
行政の関与と今後の論点
公園の管轄は名古屋市であるが、関係資料が乏しいことから、まずは実測調査や歴史資料の検索、住民への聞き取りといった基礎的な調査が不可欠だ。専門家による構造診断を行えば、遺構の保存価値と撤去の必要性を客観的に評価できる。
| 論点 | 具体的事項 |
|---|---|
| 現状把握 | 遺構の詳細な位置・寸法・構造の記録化 |
| 安全対策 | 立ち入り防止の継続、警告表示の設置、倒壊リスクの除去 |
| 保存の可否 | 歴史的価値の評価、地域文化財としての検討 |
地域目線での提言
公園を日常的に利用する市民にとっては、遺構の存在は興味の対象である一方、危険箇所がそのまま放置されていることに不安を感じる声も上がる。まずは名古屋市が現地の詳細調査と結果の公表を行うことが必要だ。そのうえで以下を検討すべきだ。
- 短期措置として立入禁止表示や柵の強化、危険箇所の撤去・固定。
- 中長期的には、歴史的背景を整理した上で、保存する場合の保存方法や解説板の設置、見学ルートの設定など利用案を市民と議論する。
東山公園は動植物園やハイキングコースを含む広域公園であり、多くの市民が日常的に訪れる場所だ。過去の使われ方や遺構の痕跡は地域の歴史を伝える資産になり得る一方、安全管理を欠いてはならない。行政と地域が協働して、記録と対策を進めることが急務だ。
池田 修(プレスリリースジェーピー愛知県担当記者)