新潟・長野の若手に伴走、地域発イノベーションを狙う
経済産業省所管の支援を受け、Socialups株式会社(本社:新潟市中央区)が運営するIT人材発掘・育成プログラム「ETSUZAN(えつざん)」が、2026年度から対象エリアを長野県まで拡大し、6チーム7名の採択を発表した。採択チームは2026年7月28日から2027年2月10日までの約6か月間、専任のプロジェクトマネージャー(PM)による伴走支援を受け、開発に取り組む。開発時間に応じて、1チーム最大150万円の開発支援金が支給される。
この取り組みは、新潟を起点に地方の若手ITクリエータを発掘・育成し、地域での事業化や実装を促すことを目的としている。対象が新潟県に加えて長野県まで広がったことで、北信越圏域における人材交流や共同開発の可能性が高まる。
採択プロジェクトの内容
採択された6チームは、ハードウェア、AI、ゲーム、ヘルスケアなど領域が多岐にわたる。主なプロジェクトは次の通り。
- Strock(代表:河田遠乃・新潟大学) — 初心者向けギター支援のハードとアプリ。イベント販売を視野。
- 透明化技術の社会実装(代表:百武優一・新潟大学大学院) — 背景映像と視点追従、AI画像補正で疑似的に「透明化」する技術。広告・エンタメ領域を目標。
- 卓上全自動射出成型機(代表:藤本清太郎・長岡技術科学大学大学院) — 個人や小規模団体向けの卓上射出成型機を開発し、ものづくり支援を図る。
- 街の記憶を「経験」として保存するレーシングゲーム(JDG)(代表:國本蒔幸・長野日本大学高等学校) — 消えた街並みをゲーム内に再現し、当時の道を走れる形で保存。
- 毎回説明しなくていい、日常を記憶する相棒AI「MIKA」(代表:保積泰斗・信州大学) — 講義や会話を個人専用の記憶データベースに蓄積し、必要時に応答するAI。
- FELSTUNING(代表:鹿角謙人/メンバー:橋崎紗奈・長岡技科大) — ウェアラブル端末のデータから「今日できる一歩」を提案する健康管理支援AI。
"ETSUZANが大切にしているのは、この横のつながりが生まれる瞬間です。"
伴走支援の仕組みと地域への意義
プログラムは専任PMによる月1〜2回のメンタリングを基本に、OBOGやメンターとの交流機会を設けるなどネットワーク形成を重視する。初回の「ブースト会議」は8月22日〜23日に新潟市中央区のスタートアップ拠点NINNOで開催され、採択チームとPMが開発計画を詰めた。
地方では開発に集中できる環境や経験の機会が不足しがちだ。ETSUZANは当該課題に対し、資金面の支援だけでなく、プロジェクト設計、技術面・事業化面での伴走を通じて経験ギャップの解消を目指す。若手が地域内でプロトタイプ作成や実証実験、販売まで踏み切れる体制を整えることで、地元企業や教育機関との連携、地域内での雇用創出につながる可能性がある。
住民・関係事業者への影響と期待される波及効果
今回の採択は、地域の以下のプレーヤーに影響を与える見込みだ。
- 大学・高専・専門学校:学生の実践機会が増え、教育カリキュラムや産学連携の活性化が期待される。
- 地場ものづくり企業:卓上射出成型機など、地元製造業と共同で試作・量産に向けた連携が進む可能性がある。
- 自治体・地域振興機関:地域資源を活かした観光・文化保存(ゲームによる街並み保存等)やヘルスケア分野での地域課題解決に寄与しうる。
加えて、若手技術者が地域内で事業を立ち上げたり、外部資金や実証フィールドを呼び込むことで、長期的には地域経済の多様化に資する。
運営側の仕組み:支援金・期間・公開情報
採択チームは約6か月間の育成期間中にPMの伴走を受け、活動実態に応じて最大で1チーム150万円の開発支援金が支給される。育成期間中の進捗や成果はETSUZANの公式サイト(https://etsuzan.org/)および公式SNSで随時公表される予定だ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 育成期間 | 2026/7/28〜2027/2/10(約6か月) |
| 採択数 | 6チーム7名 |
| 支援金 | 1チーム最大150万円(開発時間等に応じ支給) |
| 主催・運営 | Socialups株式会社(新潟市)/ AKATSUKIプロジェクト(経済産業省所管) |
この支援は短期の資金提供だけでなく、PMによる継続的な指導とネットワーク構築が核だ。地方の若手が事業化まで進めるために必要な「実践の場」を用意する点が特徴である。
今後の注目点と住民向け実用情報
今後、地域での実証実験、展示会出展、製品・サービスの販売開始など具体的な成果が次々と出れば、地域内雇用や関連産業の活性化につながる。住民や事業者は次の点に注目するとよい。
- ETSUZAN公式サイト・SNSでの進捗報告(イベント情報や実証参加募集)が随時更新されるため、関心のある市民はフォローを推奨。
- ものづくり関連の地元企業や自治体は、共同実証や受託開発の機会として採択チームとの連携を検討するとよい。
- 学生・若手技術者は、今後の募集やオープンイベントを通じてメンタリングやOBOGネットワークに参加できる可能性がある。
地域の技術力と創意が結びつくことで、単発のプロジェクトから継続的な産業クラスターに育つことが期待される。新潟・長野を対象にした今回の拡大は、地域横断の人材循環と実装力向上の試金石となるだろう。
(取材・執筆:松本 隆/プレスリリースジェーピー 新潟県担当記者)