社会

福祉法人の事務職員が代表装う指示で1990万円送金、手口と対策は

大分市の社会福祉法人で、代表者を名乗る人物からのメールやLINEの指示を信じた職員が指定口座へ合計1990万円を振り込み、詐欺被害が発生した。法人業務を狙う巧妙な手口と防止策を取材した。

福祉法人の事務職員が代表装う指示で1990万円送金、手口と対策は
©イラスト AI生成 :森田 拓海/プレスリリースジェーピー

大分市の社会福祉法人で1990万円の特殊詐欺被害

大分南署は6日、大分市内に所在する社会福祉法人の職員が、同法人の代表者を名乗る人物からのメールやLINEの指示を受け、指定された口座に合計1990万円を振り込んでだまし取られる被害が発生したとして注意を呼びかけた。

警察によると、事案は6月29日に始まった。法人の事業用メールアドレスに「代表者」を名乗る者からの連絡が入り、LINEグループの作成やQRコード送信などの指示があったため、職員が指示に従ってグループを立ち上げた。その後グループ上でのやり取りで送金が促され、職員が支払いを実行したという。

  • 発生日時(報告日): 2026年7月6日(大分南署の発表)
  • 発端: 事業用メールアドレスへ代表を名乗る人物からの連絡
  • 被害額: 合計1990万円
「これから支払いがある」「今日着金で進めて」

こうしたやり取りがLINEグループ上で行われ、職員は指示に従って送金を進めたと大分南署は説明している。警察は経営者や上司を装う急な送金依頼に対し、メールだけで判断せず電話や対面での確認を行うよう強く呼びかけている。

なぜ福祉法人が狙われるのか

社会福祉法人を含む公益性の高い組織は、寄付・補助金・取引の処理など資金移動が日常的に発生するため、業務フローに沿った支払い指示に従いやすい環境にある。また、代表者や上司からのメールは組織内で優先的に扱われることが多く、電話確認や二重チェックといった手続きを省略してしまうケースも少なくない。

加えて、昨今はメールアドレスのなりすましやアカウント乗っ取り、公式に見える文面を用いる手口が巧妙化している。SNSやメッセージアプリを介した直接の指示は、緊急性を強調することで受け手の判断を鈍らせるため、被害が拡大しやすい。

職場で実行できる具体的な対策

今回の事案を踏まえ、組織として取り組むべき基本的な対策を整理する。

  • 送金の二重確認体制: 重要な送金はメールやチャットだけで完結させず、電話や対面での確認を必須化する。
  • 承認フローの明確化: 金額に応じた承認者の階層を定め、記録を残す。
  • 職員教育と模擬訓練: なりすまし手口の共有や、疑わしい指示を見抜く演習を定期的に行う。
  • メールとSNSの管理: 事業用アカウントの権限管理と多要素認証(MFA)の導入を進める。

特に、事業用メールアドレスに外部からの指示が入った場合は、社内規定に沿った確認プロセスを必ず挟むことが強調される。大分南署の呼びかけにもあるように、急な送金依頼は例外なく疑ってかかる姿勢が重要だ。

被害の広がりと社会的影響

被害額が大きいケースでは、法人の運営資金やサービス提供に影響が出る恐れがある。福祉事業は利用者の生活や介護・支援に直結するため、経済的被害がサービスの質低下や人員削減につながれば影響は利用者やその家族に及ぶ。

また、こうした事件が公表されると、外部の寄付者や地域社会からの信頼感にも影響を与えかねない。被害法人が事業継続のための対策や説明責任を果たすことが、二次被害を防ぐ上でも重要となる。

項目 内容
発生日(確認事項) 6月29日(事業用メールに連絡、LINEグループ作成の指示)
公表日 7月6日(大分南署の防犯メールで公表)
被害額 1990万円

警察の発表は被害の発生を確認する段階にとどまるため、今後さらに詳しい経緯や送金先口座の特定、資金の追跡が進められる可能性がある。

現場からの声と取材で見えた課題

多くの中小規模法人では、日常の業務を回すために少人数で複数の業務を掛け持ちしているケースがある。専門の経理担当がいない、管理体制が徹底されていないといった組織は、今回のような手口に対して脆弱になりやすい。

さらに、代表者本人が多忙で現場に常駐していない場合、職員側は『急ぎの指示』を優先してしまいがちだ。組織としては「誰が」「どのような経路で」指示を出すのかを明文化し、例外的な指示については必ず確認を求める仕組みづくりが求められる。

地域の防犯意識を高めるためには、自治体や警察、業界団体が連携して事例と防止策を広く周知することが有効だ。特に福祉や医療、教育など公共性の高い分野では、業界横断でのガイドライン作成や研修実施が必要となる。

今回の被害を教訓に、各法人は内部統制の強化と職員教育を急ぎ、住民や利用者に影響を及ぼさないよう対策を講じる必要がある。

(取材・文: 森田 拓海)

森田 拓海
森田 AI編集 社会担当記者 オンライン

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