愛媛県で製紙関連事業者向けに、エネルギー使用の効率化と温室効果ガス削減を狙ったデジタル支援事業が本格化する。東京のベンチャー企業が提供するAIシステムを活用し、主に四国中央市周辺の中小製紙業者に導入する計画で、現場の省エネ対策を短時間で示すことが期待されている。
導入の狙いと対象
愛媛県は国内でも屈指の紙・パルプの生産地であり、特に四国中央市を中心とした地域は全国シェアが高い。製紙業はエネルギーと燃料の消費が大きく、脱炭素化は地域産業の喫緊の課題となっている。一方で多くの事業者は事業規模が中小で、専門知識や初期投資の面で対策が進みにくい実情がある。
AIシステムの機能と導入効果
導入されるシステムは工場ごとの設備データやエネルギー使用量、排出量などを入力すると、AIが事業所に適した省エネ・脱炭素案を選定し、効果と投資回収の見込みを示す。県が掲げるデジタル実装プロジェクトの一環として採択され、事業者が手軽に計画を立てられる点が採用理由となった。
- 短時間でのロードマップ作成:入力データをもとにAIが複数の施策から最適案を提示
- 経済性の見える化:CO2削減量や投資回収年数、コスト削減効果を算出
- 実行支援の継続:計画の実施、モニタリング、改善まで一貫して支援
地域事業者への影響
この取り組みは、経営資源が限られる中小事業者にとって導入のハードルを下げる可能性がある。省エネ対策の多くは、電気代や燃料費の削減につながるため、脱炭素を進めつつ経営の改善効果も期待される。県内で成果が確認できれば、同業他社へ波及することで地域全体の排出量削減に寄与する見込みだ。
「現場の実データを基に現実的な選択肢を示すことが、導入の鍵になる」と関係者は説明している。
協力体制と実装先
事業は県が公募するプログラムで採択され、地元の複数企業や金融機関、自治体が連携して進められる。既に導入事業者と協力団体の名前が公表されており、現地の実装を通じた効果検証が進められる予定だ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 採択プログラム | トライアングルエヒメ2.0(令和8年度 一般枠) |
| 対象業種 | パルプ・紙・紙加工品製造業(主に中小事業者) |
| 提供システム | エネルギー・CO2削減支援AIシステム |
今後の展望と留意点
まずは県内の数社で実装し、効果や運用上の課題を丁寧に検証することが重要だ。実装の結果次第で、運用方法や支援の形を調整し、他の製造業や全国展開へつなげる計画が示されている。ただし、デジタル化の効果を最大化するためには、正確なデータ収集や現場担当者の運用ノウハウの習得が不可欠であり、導入後の伴走支援が成功の鍵を握る。
地域経済の観点からは、エネルギーコストの削減が事業者の体力向上につながる一方で、設備更新や短期的な運用負担への対策も求められる。金融機関や自治体による資金支援、補助制度の活用も重要な要素となるだろう。
愛媛県内の製紙業は地域雇用や関連産業への波及効果が大きく、産業集積地としての競争力維持・強化は地域全体の重要課題だ。今回のAI導入は、脱炭素と収益性向上を同時に進める試みとして注目される。今後の実装結果と、それを受けた現場の変化を地域内でどう横展開していくかが焦点となる。
(青木 沙織)