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巨岩や流木を受け止める「透過型」砂防ダム 芦屋川上流の備えと課題

六甲山地の谷間に立つ透過型の砂防ダムが、平時は細かな土砂を通し、豪雨時には岩石や流木を食い止める。芦屋川上流の鷹尾第二堰堤を通じて地域の防災力と今後の課題を検証する。

巨岩や流木を受け止める「透過型」砂防ダム 芦屋川上流の備えと課題
©イラスト AI生成 :藤田 早紀/プレスリリースジェーピー

六甲の谷をふさぐ立体格子

六甲山地の斜面から流れ出す土砂や流木を抑えるため、兵庫県芦屋市奥山の芦屋川上流に鷹尾第二堰堤と呼ばれる砂防ダムが立っている。太い鋼製パイプを組んだ立体的な格子構造は遠目に巨大なジャングルジムのように見えるが、その内部構造には平時と緊急時で機能を切り替える工夫がある。

この施設は透過型とされ、普段は細かな土砂を隙間から下流へ流すことで堆積を抑えつつ、集中豪雨などで流木や大きな岩塊が押し寄せる際には格子と鋼製枠がこれを受け止める設計になっている。鷹尾第二堰堤の格子部分の規模は高さが13メートル、幅が16.8メートル、奥行きが12メートルに及ぶ。

歴史的被害と整備の歩み

六甲山地は、山と海の距離が短く河川の傾斜が急である点、風化した花こう岩が多い地質、地形が風を上昇気流に変えて局地的豪雨を引き起こしやすい点などの自然条件が揃い、土砂災害のリスクが高いとされる。被害の大きかった過去の事例としては、1938年(昭和13年)7月の阪神大水害があり、死者・行方不明者は695人、被災家屋は約12万戸に上った。この教訓を受け、国直轄での砂防事業が本格化し、2025年度末までに兵庫県内で計568基の砂防ダムが整備された。

現状の役割と住民への影響

透過型砂防ダムは、下流の市街地に直接的な恩恵をもたらす。平常時に河床の土砂を過度に堆積させないことで河川の流下能力を維持し、有事には大きな堆積物を阻止して下流域への急激な土石流の到達を遅らせる。芦屋や周辺の住宅地、道路、鉄道などインフラへの影響を軽減する機能を持つため、住民の生命・財産の防護に直結する。

一方で、砂防ダムは万能ではない。局地的豪雨の急増や、これまで想定してこなかった規模の流出物が発生した場合、堰堤の捕捉能力を超える恐れがある。六甲砂防事務所の職員は、施設整備は一定の進展を見せているものの「災害はいつ発生してもおかしくない」と指摘し、平時からの避難行動の重要性を訴えている。

住民が知っておくべき実用情報

  • 砂防ダムは日常の土砂移動を完全に止めるものではない。普段から河川周辺には近づかない。
  • 気象庁や自治体の避難情報が出た際は、速やかに高台や指定避難所へ移動すること。
  • 家屋周辺の排水路や側溝の点検、非常持出袋の準備、避難経路の確認を定期的に行うこと。
「施設の整備は一定程度進んできたが、災害はいつ発生してもおかしくない。有事には命を守る行動を」

今後の課題と対策の方向性

まず、砂防施設自体の点検・更新だ。老朽化する箇所や設計当初の想定を超える降雨パターンに対応するには、補強や新技術の導入が必要だ。さらに、流域全体の保全を進める観点で、植生復元や尾根筋の崩壊対策などハード・ソフト両面の連携が重要になる。

次に、情報伝達と住民参加の強化だ。山間部の気象・地象の変化を迅速にとらえる観測網の整備、自治体と地域住民による自主防災組織の教育・訓練を充実させることが求められる。避難判断を速めるために、近年導入が進む「土石流危険度判定」などの数値的評価を自治体の避難指示に連動させる取り組みも有効だ。

最後に、周辺住民への理解促進だ。砂防ダムは景観面での受け止め方や、普段は立ち入れない場所ができることなど生活上の影響もある。地域説明会や現地見学の機会を通じて、設備の役割や限界を伝えることが、防災意識を高める近道となる。

項目鷹尾第二堰堤の数値
格子部分高さ13メートル
幅16.8メートル
奥行き12メートル
県内整備基数(〜2025年度末)568基

鷹尾第二堰堤は、地域の安心を支える一つの装置だが、それだけで安全が確保されるわけではない。河川流域の保全、施設の維持管理、そして何より住民一人ひとりの迅速な避難行動が重なってはじめて大きな災害リスクを低減できる。今夏も局地的豪雨の懸念が高まる中、行政と住民が連携して備える姿勢が求められている。

藤田 早紀
藤田 AI編集 兵庫県担当記者 オンライン

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