副業で専門人材を導入、地域企業の実務力を底上げ
茨城県内の中小・小規模事業者が、高度な専門性を持つ外部人材を副業(兼業)という形で受け入れ、商品開発や販路拡大、経営改善に結び付ける取り組みが広がっている。県が設置する「県プロフェッショナル人材戦略拠点」(ひたちなか市)は、マッチング支援や補助制度を通じてこうした受け皿を整え、企業側の費用負担を抑えながら外部ノウハウを取り込む事例が増えている。
レンコン生産を手掛ける稲敷市の「れんこん三兄弟」は、形が劣る下等級品の付加価値化を狙い、昨年9月からプロ人材2人を副業で雇用した。40代の男性は冷凍レンコンの風味保持に関する技術面を、30代の女性は飲食店向けレシピの考案を担当している。双方は隔週のオンライン会議で開発の方向性や進捗を確認しており、外部経験を生かしたスピード感のある業務推進が進んでいるという。
「事業が育つまでの開発段階で助かる制度」
この会社は、県外在住のプロ人材を副業として1人当たり月20時間稼働で報酬を5万円に抑え、フルタイム採用に比べて負担を小さくしつつ課題解決を図っている。現場からは、開発完了後に営業面の人材活用も検討する動きが出ている。
拠点と制度の役割、利用実績
内閣府が進める「プロフェッショナル人材事業」は、外部の専門家を活用して地域企業の攻めの経営を支援することを目的としている。県拠点はマッチング支援を行い、企業は民間ビジネス事業者への手数料とプロ人材への報酬を負担する形だ。リモートワークの普及により、副業・兼業という形態での受け入れハードルが下がった点も追い風になっている。
県拠点の公表データによれば、2016年の拠点開設以降、転職による成約は累計1,269件、2020年以降に取り扱った副業は155件(8月5日現在)に達している。こうした実績を背景に県は、初めて副業人材を活用する事業者に対して費用の8割(上限50万円)を補助する制度を昨年から設けており、導入の経済的負担を軽減している。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 転職での成約(累計) | 1,269件 |
| 副業の取り扱い件数(20年〜) | 155件 |
| 副業人材の稼働・報酬例 | 月20時間/5万円 |
| 県の補助 | 費用の8割(上限50万円) |
地域企業にとっての利点と留意点
副業の導入は、次のような利点を中小事業者にもたらす。
- フルタイム採用に比べて人件費や採用負担が小さい。
- 外部の専門知識やノウハウを短期集中で取り入れられる。
- リモートでの関わりにより、地域外の人材も活用可能になる。
一方、実務現場ではいくつかの課題も指摘されている。短時間稼働のため業務の引き継ぎや継続的なフォローが必要になる点、成果の評価基準や知的財産の取り扱いを明確にする必要がある点、そして補助制度を活用する際の書類手続きや要件の把握が負担となり得る点だ。これらは導入前に契約や業務範囲を丁寧に詰めることで軽減可能だが、地域の小規模事業者にとっては専門的な助言の助けが有用だ。
今後の展望と行政の呼びかけ
県拠点の関係者は、農林水産業など茨城の基幹産業に伸びしろが多いとし、副業でのプロ人材活用を広く呼び掛けている。求人プラットフォームには多数の登録者が存在し、「地域貢献」や「スキル活用」を目的とする人材が応募する可能性があるため、募集をかければマッチングの機会は十分あるとみられる。
地元企業の中には、商品化やサービス化の初期段階で外部の手を借りることで、事業化のスピードを上げ、販路開拓につなげた例が出ている。補助制度や拠点の支援を上手く使うことで、コストを抑えつつ経営の幅を広げる道筋が示されている。
今後、制度の利用状況や実際の成果を踏まえ、契約面や評価面でのガイドライン整備、継続的な人材育成や地域内でのノウハウ共有が求められる。地域経済の競争力を高めるため、外部人材の受け入れを単発の支援に終わらせず、企業の持続的成長につなげる取り組みが鍵となるだろう。
(茨城県担当記者 中村 智子)