企業間の対話で「地域資産」を見える化 尼崎発の協業促進プロジェクト
尼崎市内で事業を行う企業らが集まり、地域に眠る経験や技術、関係性といった無形の資産を言語化し再編集する取り組み「あまぬしプロジェクト」が本格的に動き出した。主催するのはオープンイノベーションコア尼崎(OIC)。同プロジェクトは2026年6月にスタートし、7月までに第2回までの交流会を実施している。次回は2026年8月20日に開催予定で、継続的な対話を通じた協業創出を目標としている。
OICは2024年4月に尼崎市、尼崎信用金庫、尼崎商工会議所、近畿高エネルギー加工技術研究所、尼崎地域産業活性化機構が公民連携で立ち上げたコンソーシアムだ。あまぬしプロジェクトはこの枠組みを活用し、企業を単なる参加者ではなく「地域の未来づくりに資産を投じる仲間」と位置づけることを標榜している。
実施内容とこれまでの経過
第1回は参加者相互の理解を深めることに重点を置き、尼崎で挑戦したいテーマのアイデア出しが行われた。第2回では参加者の共通する価値観を探る場として、価値観を確認するカードゲームやグループ対話を実施した。両回ともにグラフィックファシリテーションを導入し、語られた内容をビジュアルに残すことで言語化と共有を図った点が特徴だ。
- 開催頻度:原則として毎月1回
- 次回開催:2026年8月20日(14:00~17:00)
- 目的:地域の無形資産(知識・技術・人脈・物語等)の言語化と再編集
参加企業とネットワークの広がり
公表された参加企業一覧には地場の製造業、サービス業、福祉や研究機関まで幅広い業種が名を連ねる。参加企業の例は以下の通りで、地元の実業者が中心となっている。
| 主な参加企業等(抜粋) |
|---|
| 株式会社アリガトサン/株式会社巴製作所/大洋紙業株式会社 |
| 株式会社プラスイノベーション/日亜鋼業株式会社/ヒロセエンジニアリング株式会社 |
| セイコウ経営/スターコミュニティ合同会社/WBPグループ株式会社 |
| 社会福祉法人あかね/ヘルスプロダクト株式会社/株式会社尼漁開発 |
| 有限会社中野製作所/株式会社ナカムラ/睦ホームサービス |
| 有限会社柏木鉄工/株式会社goomee/株式会社若本製作所 |
| 株式会社みつば電気/株式会社中井總組 |
参加者からは「尼崎愛が強い参加者が多く驚いた」「普段出会わない業種と交流でき刺激になった」といった反応が出ており、参加企業間の関係構築が既に一定の効果を生んでいることがうかがえる。
「あまぬしプロジェクトでは、参加する企業を単なる利用者や参加者ではなく、地域の未来づくりに資産を投じる仲間として捉えています。対話は、すぐに価値を生むものではなく、何かを生むことを保証するものではありません。それでもなお、互いの経験や考えを持ち寄り、語り合うことにこそ、新しい可能性の種が宿ると私たちは考えています。」
尼崎の地域経済と住民への影響
このプロジェクトの意義は、単に企業間の親睦にとどまらない。以下の点で市内の事業環境や住民生活に影響を及ぼす可能性がある。
- 新たな事業・製品の創出:企業同士が技術やノウハウを出し合うことで、既存事業の高度化や新商品開発につながる可能性がある。
- 雇用機会の拡大:協業により新規事業が生まれれば、地元での採用や職域拡大が期待できる。
- 地域ブランドの向上:地場企業の連携が強まることで、尼崎産業としての認知や外部流入の増加につながることが期待される。
とりわけ中小企業が多い尼崎の産業構成を踏まえると、技術や経験の交換による現場改善や加工技術の水平展開は、競争力向上に直結する。福祉やヘルス関連の事業者も参加しているため、医療・介護分野とものづくりの接点が見つかれば、住民の暮らしに直接的な利便性改善がもたらされる可能性もある。
今後の注目点と市民向けの実用情報
OICは今後も毎月程度の交流会を継続し、対話から生まれたキーワードや価値観を基に具体的なアクションを検討するとしている。市内で事業を営む関係者や、地域の雇用・産業に関心のある市民が押さえておくべきポイントは次のとおりだ。
- 参加希望・傍聴:プロジェクトの公開情報やOICの案内を確認し、参加や見学の窓口を通じて問い合わせを行うこと(具体的な申込方法はOICの告知に従う)。
- ネットワーク活用:地元企業との接点を持ちたい中小企業や起業家は、継続参加で技術や人脈を育てる機会となる。
- 地域課題の発信:市民や団体が抱える課題を企業側に提示することで、社会的課題解決型の協業が生まれる可能性がある。
地域の将来を左右する取り組みである一方、効果が顕在化するまでには時間を要することも想定される。対話を重ねるプロセス自体が資産となるとの主催側の見立てはあるが、具体的な成果(商品化、事業化、雇用創出など)に結びつけるためには、プロジェクト参加者と支援機関が連携して実行に移すフェーズが重要だ。
尼崎の企業や市民にとっては、あまぬしプロジェクトは自らの持つ知見を再評価し外部と接続する機会となる。OICは今回の取り組みを通じて、地域内の小さな強みを組み合わせることで大きな価値を生むことを目指している。次回の交流会(8月20日)以降、どのような協業の芽が発生するか注目される。