森林・文化資源を軸に持続可能な観光へ
ベトナム中部のカインホア省にあるドンカインソン村は、同省の2030年計画および2045年までのビジョンを示した政治局決議第9号の方向性に沿い、「山林生態都市」を志向して、グリーンで持続可能な観光開発を進めようとしている。地域は涼しい気候や多様な森林生態系、雲海観賞といった自然資源に加え、ラグライ族に根ざす伝統儀礼や民族芸能、特産果樹などを持ち、観光の潜在力は大きいとされる。
ただし、現状は観光開発の水準が潜在力に見合っておらず、来訪者数の少なさや固有の観光商品の不足、旅行会社との連携不足、交通や宿泊といったインフラの不備、観光従事者の人材不足といった課題が整理されている。地方当局と村は、これらの制約を解消する形で経済構造を農業サービス・観光・手工芸へ転換すると明言している。
- 自然景観と高地・森林の活用によるグリーンツーリズム推進
- 文化観光・エコツーリズムと環境配慮型農業の連携
- ホームステイ等、地域密着型宿泊サービスの拡充
「文化空間 - ドンカインソン市場」
地域の担当者である文化社会局長のグエン・ティ・グエット氏は、気候や土壌、文化など既存の強みを最大活用する意向を示し、村の副委員長カオ・ティ・ヒエン氏は2026年から2030年にかけて具体的な観光開発を進めると述べている。計画には交通インフラの整備、観光サービスインフラの改善、宿泊施設や飲食店の整備が含まれており、中央・地方の投資を引き出すことが鍵になるとしている。
背景と現状の課題
ドンカインソン村の現状整理は、次のような項目に集約される。まず自然・文化資源は豊富だが、それを持続可能に観光資源化するための体系的な商品化やマーケティングが不足している。エコツーリズムやコミュニティツーリズム、農村体験型ツーリズムといった領域に適したツアーの設計や受け皿が小規模である点も指摘されている。
また、アクセスの制約(交通手段の限界)と宿泊施設の欠如により、観光客滞在時間の延長や消費増加が見込みにくい。地域内の観光従事者や専門技術を持つ人材も不足しており、現地での受け入れ能力の強化が不可欠だ。これらはいずれも短期的な観光客誘致策だけでは解決できず、インフラ投資・人材育成・商品開発を連動させる中長期的な取り組みが求められる。
期待される影響と留意点
ドンカインソン村が掲げる「グリーン開発」は、正しく運用されれば地域経済の多角化と住民の収入向上、伝統文化の保存につながる可能性がある。特にホームステイや農業体験、民族芸能の実演など、コミュニティの参加を前提とした観光は、利益の地域内還元と文化継承の手段となり得る。
しかし、持続可能性を保つには以下の点が不可欠だ。
- 自然環境の保全を前提とした入域管理や環境影響評価
- 観光の季節性や急激な来訪者増加に伴う生活影響への配慮
- 地元住民の合意形成と収益配分の透明性確保
表面的な観光インフラ整備のみで外部資本を呼び込み、結果的に資源や文化が劣化するような「観光化」への注意も必要だ。
| 期間 | 主要課題 | 想定する施策 |
|---|---|---|
| 2026–2030 | 交通・宿泊・人材不足 | インフラ整備、ホームステイ促進、人材育成 |
| 2030以降〜2045 | 持続可能性の定着 | エコツーリズム商品の標準化、環境保全体制の確立 |
地域連携と外部支援の重要性
村当局は、州や中央からの支援に加え、旅行会社や民間投資の連携を強化していく方針を示している。具体的には、観光客ニーズに応じた宿泊・飲食サービスの開発、ゴルフコースやロープウェイといった観光資本の誘致も検討されているが、その際は環境負荷評価と地域価値の保全が重要となる。
短期的な雇用創出や収入増だけでなく、森林生態系の健全性、土着文化の持続可能な継承、地元の食と農の価値向上といった中長期的な効果を設計に組み込むことが、外部資金の使われ方を左右するだろう。
ドンカインソン村の挑戦は、豊かな自然と文化を持つ多くの地域が直面する課題の縮図でもある。計画が掲げる方向性は明確だが、その実現には慎重な資源管理、住民参加、市場形成の三点をバランスよく進める必要がある。
(取材・報道資料に基づく)