環境

奄美の自然保全と活用 遺産5年目が問い直す両立の道

環境省の山本以智人氏が奄美図書館で講演し、世界自然遺産登録から5年目を迎えた奄美大島の今後の課題として、ロードキルや観光管理、外来種対策などを挙げ、保全と活用の両立の必要性を訴えた。

奄美の自然保全と活用 遺産5年目が問い直す両立の道
©イラスト AI生成 :清水 葵/プレスリリースジェーピー

奄美大島の自然保護と観光活用をどう両立させるか

奄美大島を巡る保全と地域振興の課題が、7月1日に県立奄美図書館での講演で改めて整理された。環境省奄美群島国立公園管理事務所の山本以智人氏(国立公園保護管理企画官)は、世界自然遺産登録から5年目を迎えた現状を踏まえ、島ならではの保全と活用の在り方を市民や参加者に語った。

講演は三部構成で、前半では世界自然遺産の概要と登録までの経緯、さらに発生した問題への対応や実例の紹介が行われた。とりわけ近年取り組みが進められてきたマングースの防除事業について、2024年9月に根絶宣言が出された経緯などが紹介され、外来種対策の成果と今後の継続の重要性が示された。

「奄美大島の自然は唯一無二。この自然が守られてきたことは奇跡」

山本氏は保全上の今後の重点課題として、以下を挙げた。

  • 希少野生動物のロードキル(交通による個体死の抑制)
  • 観光管理(訪問者の行動管理と受け入れ体制の整備)
  • 外来種問題(侵入・拡大の監視と防除)
  • 密猟・盗掘への対策

第3部では自然の“活用”がテーマとなり、東アフリカにおけるライオンに関する事例が取り上げられた。山本氏は、ハンティングや毛皮取引と比較してエコツーリズムが持続的かつ経済的価値を生み出している点を紹介し、殺すのではなく観察や体験を通じて自然を資産化する考え方の有効性を示した。

「他地域の事例からも保全と活用の両立は可能。次世代に世界自然遺産を残すためにも、奄美らしい保全と活用の在り方を考える必要がある」

講演に参加した地域の高校生からは、観光振興とゴミ問題など住民側の課題に対する自覚や協力への期待が示された。参加者の一人である平島杏珠さん(大島高2年)は講義を受けて、エコツーリズムの可能性と日常的な環境保全の重要性を口にした。

「奄美の自然を守っていくためにはごみ問題など、今後もさまざまな課題がある。住民の私たちが率先して保護に協力できるようなすてきな島になってほしい」

講演の文脈から見えるのは、保全と観光振興の狭間で求められる制度設計と地域協働の深化だ。具体的には保全上のリスクを低減しつつ、自然を観光資源として持続可能に活用するための管理策が不可欠であることが示唆された。

取り組み内容(講演で示された例)
外来種対策マングース防除事業の実施と根絶宣言(2024年9月)
観光管理エコツーリズムの導入と地域経済への貢献の議論
市民参加ワークショップや生物調査などセンター主催の教育・普及活動

また、同センターが予定している市民向けイベントも紹介された。具体的には在来種と外来種のカエルを見分けるワークショップや、まほろば水と森公園の池の生物調査など、地域の自然に接する機会を通じて住民の理解と参加を促す取り組みだ。山本氏はセンターへの来訪を呼びかけ、「奄美の自然にはまだまだ知られていないことがたくさん。センターに遊びに来て、夏休みの自由研究のヒントを見つけてほしい」と述べた。

奄美大島は固有種の多さや生態系の独自性から保全上の価値が高く、遺産登録は地域に対する国内外の注目を高めた。一方で注目の高まりは来訪者増加につながり、適切な受け入れ管理が欠かせない。講演が示したのは、単なる規制強化だけではなく、地域の暮らしや経済と連動した柔軟な保全施策が必要だという点である。

今後、関係機関や住民、事業者がどのように役割を分担し、情報共有と監視・対策を続けていくかが問われる。奄美らしい自然を次世代に残すための道筋は、地域の価値観と科学的知見の両方を取り入れた取り組みの積み重ねにある。

清水 葵
清水 AI編集 環境担当記者 オンライン

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